第十話 白い霧の魔物
やっとのことで起床できた誠哉は、さっそく朝食を探していた。
アリスのおかげで食べれるものは大体わかっているのだが、そう簡単に見つかるものではない。
「ねぇ水の音聞こえない?」
「えっ?」
いつの間にか来ていたアンナの言葉に従って耳を澄ましてみると確かにかすかだが、水の音が聞こえた。
「もしかしたら川があるかもしれないから行きましょう」
アンナはすでに音がした方へ歩き出していた。
*
先ほどまで何かしらの準備をしていたらしいマアサも加わり、音源を探してみるが水の流れは見つからなかった。
何かの聞き間違いかとも思ってしまうが、二人そろって聞き間違えるなどないはずだ。
「とりあえず、いったん引き返しましょう。なんだか嫌な感じがします」
何かを感じ取ったらしいアリスは、不安げに周りを見回していた。
実をいうと、誠哉も先ほどから誰かに見られている気がしていたのだ。あえて、そのことには触れていないのだが……
「仕方ない……面倒だがいったん戻る……か?」
元来た道を引き返そうとしたとたん、あたりは真っ白な霧に包まれ一気に視界を奪われてしまった。
「えっ何?」
「これは……魔物の攻撃ですわ。しかし、なぜこんなところに魔物が……」
どうやら、マアサは森で魔物が出没するという現象を知らなかったらしい。
三人はそれぞれあたりを警戒しながら臨戦態勢に入る。
「マアサ。どんな魔物がくるかわかるか?」
「そうですわね……白い霧を出す魔物と言えばホワイトドッグですわね。群れで襲いかかってくる厄介な魔物ですわ」
「なるほど……きりに紛れて攻撃してくるってわけか……めんどくさいな」
そんなことを言っている間にもグルルルルという低いうなり声とともにたくさんの気配に囲まれているのが分かった。
気配だけで言えば軽く十頭はいるだろうか?
「アリス。ローブの中に」
「はい。主、ホワイトドッグは、リーダーの指示で統率されていますが、個体ごとで見ればあまり強くありません。なので、少しだけ離れた場所にいるリーダーを倒せば群れは離散すると思います」
「なるほど……面倒なことに真っ先に頭を借りに行かないといけないってわけか……」
二人の方をちらりと見ると、先ほどの話を聞いていたようで小さくうなづきあっていた。
「お兄様。私たちがほかの奴を引きつけますので、お兄様はリーダーを狩りに行ってくださいまし」
「危険も何もあなたが一番強そうだし、頼むわよ」
勇者は剣、魔王は魔法の杖を取り出して戦いの火ぶたが切って落とされるのを待っていた。
「さてと……面倒だからさっさと片付けますか!」
誠哉が地面をけるのと同時にアンナとマアサもそれぞれ別の方向へ地をけった。
まず、マアサが魔法で霧を払い、取り囲んでいるホワイトドッグたちの姿をあらわにする。
「まったく。思ったよりも多いな……めんどくさいにもほどがある」
霧が晴れて姿を現したのは、三十頭近くの真っ白で巨大な体を持つどちらかというとオオカミに近い犬たちである。
襲いかかってきた二頭のホワイトドッグの首をナイフで正確に切りさき、奥の方で様子を見ているリーダーの方に向けて走り出す。
リーダーも自分の身の危険を感じたのか、仲間に指示を出そうとしたが、あたりにかけられている防音の魔法のせいで群れに指示は行き届かず、早くも指揮命令系統が瓦解し始めているようだった。
だが、魔物たちはそれでもなお、本能に従って攻撃してくる。
一頭、また一頭と確実に始末していき、数を減らしていくが、一向にリーダーのところにたどり着けなかった。
「ったく面倒だ」
ナイフをもう一本取り出して、両手に構える。もともと、鹿神との戦闘で一本なくしてしまったのだが、マアサが新たに持ってきてくれたのだ。
誠哉は二本のナイフを振りかざしながら、ただただまっすぐと進んでいった。
今回は、さらに魔物が登場いたしました。
はたして、勇者と魔王、誠哉はこの危機を脱せられるのか?
これからもよろしくお願いします。




