後日談・空と渚
ずっと行方不明だった父親が、やっと見つかり帰ってきた。
色々が落ち着いてから、そう聞かされた空は。
「お、お父さんっ! し……、心配したんだからっ!!」
それはそれは、よく泣いた。
所在の胸の中で、他のみんなが「自分は泣かなくてもいいな」と思うくらいには。
少しの間だけ父親を振り回してから、柔らかく微笑んで。
それまでの色々を、ひとつずつ積み重ねていく。
やっと手に入れた、普通の家族の日常。
その中で、鎮との恋もまた、ゆっくりゆっくりと、育っていく。
歌うことも、愛することも。
どちらも手放さずにいられる未来を、空は選んだ。
だから今は、ただ。
この穏やかな日々に、そっと身を委ねていくのだった。
「……た、ただいま……?」
「…………おかえりなさい」
七年ぶりに見た父親は、特に変わったところもなく。
相変わらず栗色で、ほやほやしていた。
静かに見つめていると、帰宅の挨拶をしてきたので、返しておく。
出掛けたなら、帰ってくる。
当たり前のことなのに、と首を傾げた。
——帰ってきてくれて、よかった。
ほんの少しだけ、胸に温かいものが満ちる。
嬉しくなったのは、内緒。
たまには一緒にいてあげようか、なんて思いながら。
自分でも気づかないまま、唇に笑みを乗せて。
部屋に戻り、PCを立ち上げた。
父親とどう接すればいいのか、まだ決めきれないままの渚は。
それでも、少しずつ世界を広げていく。
たとえば——るぅるぅ。
モモンガのような姿で、「○○なのだ〜」と喋る、不思議な生き物。
つぶらな赤い瞳で見上げてきたかと思えば、
夜には大人の姿で、渚を抱いて空へと連れ出す。
そのどれもが現実離れしていて。
けれど、不思議と嫌ではなかった。
学校も、海女の修行も。
家族との日々も。
少しずつ、少しずつ。
閉ざしていた心が、ほどけていく。
るぅるぅからもらった、真珠のついた黒いブローチを胸に。
渚は静かに思う。
——必ず、会いにいく。
種族も、時間も、世界すら超えた、恋だとしても。
とにあ様宅
鎮くん、るぅるぅくん
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