表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
69/90

許嫁

 それから俺は故郷を語る。

 ミマツの国のどの辺にあるのか。近くには仲の悪い村があって、その間を川が流れていること。ヨシマ村の側には大きな沼があって、そこから大きななまずれたりすること。村の仲間たちのこと。家族のこと。

 ナシのことを言ったら、彼女は一番興味を示した。


「ねえねえ、そのってあんたの彼女?」

「お、おう。幼馴染おさななじみで、付き合い始めたのはここ最近だけどな」

「へええ」


 彼女はにやにやしながらいてくる。

 女と言うのは、男が既に彼女持ちだということを知ったら、普通は離れていくか、機嫌が悪くなるものではないだろうか?

 そのことを訊いてみたらとんでもない答えが返ってきた。


「あ、そういうの慣れてるから」

「慣れてるって」

「くそ親父の奥さん、何人いると思ってるの?」


 そういえば、王も言ってたっけ。


「さあ、三人くらい?」

「五人よ、五人! あたしは三番目のお母さん、くそ親父の四女しじょとして生まれたの」


 そんなにいるのか。政権安定と勢力拡大のためとは言え、凄い数だな。

 そういえば、ナガル王子が五男とか言ってたから、王の子は少なくとも九人以上はいるわけか。

 大所帯だな。……いや、この時代では普通か。

 そんなことを考えながら彼女と話していると、俺たちに声をかけてくる者が出てくる。


「姫様、そのような所で何を……!?」


 多分、彼女を探しに来たのだろう、人混みの中から鎧を着た兵が何人か出てきて、その先頭にいた青年が俺をにらみつける。

 ああ、彼女は王の娘だから、姫と呼ばれるのは当たり前か。


「貴様、何奴なにやつ、姫様からはなれろ!」

「ん、これ以上は面倒ごとになるな。これで失礼するよ……?」


 青年がそう言うので離れることにした。

 だが、俺の袖を彼女がしっかと掴んで離さない。


「あたしを置いていく気?」

「いや、また会えるでしょ」

「……会いに来てくれるんだ」

「いや、そういう意味で言ったわけじゃ……」


 彼女がうすく笑うが、俺は否定しようとする。

 ()()()()()なら良いが、男女の関係として会うのは考えていない。


「この下郎げろうめ、姫様から手を離せ!」

「見て分からんか、俺は何もしてない」


 目の座った彼女にげんなりしながら答え、言いがかりをつける青年に俺は両手をぶらぶらさせて見せる。

 大声で怒鳴どなる青年に、道行く人が何だ何だと足を止め、野次馬やじうまとなる。


「問答無用、剣のさびにしてくれる!」

「モミ、さすがに不味い、ちょっと離れてて」

「あ、うん」

「貴様、姫様の名を軽々しく呼ぶな!」


 青年の気持ちは分からないでもない。ぽっと出の田舎の薄汚れた子供が綺麗きれいな服を着た姫という立ち位置の少女と並んで話していれば無礼にあたるだろう。

 だからと言って、すぐに怒鳴り散らして剣を抜くのはどうかと思う。

 青年は剣を振り上げながら無造作に歩み寄ると、無言で剣を加減せず振り下ろした。

 野次馬から悲鳴が上がる。

 俺は振り下ろされた剣を最小限の動きでかわしながら、青年のふところもぐり込み、彼が剣を持つ手をつかむと、手を引っ張りながら彼の態勢を崩して投げた。

 青年は縦に一回転すると背中から地面に叩きつけられた。


「がはっ?」


 うめき声を上げる彼をうつ伏せにしてから、安全のために剣を取り上げる。ちらりと青年と一緒にいた兵を見るが、助けに入る様子はなく、観察している節がある。

 目を剣に戻して状態を見る。

 ……うん、手入れが行き届いていない。所々刃毀はこぼれしているし、剣が少し曲がっている。これはどこかで人を斬ってきたな。それも何人も。

 思い当たるのは、都の北で起きた反乱勢力の鎮圧に当たっていた王の軍だが、そこにいたのだろうか。

 それにしては、服が妙に小綺麗こぎれいで血がついていない。着替えたのか。……いや、鎧に血の跡がわずかに残ってるな。手入れをおこたったのだろう。


「お前は都の北にいた反乱勢を鎮圧していた者か?」

「ぐぐ、……貴様、何故、それを?」


 彼は叩きつけられた衝撃で呼吸を乱しながら、俺の質問に答えた。


「やっぱりな。()()をかけただけだよ」

「な!? くそっ」


 彼はどうにかして立ち上がろうと藻掻もがくが、俺が腕と体を固定しているため、起き上がれない。


「慌てるな、僕も王の命令で兵役にいている。お前と同業だよ」

「だからと言って姫様に近付くな!」


 乱れていた呼吸が戻ってきたようだ。彼の話し方が流暢りゅうちょうになる。


「訂正しろ、近付いてきたのは、その姫様からだ」

「……は?」


 藻掻いていた彼の動きが止まり、モミを見上げた。


「本当よ。ついでに言うと……」


 彼女が何を言おうとしているのか確信した。

 ちょ、こんな大勢の人前で言うつもりか。


「おい、せ、めろ」

「この子、カゼの許嫁いいなずけになったわ」


 彼女が言い放った瞬間、時が止まった。そんな表現が合うくらいに俺も兵も野次馬まで沈黙している。あ、いや、していない者もいるな。

 幼児が母親に向かって許嫁とは何かと訊いている。


「は、え?」

「そういうことで、よろしく」


 呆然と彼女の顔と俺を交互に見る彼に、彼女は容赦ようしゃなく言ってのけた。


「ひ、姫様、何故です、許嫁!? この私ともろう者がいるのに!」


 何だ、付き合ってる人いたんじゃないか? 丁度ちょうど良い、こいつとくっつけてしまおう。


「あー、姫様、この人と恋仲こいなかなんですか?」

「モミって呼んで。それとこいつとはそんな仲じゃない。幼馴染おさななじみではあるけど」


 駄目か。

 彼女の返答は酷く冷たかった。力が完全に抜けた彼を拘束する理由が無くなったので、腕をほどくと彼はくたりとくずおれた。


「さ、カゼ、行くわよ」

「はあ、どこに?」

「市場をやかしに」

「いや、それは店の人に悪いから、買った方が」

「あたしの場合、皆が良い物をそろえてくれるから買う気が起きないの」

「……たち悪いな、おい」

「色々な品物を見るだけでも楽しいものよ? ……何してるの、ついて来なさい」

「はいはい」


 特にやる事も無いので彼女についていくことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ