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【連載版】冷酷宰相の娘ですが、父の悪政を理由に婚約破棄されました ~全部論破したら皇太子に気に入られたようです~  作者: 織子


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第三話ー帝国への引き抜き



私は深く頭を下げました。


「エルヴィス・アルカーナ皇太子殿下、知らなかったとはいえ、ご挨拶が遅れまして申し訳ありません」


ドラグレアの王族が銀糸の髪を受け継ぐように、アルカーナ帝国の皇族は金糸の髪と瞳を持つと聞きます。


(髪色は魔法で変えているのだわ)


ドラグレア王国はアルカーナ帝国の属国。もっと早く気づいていなければならなかったのに。失礼をしていないかしら。


エルヴィス皇太子は、ニヤリと微笑って言いました。


「やぁ、アルフォンス。久しいな。君の弟が卒業パーティーで面白い事を始めてな。しばらく見物してたのだが···」


王太子殿下は淡々と答えました。


「卒業パーティーを台無しにしてしまい、申し訳ありません」

「いや、かまわない。良いものが見れた。クリシス令嬢には驚かされた。それで今、侯爵と令嬢をうちにスカウトした所なのだが」

「皇太子殿下、ご冗談を。侯爵を引き抜かれては我が国が回らなくなります。ご容赦ください」


「ふむ。まあそうだろうな。侯爵の有能ぶりは我が国にも聞き及ぶ程だ。何故それを君の弟が知らないのか不可解だが」



「本当に···弁解しようもありません」


王太子は私の後ろで腰を抜かしたままのカシアン殿下を見据えました。その瞳は驚くほど冷えていました。


「あ、兄上···」


カシアン殿下が呟くと、更に冷酷な眼で王太子が睨みました。カシアン殿下はそれ以上口を開かず、俯いてしまいました。


「クリシス令嬢、この度は愚弟が申し訳無い事をした。本人からも後で謝罪をさせるが、とりあえず変わりに謝らせてくれ。侯爵も、いつも国を想い尽力してくれているのに、申し訳無い」


王太子殿下が私とお父様に向かって頭を下げました。私は王族の方が頭を下げると思わず、狼狽えてしまいました。


「い、いえ殿下が謝ることではありません···!」


するとお父様が私と殿下の間に入り、私の言葉を遮るように言いました。


「謝罪を受け入れます。王太子殿下、カシアン殿下の処遇はどうされますか?」


王太子殿下は少しため息と共に口を開きました。


「今まで私も侯爵も弟の愚行に手を打ってきたが、今回はもう庇いきれない。陛下と話し合うが、おそらく王籍から抜き、生母であるアンガーノン伯爵領で静養させることになるだろう」



王太子殿下が合図をすると、数人の騎士がカシアン殿下を連れて下がって行きました。カシアン殿下は呆然としたまま連れて行かれました。アンガーノン伯爵領は王国の端。もう会うことはないかもしれません。


「改めてすまなかったな。ジーナ嬢。カシアンと君の婚約をどうにか破棄せねばと思っていたのだが、こんな形になるとは」

「い、いえ····え?何故破棄を?」


王太子殿下が婚約について思う所があったとは知らなかった。殿下の顔が少し赤くなった。


「そ、それはだな···」

「話している途中ですまないが」


ずいっと割って入ったのはエルヴィス皇太子。


「私の話しが途中だったのでな。侯爵は帝国に来るのは無理だが、君はどうかな?ジーナ・クリシス令嬢」


私は淑女らしからず、ぽかんと口を開けてしまいました。


(えっ冗談ではなかったの)


「わたくしのような若輩が帝国に行っても、とても皇太子殿下のお役に立てるとは思えません」


王国でもお父様の足を引っ張っていると言うのに。


お断りしたものの、皇太子殿下は引き下がりませんでした。


「そう言わず、時間をかけて考えてくれ」


手を握られ、見つめられて頭が真っ白になりそうです。


「そ、そう言われましても」



「皇太子殿下、クリシス令嬢が困っています」


冷え冷えとした表情でアルフォンス殿下が腕を引きよせました。


「ん?アルフォンス。君とクリシス令嬢は存外仲がいいのか?」


え?大変です。王太子殿下との関係を誤解されては、殿下の名に傷が付きます。


「はい····」

「いえ。仲がいいというほどではございません。わたくしはここ一年、父の補佐で王宮に出向いていましたから、会議などで顔を合わせる程度です」


慌てた素振りを見せないよう、淡々と答えました。


「くくっ。なるほど?だから貴族達の事情にも詳しかったのだな」


皇太子殿下は何故か上機嫌になり、王太子殿下は肩を落とされました。どうしたのかしら。


「今日の勧誘はここまでにしよう。侯爵が私を刺さんとばかりに睨んでいるからな」


(え?)


皇太子殿下の言葉にすぐに振り向きましたが、お父様のお顔はいつもと変わりありません。殿下もお父様を誤解しているのでは?


「皇太子殿下、お父様は確かに怖がられておりますが、本当は虫も殺せないほどの優しい方なのですよ」

「なに?!」


皇太子殿下は心底驚いているようです。本当なのに。









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