12/31 望みと引き換えに
「……お姉ちゃん、神様、なんだよね?」
「真に、とは言えぬが。まぁ、そのようなもの、かのぉ」
ころころ笑いながら、汐とそっくりな神様はそう言う。
確かに着ているものも、上等なーーフリルがたくさん付いた、十二単衣のような格好で、昔のお姫様のよう。ふわふわの栗色の髪が、白い空間に踊る。
「お父さんの、おとぎ話の神様、だよね?」
「ほう?」
栗色の瞳が、笑みを描く。
続きを促すように見つめてくる瞳に。
汐はごくりと唾を飲み込んでから、ゆっくりと告げた。
「ーー〈管理者〉の神様」
「ほ、ほほほっ!」
何がおかしいのか。いきなり神様が笑い出した。
扇を開き口元を隠して。文字通り空をくるくる回転しながら、笑い転げる。
汐は同じく栗色の瞳をぱちくりとして、笑い転げる神様を見上げるしかない。
いつまで笑ってるんだろう、とそろそろ汐が思い始めた時。
「あの小童、やりおったな! 妾に〈全てを委ねる〉と申しておきながら!!」
パチン! と高らかに扇を閉じ、ズンと足元に舞い降りてきた。
その顔には、明らかな怒りが滲んでいた。
怖い。
だけれども、汐も。
このまま引き下がる訳には、いかなかった。
多分。
汐の考えが間違っていなければ。
あの小童とは、きっと所在の事で。
全てを委ねなければならなかった、その事態が。
所在の七年間の不在。
なのだとしたらーー
どくん、鼓動が鳴る。
〈あの時〉聞いた、確かな声。
その声は。
この神様に間違いない。
なら。
全ての責任はーー
ぎゅっと。小さな手を握り込む。
夜輝石の光が、ふわりと胸に溢れる。
怒りに髪を戦慄かせている神様を、
そろりと汐は見上げて。
「お願い! これ以上、お父さんに何もしないでっ」
汐の声に栗色の瞳を瞬いた後。
ゆぅるりと汐に向き直り。
にたり。と嗤う。
「ほんに、聡いおなごじゃの。ならば、お主は妾に〈何をくれる〉のじゃ?」
見下げる視線が、汐を射る。
本来ならすくみ上がり、震えて声すら出せない程の威圧。
だが。
汐は、もっと怖いものを知っている。
何も出来ずに、大切な人を失うこと。
失わせることを。
だから。
汐は、その目をじっ、と見返して。
「……汐は、お姉ちゃんの望みを知ってる」
それは、〈委ねられなかったもの〉。
「だからーー」
そう告げて、
小さなその手を差し出した。




