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魔王の兄は旅をする  作者: 白波
第十一章 王都の祭り
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第百四十七話 迷宮探索の準備(前編)

 約一週間という時間をかけてマリーから借りた本を読破したアンジェルは、街へと来ていた。


 目的は、本に書いてあった道具を買いに行くためだ。


 まずは、少なくとも迷宮にたどり着くまでの期間に上乗せして約一週間分の食料である。

 これは、迷宮内での食糧調達は割と困難を極める場合があるので、迷わずに魔族領にたどり着いたときの3日分に合わせて保険で少し持っておくとよいという量らしい。


 アンジェルの目的はあくまで先代勇者捜索であるのだが、いったん魔族領まで抜けてそこで再び食料を調達しようと考えているのだ。

 これに関しては、通貨が同じかどうか不安だが、そこらへんはどうにかなるだろう。これらの問題を踏まえたうえで「迷宮探索のすゝめ」に記されている通りに魔族が人間に対して寛容であるということを祈るしかない。


「さてと……」


 市場につくとアンジェルは目的のものを探し始める。

 まず、前提として保存がきかなければならない。なので、干し肉などがいいだろう。


 今日は祭りの当日ということもあっていつもの商店に加えてたくさんの露店が並んでいるため、人ごみが尋常ではなかった。

 アンジェルは、人ごみをかき分けるように歩くと、ある店に入って行った。


「久しぶりね」


 店の中に入るなり、アンジェルは店主に話しかけた。


「おう。アンジェルちゃんかい。こんなところに来るなんて珍しいな……なんだ、祭りを見に来て立ち寄ったとかそんなところかい?」


 店主のおばさんは、笑顔でアンジェルを出迎えた。


 店の中には、たくさんの食料が積まれていて、天上からは干し肉がぶら下がっている。


 王都の一角にあるこの店は、主に冒険者向けの食料を扱っている。まさか、自分が買い物に来るなんて思ってもみなかったが……


「ねぇ日持ちする食糧って何があるの? ちょっと、遠くに行くものだから……少なくとも半月ぐらい持つ奴がいいわね」

「なんだい? アンジェルちゃんついに王都を追い出されちゃうのかい!」

「なんでそうなるのよ。調査よ調査。王宮図書館の仕事のうちでしょ?」


 アンジェルが説明すると、店主はどこかホッとしたように肩の力を抜いた。


「でも、半月って結構長いね。どこに行くんだい?」

「森の迷宮よ」


 アンジェルが行先を告げた途端、店主の動きがフリーズしたように固まってしまった。


「迷宮って、アンジェルちゃんがかい?」

「えぇ。そうよ」


 店主は、驚いたような顔でアンジェルの肩をつかんだ。


「わるいことは言わない。断りなさい!」

「危険なことは分かっているけど、はっきり言って私の問題なのよ。だから、私が行かないといけないの」


 アンジェルが真剣なまなざしで店主を見つけると、彼女はどこか諦めたようにため息をついた。


「……そうかい……だったら、まぁ迷宮に行くつもりで用意するんだったら、入る前にある町で買う方が荷物が少なくていいと思うわ。そうね。紹介状を書いてあげるから、ここではとりあえず迷宮付近の町までの分だけ買って行ったらどうかしら?」

「じゃぁそうするわ。全部でおいくらぐらいかしら?」


 アンジェルは財布を開く。

 そこには旅銀としてマリーからもらってきたお金が入ってきた。


「そうだね。あそこまで行こうとすると、大体二週間分はいるだろうから……食材にこだわらないのなら、2500Gで用意するわ。ただ、用意するのに少し時間をもらうから、夕方に取りに来てもらうことになるけれど」

「それでいいわ。お願い」

「そうかい。だったら、夕方に取りに来ておくれ。お代もその時でいいよ」

「わかったわ。ありがとう」


 そう言って、アンジェルは店を後にした。

 まだまだ買うものはある。アンジェルは足早に人ごみの中に消えて行った。

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