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03 悪夢以上の悪夢




何度同じ夢を見ればよいのか。




白い雲が輝く夏の青い空を

突如として埋め尽くした閃光


それに続くは


地獄の釜が開いたのかと思うくらいの灼熱

全てを薙ぎ倒す音速超えの爆風

それらによって飛散し襲いかかる硝子や瓦混じりの嵐

見えぬ巨人に押し潰されるかのような空圧



辺りを見渡せば



巻き上げられた粉塵による暗闇の中

火災旋風が幾条も現れ、建物や人を無差別に飲み込んでいく

逃げ惑う人も いや それを「人」と果たして呼んでよいものか

まるで地獄から逃げ出してきた亡者の様な姿で

それでも生きるために 生き残るために

よろよろ ずるずると 体を引きずり逃げていく

ジャリジャリ カチカチと体に刺さった硝子の音を鳴らし

声にならぬ呻き声を上げながら

火がないところへ 

水があるところへ

真っ黒な炭と化した人間のようなものの横を

真っ赤な血だらけの人間の姿をした生物がのろのろとよたよたと逃げていく。



それが、私がかつて味わった、悪夢以上の悪夢だ。

何年も続く悪夢。

ベッドの上で声も出せず体も動かせなくなった今もなお、続く悪夢なのだ。


そう、何年も続くのだ。

未だに続いているのだ。

80年間、同じ夢を私は見るのだ。


あの時の光景が。

あの時の声が。

あの時の痛みが。

あの時の悔恨が。


忘れてはいけない事だとは分かっている。

それでも。

せめて穏やかな最期を遂げたいと思うことは、私のささやかな思いだったのだ。

だが、どうやらそれも叶いそうにない。


(この期に及んで、もうどうにもできんし、な……)


そうやって諦めようとしていた私の頭の中に、直接語りかける声が響いた。




『あなたの記憶、買い取らせていただきます』




それは天使の福音か

はたまた悪魔の囁きか


どちらでも構わない。

この悪夢から、醒ましてくれるのなら。







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