12/31 なんで?
「お父さん、なんだよ?」
その瞬間。
空気が、ひび割れた。ような気がした。
びきり、と。
目には見えない何かに、亀裂が走る。
「……っ、汐!!」
フィルの叫びが、遅れて届く。
所在が、驚きに目を見開いていた。
栗色の瞳の奥で、何かが呼び起こされたかのような。
所在の手にある腕輪が、夜輝石がキラリと夜に光りを弾く。
「……いま、なんて……」
汐は、ごくりと息を飲み。
そっと、その一歩を踏み出した。
岩場に靴が擦れる音が、やけに大きく耳に響く。
「お父さん、だよ」
揺れる所在の瞳を見つめ。
はっきりと、言い切る。
「汐のーー」
口にした瞬間。
天に送られたはずの光りの筋が。
こちらへと迫り、弾けた。
ぶわ、と。
天へ伸びていた光が逆流するように崩れ、所在の体に叩き込まれる。
「ーーーー」
「!?」
「所在さんっ!?」
それ、は。
身体を傷付けるものじゃない。
そういう類のものじゃない。
それはわかっている。
わかっている、でもだからこそーー
「お父さんっ!!」
汐は叫んだ。
いつの間にか、庇うようにして前に立ったフィルを押し退けて、必死に手を伸ばす。
「ダメだ、汐! おっ前、危ねぇ事はしないって、言ったろ!!」
フィルの力強い腕に抱きしめられて、身動きが取れない。
「フィル離して! お父さんがーー」
だが、汐がそう呼べば呼ぶ程。
「——ッぁ、あ……ああぁっ!!」
所在が、頭を押さえて呻めき苦しむ。
がくりとその場に膝を付く。
栗色の瞳が揺れ。
呼気が荒く乱れる。
「おとうーー」
「やめろ!!」
「っ!?」
初めて所在が、鋭い声を上げた。
汐は、びくりと身を竦ませる。
所在の、いつも穏やかなその瞳は。
汐の瞳を、強く射抜いた。
まるで、責めているかのように。
ぽろり。
汐の栗色の瞳から、光の雫がこぼれ落ちた。
「……なんで……?」
しかし、汐が何かいう前に。
「それ以上は……、ダメだ。ーーお前のためにならない」
所在が、苦しげに声を絞り出した。
「ーーえ?」




