第十五話 暗闇の中の獣
どうやら、いつの間にか夜になっていたようだ。
洞窟は急激に光を失いはじめ真っ暗になったが、魔法で起こした火と持っていた木材でたき火を始めると再び、周りに灯りが戻った。
今いる場所は、洞窟の中にあいた広場のような場所だ。と言っても地上の森よりも小さい場所で小さな灯りでも壁をしっかりと照らせるほどだ。
「本当に不思議な洞窟ね」
「えぇ。迷宮の地下にこんなところがあったなんて……」
「そうですわね。仮に出たとしても、町までたどり着けるか……」
珍しくマアサがため息をついていた。というか、イライラしているように見える。
「マアサ?」
「なんでしょうか、お兄様」
口調こそいつも通りだが、まとっている雰囲気が明らかに怒気をまとっていた。
思わず押されそうになってしまったが、何とか口を開く。
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたもありませんの。この洞窟すごい嫌な感じがいたしますわ」
「いやな感じって?」
誠哉がそういったその時、洞窟の奥から地響きとともに何らかの獣の声が聞こえてきた。
もしもの事態に備えてマアサと誠哉はそれぞれ臨戦態勢に入る。
アリスは、すでにローブの中に隠れているのだが、問題はアンナだ。
彼女の状態は先ほどよりも悪化していて、歩き続けるという判断を下してしまった自分をせめてしまいそうだが、目の前の敵の処理が先決である。
「面倒なことにこんな狭いところで戦うなんてな」
「えぇ……そうですわね」
口にこそ出さないが、人をかばいながら戦うという点が一番の問題だろうか?
この前のように広い場所へ逃げるということもできないし、なによりも常に後ろを気にし描ければならない。
だからと言って、アンナのことはお構いなしと言わんばかりに戦闘を行うつもりも毛頭ない。
「マアサ。面倒だが、後ろのアンナに十分気を付けろよ」
「わかってますわ。勇者に何かあったら困りますものね」
「へー魔王から見ても勇者っていなくちゃいけない存在なのか……」
「まぁそれ以前の理由もありますわ……とアンナさんが聞いているといけませんので目の前の敵に集中してくださいまし」
「そうだな」
改めて意識を研ぎ澄ましてみると目の前の敵がいかに強いかよくわかる。
その気は、洞窟の空気を振動させ、大きなプレッシャーを感じた。
すると、突然暗闇から氷の玉が飛んできた。
「お兄様!」
「面倒だけど、それぐらいは心得てるよ!」
素早く左によけて氷が飛んできた方向に炎の玉を発射した。
しかし、暗闇のため相手にあたっているのかすら全く不明である。
そんなことをしている間にも周りの壁や床が凍りつきはじめ、周りの気温が着実に下がっていく。
ふと、気になってアンナの方を確認してみるが、幸いにも彼女は先ほど張った結界の中にいるうえ、しっかりと毛布をかぶっていたのでおそらく、攻撃が直接命中しない限りは無事なはずだ。
「相手が見えないってのが面倒だな」
「そうですわね。せめて相手の実態がわかれば……」
「いくら私でも氷塊だけでは敵を特定出来ませんので、せめて姿がわかれば……」
おそらく氷塊を放つ魔物というのは一種類ではないのだろう。それにしても、氷塊の大きさはかなりのものだが、その分速度が遅いように感じる。
「マアサ」
「わかってますわ。氷をよけて相手の近くで灯りをともそうと言いたいんですわよね」
「まぁ面倒だと思うけど頼むよ」
「えぇ。わかってますわ」
マアサは、たき火の中から適当な枝を引き抜き、それに火をつけた。
「さてと……問題は、面倒なことに敵さんの性格の位置がわからないってところだな。大体どの辺まで近づければ明かりをつけられそう?」
「そうですわね……この木の枝一本の火で炎の魔法を使うとなると、出来るだけ近くによりたいですわね」
「そうか……こっちからもできる限りサポートする。がんばってくれ」
「えぇ。わかってますわ」
相手もこちらをしっかりと認識していないのだろうか?
あの氷塊以来攻撃は飛んでこなかったが、次の攻撃がいつあるかわからない。
マアサは、先ほど氷が飛んできた方向へ向けて走り出した。
読んでいただきありがとうございます。
さて、次回は再び戦闘となりそうです。
これからもよろしくお願いします。




