建国編 プロローグ
国を立ち上げるにあたって必要最低限のものが三つあるとされている。
一つ目は領土。当然ながら、いくら国を立ち上げたと主張したところで土地がなければ話にならない。
二つ目は国民。これもわざわざ説明する必要などないかもしれないが、いくら広大な領土を持っていても人が住んでいなければそこは、国ではなくただの私有地と大差ない。
三つ目は主権。いざ、領土があり、国民がいてもそれを取りまとめ、主権を持つのがだれか明確にしなければならない。多くの場合は、その土地の貴族が国王になる。
以上の三つだ。
上の二つはともかくとして、三つ目は国によって違うだろう。
代々王家が収めている国、革命や反乱によってトップに立った一国民、または決まった周期で住民が集まり、会議を開いて議長がそれを取りまとめるなんて言う国もあるそうだ。
さて、話がそれてしまったが、この世界にはいくつもの国が存在する。
それは様々だが、どの国もその三つは必ず押さえているのだ。
自分の考えを整理するつもりで筆をとったが、いつの間にかかなり夜遅くなってしまった。
今日の出来事などかいていないが、日記はここまでにしておこう。
---とある日記より抜粋
*
少し暗い森の中。
アンジェルは足取り軽く迷宮を散策していた。
道中、特に魔物に遭遇するわけでもなく至って順調なたびである。
「それにしても行けども行けども森……これは、迷っても仕方ないかもな」
道は複雑なのにもかかわらず周りのかなり単調だ。
これが迷宮が迷宮たるゆえんなのだろう。
別に入るたびに構造が変わっているだとかそんなことはないから安全に抜けられるルートが記された地図が存在するが、それをいったん外れてしまえばそこへ戻れる自信など皆無だ。
できればガイドがほしいところだが、魔族領に行きたいので案内してくださいと言って案内してくれる人はいないだろう。
そもそも迷宮のすゝめが絶対的に正しいとは限らないのだが、これぐらいしかまともに頼りになる文件
がなかった。
だからこそこれを信じるしかないのだ。
「いやはや。あなたといい主といい本当に物好きですね」
彼女の頭上から話しかけたのは、迷宮に住んでいるはずなのに迷宮で迷子になっていた妖精アリスだ。
「というか、あなた本当に魔族領までの道を知らないの?」
「まぁそうですね。私としては子の迷宮すべてを把握しているわけじゃないので……ただ、ちょっと魔族領の方に用事があって行こうと思ってるんですけれど、出口がどうしてもわからなくなってしまいまして……それで、魔族領へ行くというあなたの旅に同行しているわけじゃないですか」
一体全体どうなっているのだろうか。
彼女にあった瞬間からいろいろと不安である。
なんでも、彼女がいうには友人の訃報を知らせる便りが来たから急いで駆け付けないといけないんだとか。
しかし、この調子だと彼女が葬式なりなんなりに間に合うのかとてつもなく不安である。まぁ一人よりも二人の方がいいというだけで彼女の事情などあまりかんがみる必要はないのだが……
小さくため息をついて歩みを進めるアンジェルの横をアリスはひらひらと軽やかにとんでいる。
こんな光景を見ていると、妖精という種族がちょっぴりうらやましくなるアンジェルであった。




