第十四話 鏡の洞窟
光の中を抜けると森の外に……ということはなく、不思議な空間につながっていた。
森から一転して周りは、ごつごつとした岩場がひろがっていて、壁は鏡を埋め込んであるかのように誠哉の姿を映していた。
「どう……なっているんだ?」
「あらら……お兄様もこちらに来てしまいましたの?」
「マアサ? それにアンナまで……」
どうやら、彼女たちが消えた原因はあの光にあったようだ。
後ろを振り向いているが、光は消えていてただただ暗い洞窟があるのみである。
「これは……ワープホールでしょうか?」
「ワープホール?」
アリスが唐突に言い出したいかにもな名称のそれについて説明を求める。
名前からしてわからないこともないが……
「ワープホールというのはその名の通り、迷宮に時々現れる穴のことでここをくぐると別の場所へ飛ばされるらしいです。その場所というのは、迷宮の直下というのが有力な説ですね」
「つまり、面倒なことに地下に潜ってしまったってわけか……」
「なんというか、きれいな鏡ですわ。ぜひとも持って帰りたいですわ」
マアサとアンナは食い入るように鏡を見つめていた。
だが、空中を浮遊しているアリスはやれやれと言わんばかりの様子である。
「それ自体が壁なんですよ? どうやって持ち帰るつもりですか」
「そんなもの魔法でちょちょいのチョイですわ」
「そうね……聖剣を使えば何とか……」
「……あなたたちならやりかねませんね」
アリスの言う通り、二人の実力を考えればここの壁をえぐり取って持ち帰ることなどたやすいだろう。だって、勇者と魔王だ。世界の頂点と言っても問題がないのだから、それぐらいはできないと逆に困ってしまう。
「それともかく、出口は分かるか?」
「わかるとお思いで?」
「やっぱりな……」
やはり、彼女はここから出る方法を知らないらしい。
候補としては、もう一度ワープホールが出るのを待ってみるか、上に向かって穴を掘ってみる。もしくは洞窟の中を探査するということだろう。
まず、光が消えたところを見るとワープホールの出現の周期は不定期である可能性があるため、これに期待するのは難しいだろう。
それに天井を掘ってみるということに関しては、技術的には可能だろうが、ここがどのくらいの地下で地上がどのような状態になっているか知ることができないという欠点がある。
つまり、一番安全かつかつ実は方法は……
「面倒だけど、洞窟を探索するしかないか……」
誠哉の目の前にはどこまでも続く鏡の洞窟が広がっていて、どこが道なのかもここから見ては分かりづらい。
「でも、真っ暗じゃないってことは近くから光が差し込んでいるってことだよな」
「えぇまぁ……普通に考えればそうなりますね」
「そうなると……面倒だけど明るい方に歩いてみるか……」
そう言って、誠哉は比較的明るい方へ向けて歩き出した。
それにマアサとアンナも続き、アリスもその後を追う。
だが、この考えが甘かったという事実を数時間後に知ることになるのだ……
*
洞窟の中はかなり複雑なつくりとなっている上に鏡の所為で正しい道がどこにあるのかよくわからなかった。
横道はわずかな変化があるのみ、それを見極めるのは相当困難な作業である。
目を凝らして、壁を見るが結局、しるしをつけてみてもおなじ場所に何度も戻ってしまっているという現実を突きつけられるだけだ。
「いつになったら出れるのですの?」
「本当にまずいですね……そもそも出口があるんでしょうか?」
「面倒だけど、出口がない洞窟なんてないんじゃないの? たぶん……」
誠哉は皆を元気付けようととするのだが、彼自身限界が近づいていて、少し弱気になっていた。
それに先ほどから、アンナの口数が妙に少ないのも気になっていた。
「アンナ。無理するなよ」
「えっ? うん。大丈夫」
そう答えたアンナの表情は真っ青で大丈夫には見えなかった。
みんなのためにも早く出口を見つけなければ。誠哉は、そう意気込んで再び洞窟の壁に手を当てて歩き始めた。




