第十一話 決着 ホワイトドッグ
五頭ほどホワイトドッグを切り捨てると、ようやくリーダーの前にたどり着いた。
周りよりも一回り大きな体を持つそいつは、こちらをジッと見つめている。
「面倒な役回りだな……」
誠哉の一言を最後に無言のにらみ合いが始まった。
いつの間にか、右にマアサ、左にアンナが並んだ。
「お兄様。邪魔なワンコには眠っていただきましたのでご安心下さいまし」
そう言って笑みを浮かべいる姿は魔王と呼ぶのに相応しいものだった。
「まったく……何でこんなに魔物がいるんだか」
アンナもまた、切っ先をホワイトドッグに向けている姿は勇者たる気迫をいかんなく発揮していた。
対戦どころか、魔王と勇者の共闘というある種の貴重な光景が目の前で展開されようとしていた。
「足引っ張らないでよ!」
「そちらこそ、お兄様のお邪魔にならないでくださいまし」
最初に動いたのは、左右にいた女性人二人だった。
少し遅れる形でホワイトドッグと誠哉が動き出す。
ホワイトドッグは巨体をくねらせながらマアサの雷撃とアンナの斬撃をよける。
「面倒だが、これは全部陽動なんだよね」
そんなことを言いながら振り下ろされたナイフは、ホワイトドッグの前足に命中した。
「面倒だな。せっかく首を狙ったのに」
三度にわたり連続で攻撃を受けたにもかかわらず、二度よけた上にあたった攻撃もあまり効果はなかったようで前足から血を流しながらも力強く立っていた。
「なるほど……リーダーはってるだけあってなかなか倒れないってわけか」
「えぇ。当然ながら群れで一番強いのがリーダーです。三人の連携が大切になってきますね」
「解説どうも……面倒だからサッサと片付けますか」
両手ナイフを持ったまま、ホワイトドッグの背後に立っている二人に目くばせする。
誠哉が大きく動いてナイフを振りかざす。そちらにホワイトドッグが気を取られ、よけようとした背後からマアサが再び雷撃を喰らわせ、ひるんだところでアンナが背中から切り付ける。
ホワイトドッグはしばらく抵抗しようとしていたが、やがてその巨体は動きを止めてしまった。
「やったか?」
三人とも肩で息をしていた。
「はぁはぁ……まったく……どうなっているんですの……」
「ほんとに……っ」
マアサの言葉にこたえようとしたアンナが崩れ落ちた。
「アンナ!」
誠哉が急いで駆け寄り、彼女の様子を確認すると口から血を吐いて腕からも血を流していた。
状況を察したアリスが真っ青な顔をしてローブの中から飛び出し、マアサも駆け寄ってきた。
「こんなけがするほど無理してどうするんですの!」
「知って……たの?」
「えぇ! 勇者アンナのことならいろいろと調べてありますの! ですから、この状態の原因ぐらいわかっておりますわ!」
マアサは、カバンを開けて何かを探しはじめ、誠哉は服の袖を破いてアンナの傷の応急手当てをする。
薬草を探しに行ったのだろうか? アリスの姿はいつの間にかなくなっていた。
「マアサ。何か知ってるのか?」
「えぇ。彼女が持っている剣は歴代の勇者が使っている聖剣ですわ。それには少々厄介な特徴がありますの。まぁそれは、彼女の治療が完了してから詳しくお話いたしますわ」
マアサはカバンの中から取り出した白い錠剤と水をアンナに渡した。
「これは、魔力切れを補うための薬ですわ。急いで飲んでくださいまし」
「魔力切れ? なんでそんな症状が?」
「ですから、話はあとにしてくださいまし。お兄様。この魔方陣をお願いしますわ」
渡された紙に書いてあったのは強力な治癒魔法の魔方陣だった。
どうやら、事態は思っているよりも深刻らしい。
誠哉は急いで魔方陣を書き始めた。




