第百二十九話 新日新聞本社
先代勇者の捜索を始めてから数日。
誠哉とユキは王都にある新日新聞という会社の本社に来ていた。
こぎれいに整頓された応接間で待っていると、一人の少女が部屋に入ってきた。
「初めまして。新日新聞で記者をやっています川代怜菜です。まぁ怜菜とで呼んでください」
怜菜と名乗った少女は、ソファーに座り、誠哉たちにも座るように促した。
誠哉が座ると、怜菜はさっそくメモ帳とペンを取り出した。
「いやはや、すいませんね。わざわざ本社まで来てもらっちゃって。普段でしたら、そちらまで赴くんですけれども、ちょっとごたごたしてまして……そんな前置きはどうでもいいとして、さっそく本題と行きましょうか」
そういうと、怜菜は何枚かの写真を机の上に置いた。
そこには、銀髪の少女が写っていたのだが、画像が荒く、顔までははっきりとは確認できなかった。
「これは?」
「あなたたちが先代勇者を探しているっていう噂を聞きましてね。偶然にもこの前撮った写真の端に移っていたものですから引き延ばしたんですよ」
「なるほど……」
彼女の周りをよく見れば、奥に本棚があることがわかる。
少し古びた雰囲気のそれは、少し前に訪れた場所と似ている気がした。
「もしかして、王宮図書館?」
「えぇそうです。ちょっと、写した写真というのがあれだったので、王宮側に先代勇者創作のヒントとして出せるような代物ではないんですけれど、調べたところこの時間帯に空間転移系の魔法がいくつか使われた形跡がありまして……ほとんどは正常なものだったのですが、まさにこの写真がとられた直後に発動したものは、とてもじゃないが狙ったところに転移できるようなものではなかったようで、偶発的に発動した可能性が高いそうです。それを踏まえて考えると、先代勇者がいなくなってしまったのは単なる事故ではないか。そう思えてきます」
彼女は、写真をしまってただ……と続ける。
顔はうつむいていて、表情を読み取ることはできないが、声のトーンは低く、深刻な問題を予感させた。
「そうだとすると、いくつかおかしな矛盾点が出てくるんです。日付的にはこの数日後、先代勇者創作に乗り出した近衛兵が声をかけると、彼女はおびえて逃げ出したというんです。そんなことが1週間ほど続いたんですが、ある日を境に彼女は忽然と王都から姿を消してしまいました。それを知った国王は、彼女を脱走兵として手配したそうですが、それでもまったく行方がつかめないらしいんです」
「それは、面倒なことに妙な話だな。単なる事故で戻れなくなったのなら、素直に近衛兵についていけばいいだけの話だ。それなのに、逃げ出すなんて……」
マリーは命の危機を感じて、逃げ出したのではないかと言っていた。
そうだとすれば、彼女は図書館で転移魔法の使い方を探して、見よう見まねで使ってみたが、王都から出られなかったとか、そんなところなのだろうか?
「じゃあ、王都の中を探してもやっぱり無駄ってことか……」
「かもしれないわね。でも、この世界は広いわ。ただやみくもに探せばいいっていう話じゃない。だから、協力しません? あなたは先代勇者を見つけるための情報がほしい、私は新聞に書くネタがほしい。こじつけには近いと思いますが、利害は一致していますよ?」
怜菜は、グイッと顔を誠哉の方に近づける。
誠哉は、あごに手を当てて数分、思考を固めた後、答えを出した。
「……面倒なことに言ってくれるね……本当に。わかったよ。ボクだって情報はほしいからね」
「そりゃどうも! そっちの妹さんもそれでいいですか?」
怜菜の視線は、部屋に入ってから一言も発していないユキに向けられた。
「いえ、大丈夫です。セイヤお兄様がいいと言えば、私はそれについてきます」
「そうですか。わかりました。それでは、何かわかれば連絡しますので……これを持っていてください」
怜菜は、ポケットの中から取り出した小さい八角形の透明な石を出して誠哉に渡す。
「これを持っているだけで、好きな時に私と通信ができます。まぁ日本でいう携帯電話みたいなものだと思ってください。それでは、これで失礼させていただきます」
そういうと、怜菜はきれいにお辞儀をして部屋から退室していった。




