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悪役令嬢はループ99回で塩対応だった王太子に溺愛される…えっ、なんで?  作者: イトカワジンカイ


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4/7

4.99回目のループの始まり

学園に入学して1週間。

授業を終えたシェリルは窓際の席で心の中でため息をついていた。

気にしないようにしてはいるが、遠巻きに視線を感じる。

どれも怪訝と戸惑いを含んだものである。


(まぁ、当然といえば当然よね)


前世の記憶を思い出す前のシェリルは、ゲームの設定そのままのまさしく悪役令嬢といった性格だ。


甘やかされて育った結果、非常に我儘で、貴族としての矜持が強い分、身分に対して厳しい考えを持つ女性だった。


だから自分より目下の人間に対してはぞんざいな態度を取っていた。


使用人は自分に傅くのが当たり前だと思っていたし、侯爵家以下の身分の者に対しても、見下すような発言も多かったのだ。


さらにはその地位を振りかざして、周囲に理不尽なことを強いることもしばしばだった。


つまり、性格が悪かったのだ。


(本当、人としてどうかと思うのよね)


いくらゲームの設定とはいえ、なんて酷い性格なのだろうと我が事ながら思ってしまう。


だが、前世の記憶を思い出したシェリルは、以前の記憶を引き継いでいるものの、性格は前世のものに変わっていた。


つまり、非常にマトモな性格になったのだ。


初めてタイムリープしてからこれまでは、ゲームのシェリルと同じ高慢な性格を演じていたが、正直性格が破綻した性悪女を演じるのは、ストレスだったし、良心の呵責に耐えられないことも多々あった。


だからシェリルは開き直ることにした。

もうゲーム云々は気にせず、今回は地でいこうと。


(一度くらい自由に生きてもいいわよね。どうせどう頑張ってもデッドエンドになっちゃうんだし、我慢して生きる1年間も自分らしく生きる1年間も同じなんだし。どうせなら楽しく生きたほうがいいわよね)


そう開き直ったシェリルは、変にゲームキャラを演じずに素のままで過ごすことにした。


だが、入学式前まではゲームの設定どおり性悪な性格であったのに、入学式を境に性格がガラリと変わることとなったわけで。


あまりの激変ぶりに家族からは「熱があるんじゃないか? 病気か?」と心配され、シェリルの性格を知っている者は驚くと共に、「頭を打ったのではないか?」「毒でも飲まされたのか?」とひそひそと影で言われているのを知っている。


そんなこんなで、現在シェリルは遠巻きに見られ、クラスメイトからは距離を置かれてしまっている。


(まぁ、そのうち慣れてくれるだろうしね)


不意に顔を上げて視線の先を見ると、こちらを見ているクラスメイトと目が合う。

すると見てはいけないものを見てしまったとばかりに、バッと勢いよく目を逸らされてしまい、その様子に思わず苦笑してしまった。


(さて、早く帰って今日のゲームの進捗状況を確認しなくちゃ)


メニュー画面は他人には見えないらしい。


だが、空中を食い入るように見ていたり、指を動かしている姿は、客観的に見ると変人以外の何者でもない。


よって、メニュー画面の確認は、もっぱら一人になれる自室で行っている。


現在シェリルはイベントの発生を避けるため、攻略キャラとは極力会わないように努力している。

そのため、今のところイベントは発生していない…………多分。


だから好感度の変化はないはずだが、やはり心配であるため早く帰って好感度とストーリーの進捗状況を確認したい。


以前確認した時、エンディングリストが1つだけ解放されていなかった。


あの時には大団円エンドを迎えればいいと思っていたのだが、「ノーマルエンド」という可能性もあることに気づいたのだ。


(ノーマルエンドならそもそも攻略キャラと出会わないのが一番いいけど……まぁ、学園内だと会わないわけにはいかないだろうしね)


特に婚約者であるベルスアークとは月に一度はお茶をしなくてはならないので、顔を合わせるのは避けられない。


だが、逆に言えば他の攻略キャラと関わらなければ、ベルスアークとの好感度だけに注意すればいいのだ。


未解放のエンディングがノーマルエンドであるかは確定ではないが、少しでもリスクを減らすため、シェリルは出会いイベントが発生する場所には近づかないようにしており、努力の甲斐あって、今のところ好感度は全員0のままである。


(今日も攻略対象に会いませんように!)


そう願いながらシェリルは鞄に教科書をしまって帰る準備を始めた。


そしてちらりと入口付近に座る若草色の髪の男子生徒を盗み見た。


若草色の髪はさらさらで、少し長めの前髪から覗く目は垂れ目がちではあるが形の良いもので、琥珀色の瞳であった。


制服の襟元は開けており、ネクタイを緩く締めて着崩している。


明らかに優等生という雰囲気ではない。

貴族としては珍しく気怠げな雰囲気を持っている美少年だ。


彼の名前はエンザ・グレイモンド。

「レーブ・サン・ファン」の攻略対象の一人だ。


(よりによって攻略対象のエンザと同じクラスになるなんて……)


クラスメイトである以上、何らかの関わりがあるのではないかと身構えたが、エンザは授業をさぼることが多く、教室にいることが少ない。


一匹狼と言うか、一人でいることが多く、クラスメイトともほとんど話さない。

もちろんシェリルとも話すことはなかった。


おかげでエンザとのイベントは発生していない。


(ほぼ接点がないし、もしかしてエンザのおかげでゲームが開始されないのでは?)


そう思えるほど、関わりがないのだ。

これからも関わりがないことを祈りたい。


エンザは学生カバンを肩に担ぐと、気だるそうに教室を出て行った。


それを見送って、エンザが教室を出たのを確認してから、シェリルは席を立って教室を後にした。


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