12/31 ごめんね
「…………」
予感、だろう、これは。
いや、もしかしたら。
〈彼女〉が、呼んでいるのかも知れない。
それなら、所在に選択肢はなかった。
「……年の瀬だけど、まぁ。〈彼女〉には、そーゆー事は、関係がないからね……」
借りている部屋は。
綺麗に掃除しておいた。
大晦日だからね。
持って来ていた荷物も、一つに纏めておく。
何があるかーー、わからないし。
もしかしたら、戻ってこれないかも、知れないし。
「……まぁ。今まで〈彼女〉からのお願いで、そんな事は殆んどなかったけれど……」
うろな(ここ)は、不思議の町だからね、と所在は呟いて。
年越し参りにでも行くような気軽さで。
うろや旅館を後にした。
その日は汐にとって、とても大切な日だった。
でも。
今年はそれが、少し違うという事は、わかっていた。
それどころか。
今日を逃せば、もう。
今まで通りのいつもの日が、来なくなるだろう事が。
汐にはわかっていた。
胸に下がる、夜輝石がキラキラと輝く。
今日は大晦日。
夜に子供が外にいたとしても、怪しまれる事はない。
海の家ARIKAで、催し物をする、と海お姉ちゃんが言っていたから。
多分、きっと、大丈夫。
「……行くんだろ?」
「うん」
今回は、フィルと一緒だから。
本当は。
一人で行くつもりだったけど。
行かせてくれそうになかったから。
「絶対に手を出さないで」
そう約束させて。
すごく、すごーく、嫌そうな顔してたけど。
「……危ねぇことは、しねーんだな?」
「うん」
道すがら、フィルが問うてくる。
それににっこり笑っていう。
握る手が、強さを増す。
安心させるように、握り返す。
ごめんね。
本当は嘘なの。
多分、たぶん汐はーー




