08 夜の窓からコンバンワ
実家を飛び出した私は、思い切ってサンジェル様に電話をして事務所を訪ねてみた。そこで「助手として雇ってもらえませんか」とお願いしまくって、なんとかOKを貰うことができたのは、今思い返しても奇跡に近い。(ものすごーく苦々しい顔をしていたので、もしかしたら『勝ち取った』…『もぎ取った』?と言った方が良いのかも知れないけど)我ながら本当に無計画というか無鉄砲だと思う。
それでその話の最中に「マホロさん、ところで貴方、住むところは決まっているのですか?」と聞かれたので「まだ決まってないです」と言ったら、「あなたという人は…」と呆れ顔をされながら今住んでいる部屋を用意してくれた。
で。
案内された部屋は、ボロ屋でもなく普通のアパート。なんと一通り家具もあるしエアコンを始めとした家電もある。なんだかんだ言って面倒見は良い人だ……けど、人使いは荒い。無理言って押しかけた手前、仕事はしなくちゃいけないのは分かってる。大学の授業と課題の時間を考えると、遊んでる暇なんかほとんどない。
そのことで文句を言うつもりはない。
言えるわけない。
……ある一つだけを除いて、だけど。
私は「夜のトイレ」と「夜のお風呂」が苦手だ。あの真っ黒い窓の外が、別の世界に繋がってて、そこから何かが入ってくるんじゃないかとか覗いてくるような感じがして、ムチャクチャ怖い。特に妖怪とか心霊スポットとか宇宙人の特番とか動画見ちゃった後はそう思う。なら見るな!って思うけど、ついつい。
それにここのワンルーム、トイレは窓ないけど、お風呂には小窓がある。ここ廊下にも電灯つけてるけど、遅い時間には消灯しちゃうんだよなぁ。それで、消えてしばらくするとなんか変な気配を感じるんだよね。
う~……けどお風呂は入らないと気持ち悪いし。
とりあえず、あっちは見ないでおこう。
見なかったら何も気づかない。
よーしそうしよう!
……そう思うと逆につい見ちゃうんだよね。
イナイイナイ!
オバケナンカイナイ、オバケナンカウソダ。
……いない、よね?
(◎△◎ きょろり。)
ひぃっ?
なんかいた?いたぁ?
ヤバイ、早く出よう!
( ゜∇゜ ぱたぱたぱた…。)
げ!
なんか緑のちっちゃいのが廊下走ってった?
待ってまってまって!
玄関の鍵、は…閉まってる!じゃどこから?
(そろりそろりそろりそろり……)
(ぞーろ ぞーろ ぞーろ ぞーろ ぞーろ……)
゜∇゜ ゜∇゜ ´∀`´∀`(´`)゜゜ ゜゜ ゜゜ ゜゜
いーやーだぁぁぁぁ!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
「で、眠れなかったと」
「ハイ……何なんですかアレ」
「丁度通り道になってしまっていたのでしょう。時々あるんですよねえ、異世界への「門」が勝手に開いてしまうことが」
「うぅぅ、それどーにかならないんですか?」
「仕方ないですねえ。応急措置として「門」とそこの扉をつなげておきましょうか。それなら自宅付近にはあまり出てこないでしょう」
「ちょっとぉ!?ここに繋げちゃうんですか?」
「と、言う訳でこの扉は無闇に開けたり入ったりしないように。一応封印はしておきますが、……ごく稀に弱まる事がありますので注意なさい」
「へ?それって出てきちゃうことがあるってことじゃないですか!」
「まぁ、そこまで害があるモノは出てきませんよ」
「い、いやでも……!」
「それと、あの部屋は元々そんな方々用のゲストハウスでしたから、時には立ち寄られるかもしれませんね。それでは私は仕事があるので外出してきます。お店の番は任せましたよ?」
「えええええ!」
待って待って下さい!
あの、昨日の記憶を買い取って下さい!
タダでいいから!
じゃないと私、怖くて家に帰れないんですぅ!
ちょっとぉ?
サンジェル様ぁぁぁ?
トトトトトト……………
え 何何何?
ヤァ ゜∇゜ノ ゜∇゜ノ
───!
ホラでたぁぁぁぁ!!!




