第十三話 森の出口へ
川のせせらぎが聞こえる道をいつもの面々で歩いていた。
あの後起きたアンナは、結局何も語ってくれなかった。
あれ以降、時々魔物と遭遇することがあったが、アンナが魔力切れを起こすことはなかった。
ときどきマアサが城に帰ることがあったが、基本的に彼女も一緒にいて、迷宮の出口を探す日々が続いている。
ところで最近、誠哉はあることが気になっていた。
「なぁマアサ。もしかして、森の出口がどこか知ってるんじゃないか?」
「えぇ。知ってますが何か?」
「…………」
「…………そんな気がしてた」
今まで気づかなかったのもおかしいのかもしれないが、冷静に考えていたら出口を知らずして城とこの森を行き来できるわけがない。
「えっ? お兄様方は出口が分かったうえで迷宮探索をしているのでは?」
「いや、面倒なことに出口がわからなくて迷子になっている」
「本当ですの?」
「本当です。はい」
誠哉の一言を最後に微妙な空気が場を支配する。
どうやら、マアサは誠哉たちが迷子であるという認識がなかったようだ。
別段、勇者が出れないように仕向けようとかそんな真っ黒な考えが存在するわけがない。
「ともかく、近くの町まで案内を頼んでもいい?」
「えぇ。そういうことでしたら……アンナさんもそちらでよろしくて?」
「そうね。私もいったん立て直したいところだし、そうしようかな」
「では、ご案内いたしますわ」
ふと、アリスの了承を得ていないことに気づいて彼女の方を見たが、特に異論がある様子ではなかったため、そのままマアサについていくことにする。
その時、彼女がどこかさびしげな表情を浮かべていたのは気のせいであろうか?
だが、目の前を歩いているマアサはいつも通り快活で明るかったため、気のせいだったかもしれない。
「マアサ。町までどのくらいかかるんだ?」
「そうですわね……この場所からですと、一日もあれば十分かと」
「そうか……ありがとう」
誠哉が礼を言うとマアサは、うれしそうに満面の笑みを浮かべた。
「いえ。お兄様のためですわ。そう……せめてお兄様だけでも」
「何か言った? 面倒なことに後半が聞こえなかったけど」
「いえ、なんでもございませんわ」
なんだか、街へ行くといったとたんにマアサの様子がおかしくなったのは気のせいであろうか?
町に何かあるのかそれとも……
「主。主!」
「うん? どうしたの?」
突如、飛び込んできたアリスの声で思考は停止され現実に引き戻された。
彼女の方を見ると、目にいっぱい涙をためて今にも泣きだしそうな雰囲気だった。
「どうしたのじゃありませよ! 話しかけても気づいてくれませんし、そもそも最近かまってくれないですし……」
「えっと……ごめん」
最近、アリスのことをすっかり忘れていることが多い気がする。
いつの間にか前を歩いていた二人はいなくなっていて、アリスと二人きりになっていた。
「あれ? 二人は?」
「今頃ですか……」
アリスはやれやれと言わんばかりの呆れ顔だ。
考え事に集中してしまって二人を見失ってしまったのだろうか?
「先ほど、森の角を曲がったとたんにお二人の姿が消えたんです。そのことに気づいていただきたくて話しかけていたのですが?」
「あぁ……えっと、ごめん」
「本当ですよ。それよりもお二人を見つけないと」
「そうだな」
とりあえず、彼女たちが消えたと思われる場所に行ってみるが、そこには他と同様に道があるだけだ。いや、正確に言えばそうではなかった。
その道の先にはこれまでの道とは違い、道の先がまばゆいほどの光に包まれていて、その先がどうなっているのかうかがい知ることができなかった。
「あの光の向こうかもしれませんね」
「そうだな……行ってみるか」
誠哉は、念のためアリスをローブの中に入れて光がさしている方角へ歩き出した。




