第百六十二話 城下町へ
マアサからの手紙を読んだ後、朝食をとった誠哉は城下の町に降りていた。
あれを読んでいたら、実際に魔族領がどのような状態なのか見たくなったのだ。
町を歩いていると、活気にあふれていて人間の国と同様……いや、人間の国以上に活気にあふれている。
「よう! そこの兄ちゃん! この魚安いよ! どうだい?」
「そうだな。また、今度にするよ」
ただ、違うところと言えば歩いているといろんな人に声をかけられるということだろうか?
店の商品を売ろうと必死になっているとかじゃない。まるでテレビで見る一昔前の商店街のような活気があふれてる。
「あ、あのー」
そんな中を歩いていると、後ろから誰かが声をかけてきた。
「はい?」
「あぅ人違いでした。えっと、すいません……」
誠哉が振り向いた先には桃色の髪の少女が目に涙を浮かべながら立っていた。
迷子だろうか? いや、それはないだろう。恐らく、人を探しているという方が正しいだろう。
「ボクにそっくりな人を探しているの?」
「えっえぇ。すいません……」
誠哉は頭をかいて小さくため息をつく。
「まぁいいや。これも何かの縁だろうし、面倒だけどその人探し手伝うよ」
「えっそんな。悪いですよ。いや、でも、やっぱり一人で探していても仕方ないし……。というか、見た目じゃなくてなんとなく雰囲気が似ていて、今改めてみていると全然似てないというかなんというか……」
よくわからない。
ここまで来ると彼女の探し人の方が気になってくる。
「あれ、冷静に考えると、雰囲気も似てないかも……なんで話しかけたんだっけ?」
少女はさらにうろたえていた。
ここまで来ると、わざとやっているのではないかとも思ってしまう。
「まぁいいや。それで? 面倒だけど、探す人よりも先に君のこと教えてもらってもいいかい?」
「えっはい。えっと、私は町はずれにある診療所で働いていますエイリーンと言います。えっと、あの、私はその……あぁあれだ。私が働いている診療所の医者であるコクイユウの姿が見当たらなくて、その……職員総出で探している状態でして……ただ、薬師だけはどうせすぐに帰ってくるだのなんだの言ってますけれど。あぁそんなこっちの話をするべきじゃないですよね! すいません!」
彼女は終始びくびくしながら、頭を下げる。
そんなに威圧しているつもりはないから、元からの性格なのかもしれない。
「いや、気にしないでいいよ。それよりも、探し人のコクイさん? の特徴を教えてもらってもいい?」
コクイユウ……名前からして日本人っぽいが、漢字をあてると国伊優とかそんなあたりだろうか? いや、それはさすがにないかもしれない。
「えっと、真っ黒な髪の毛がとても特徴的でして、いつも白衣を着ていて、それで、なんというか楽観的というか物凄いものぐさな印象を受けるというか、そんな感じの人です」
「そうなんだ……」
本当にどうして、そんな人に似ているといわれたのかよくわからない。
もしかしたら、白衣を着ているのに名前を漢字で書くと黒衣なんて落ちがあるのだろうか?
「あ……あの、あなたの名前を聞いてもいいですか?」
誠哉が上の空で余分なことを考えていると、恐る恐るという雰囲気で手を挙げていた。
「あぁごめん。ボクは沖村誠也。ただの旅人だよ」
「そうですか。セイヤさん。いきなりで申し訳ないですが、その……あの、お願いします!」
エイリーンは勢いよく頭を下げる。
誠哉は、それに少し驚きながらも笑みを浮かべた。
「別にいやいややってるわけじゃないので、面倒だと思うけど頭を上げていいよ。それじゃ、さっそく探しに行こうか」
「はい!」
誠哉が歩き出すと、エイリーンもその後について歩き出す。
考えて見れば、自分も今人探しをしているんだよな……
ちょうど、そんなことを考えていた。




