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07 その恋の失敗、本当に忘れてみる?




「はぁ~~~…なぁんであんなこと言っちゃったんだろなぁ…」


 いやまぁ、わかってるよ?

 オレがバカだからだよチクショウ!


 話しはついさっきまで遡るんだけど、クラスで友達としゃべってた時に「オマエさぁ、よく香澄と一緒にいるよな?幼馴染って聞いてたけどさぁ、付き合ってんの?」って言われて……


「あ~?んなわけないだろ?あんなガサツな女のどこが…」


「へ~?ガサツな女で悪かったわね?」


「げ、香澄!?いたのかよ?」


「悪い?直樹は私がいないとこで悪口言うわけだ?」


「いや待て、悪口とかじゃなくてだな」


「……もういい!」


 やっべぇ!

 なんてタイミング悪いんだ!

 

「オマエいいのかよ?追いかけた方が良いぞー」


「誰のせいだと思ってんだよ!」


「オマエが言ったセリフはオマエが選んだんだろーが」


「ぐっ……!」

 

 ………てな感じでさ。


 別に嫌いって訳じゃないんだよ。

 態度や口調はちょっとアレだけど、それだって見ていてこうスカッと気持ちがいいって思ってるし、友達思いで、涙もろくて、えーとそれから……まぁ顔だってスタイルだって……だからどっちかというとだな……




 あ~もう!


 謝らなきゃいけない事くらい分かってんだよ!

 分かってんだけど、さっきのアイツの顔思い出すと、どうにも勇気が出なくてさぁ…そこんとこだけでも記憶から消えてくれりゃあソッコー謝れるかもしれねぇのに…!


 そんなこと考えてたらなんか目の前にさ、小さな看板?ボード?が掲げてある店があったんだよ。


 『あなたの記憶、買い取らせていただきます』


 ……ナンダコレ?「記憶を買い取る」なんてできるはずないじゃん。なんかのイタズラかよ?そもそもこんなとこにこんな店っつーかカンバンあったっけ?




 

 ……………。




 イタズラ………だよな?


 ……あ~もう!なんか気になっちゃうじゃんか!

 こーなったらイタズラ上等だよ!この状況どーにかしてくれんなら、ちょっとだけ話聞いてみてもいいかもしんないし!金とられるんだったらソッコー「ごめんなさい」して出りゃいいし!


 



 チリンチリンチリーン




「いらっしゃいませ。ご用件をお伺いしましょうか?」


 おお……なんか外国風の室内に黒いスーツ着た人がいる!んでもってあの片目だけのメガネ、初めて見た!なんかカッケェ!何歳かわかんねーけど、大人のオトコって感じがする!


「あの、ここって『記憶を買い取る』って書いてあった……んですけど?」


「ええ、そうですよ。貴方様がお望みであれば、ですけどね」



 う~ん。


 ウサンクサイ。


 ………とは思うんだけど、なんかこの人見てるとできそうな気がしてくる。なんでだろ?とりあえず相談だけでもできるか、聞いてみよう。


「えっと、ですね。実は…と、友達?とケンカしちゃってですね。謝りたいんですけど、どうにもその時の事考えると踏み出せなくて……」


「ふむ。そういうご相談でしたら……私より適任の者がいますので、そちらに詳しくお話しいただいた方がよろしいでしょう。マホロさん、こちらへ」




 え?

 人変わるの?

 あの女の人に?



「マホロさん、あなたに対応をお願いすると致しましょう」


「え?私ですか?」


「ええ。このような場合はあなたの方が適任だと思いますので。ではお任せしますよ」


「まったく人使いが荒いんだから………」


「何か言いましたか?」


「いーえー?それではお客様、『マホロ』と申します。改めてどうぞよろしくお願い致します」


 そう言ってカウンターまで来たのは、大学生くらい?のショートボブのお姉さんだ。なんとなく雰囲気が香澄に似てなくもない。


「あ、あの、かしこまらなくていいっすよ?そんなの苦手なんで」


「あ、そう?じゃあ遠慮なく。で、今日はどうしたのかな?」


 うん、歳も近いしこっちの方が話しやすいかも。





◇◇◇


「……って訳で、ここに入ってみたってワケっすよ。ほら、溺れる者は『笑い』をつかむって言うじゃないっすか?」


「あーそれ『藁』ね?溺れてる人は『笑い』とってる場合じゃないよね?キミ、もう少し勉強しよっか?」


「ぐっ………キビシイ……!」


「んで、そんなんじゃモテないぞ?」


 くぅぅ……!

 さっきからイタイとこをズバズバとっ……!


「まぁ……でも気持ちは分からなくはないよ。でもね。ちょっと外見てみる?」


「…あ、あれ?香澄?なんでここに?」


 窓の外を見ると、香澄が店の前でウロウロしている。


 でもなんでだ?


「彼女ね、キミより前に来てたんだよ。『ひどいこと言っちゃったから忘れたい』って。これで二人揃ってケンカした記憶を売っちゃえば、元に戻るかもしれないけど………どうする?」


 どうする?って………そりゃ二人して「無かったこと」にしちまえば、前の通りになるかもしれない。けど、アイツは俺が悪いのにわざわざここに来たんだろ?そんなの……




 カッコ悪すぎる。




「いや、いいっす。ちゃんと謝ってくるっす!」


「そっか。じゃあ頑張ってね?」


「ハイっす!」


「『謝る』以外も、よ?」


「べっ!?べべべっべっ別にそんなんじゃ……」


「ほーら。そんなんじゃまた同じことになるよ?素直になったほうがいいんじゃない?」


「……ハイ!」


 そうだな。

 逃げずにちゃんと謝って、それから……。

 

 



◇◇◇


 窓の外では、仲直りができたのか照れくさそうに手を繋いだ二人が歩いて去っていく姿が見える。


「う〜ん、青春だねえ」


「……マホロさん?商談を逃しましたね?」


「ギっクゥ!えーと……サンジェル様?今回は、その、ですね?」


「まぁ良いでしょう。合格です」


「………へ?」


「あなたの選択があの方々に笑顔をもたらしたのです。そのことを忘れないで下さいね」


「は、はぁ……」


「なんですその気の抜けた返事は?」


「ハ、ハイ!あ〜それにしても、青春、だねえ。良いなあ」


「何を年寄りみたいな事を言っているのですか?」


「ちょっ!失礼ですよ!」



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