第百二話 マリーの真意
いったん考えを整理した方がいいかもしれない。
いくつか腑に落ちない点があるのだ。まず、館長の依頼は先代勇者を探せとのことだ。
しかし、ここに来て不自然な点がある。
アンナが国王に聞いた話では、先代勇者は近衛兵隊長として王宮を出ているという話だった。しかし、目の前の少女は、先代勇者は行方不明だというのだ。
「おや、今代勇者が先代勇者のことを聞いていたりするのかしら? だったら、適当なウソを教えられてるんでしょうね……そうそう、疑問があるなら口にしなさい。その方が正確に伝わるわ」
「だったら聞くけどさ、なんで先代勇者を探してほしいの?」
「そうね。そもそも、助けてっていうメッセージは彼女から発せられたものを私が受け取っただけの話なのよ。立場上、あまり堂々と外には出られないから、あぁ言った手段を使っただけよ。まぁつまり、助けてって言う声を聴いてきてくれるような人を探していたのよ。その候補が今代勇者だったっていうだけの話。まぁ気にしてくれてもからくりには、気づけなかったみたいだけど……」
そういうと、マリーは立ち上がって誠哉の前まで歩いてきた。
「そうだ。参考程度に聞いてみるけれど、あなた人探しは得意?」
「面倒だけど、あまり得意じゃないかもね。やったことがあまりないっていうのもあるけど」
「そう。わかった。それと、彼女の居場所だけど……結構奇抜なことを平気でやる人だから、普通に人が寄り付かないような場所を探すといいかもね……たとえば、森の迷宮なんてどうかしら? 魔王討伐のためには必ず通る道だし、彼女、結構詳しいかもね」
「また迷宮かよ」
司書の一人が紅茶を入れたカップをマリーと誠哉の前に置いた。
「えぇ。と言っても、あくまで可能性だし、私が普通に思いつくようじゃ候補から外した方がいいかもね」
マリーは紅茶に角砂糖を入れて、それを口に含む。
「まぁそう簡単に見つかってしまってもつまらないから、せいぜい楽しませて頂戴」
「面倒だから、さっさと終わらせるよ。それと、一つ聞いてもいい?」
自分で何でも聞けといった割には、マリーはいかにもめんどくさいと言いたげな表情をする。
だが、それでもかまわないと割り切って誠哉は口を開いた。
「先代勇者が行方をくらますきっかけというか、理由は何か思い当たらないの?」
これは、一番重要なことである。
依頼内容は先代勇者を見つけて、現在地を知らせるだけであって、連れ戻すということではない。
しかし、彼女の心情によっては探す段階である程度の配慮が必要となってくるのだ。
たとえば、単なる気まぐれとかだったら、王都から少し離れた静かな場所を探せばいいだろうし、何かしらの脅威を感じて隠れているのなら、裏通りだとか潜伏できそうな場所を探す必要が出てくるのだ。
「そうね」
マリーは、紅茶をカップにおいて、天井を仰ぐ。
「強いて言うならば、彼女自身が何かしらの脅威を感じて隠れている。というのが一番正解に近いかもしれないわね」
「脅威って具体的に何?」
「それは言えないわ。まぁ彼女を助けるかどうかは、あなた次第。私に居場所を教えるだけでも良し、彼女を助けた上でその結果報告でも良し。まぁ今代勇者に依頼しようとしたのも彼女だったら、先代勇者を手助けしてくれそうだったからよ」
今、先代勇者がどんな立ち位置にいるか知らないが、彼女の言動から察するに深刻な状況なのだろう。
誠哉は、うなづいてから返事をする。
「わかった。面倒だけど、引き受けさせてもらうよ」
「ありがとう。情報の真偽はあまり問わないけれど、なるべくなら信ぴょう性のある情報がいいわ」
「わかりました。それじゃ、さっそく情報収集と行くか……この図書館に地図とかは?」
「あるわ。そうね……あとで、柴に持って行かせるから待っていなさい」
その言葉を聞いた誠哉は、ユキの手を引いて図書館の出口に向かって歩き出す。
その瞬間、背中から一気に押されるような感覚がして、二人の体は出口に向かって飛んで行った。
「お願い。あの子を助けて頂戴」
そんな弱弱しい声を聞きながら……




