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辺境薬師の街づくり  作者: 灯野 しおん
第3章  薬草園と新しい住民たち

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第三十七話

「神樹?」


ナギが森の奥を見る。


もちろん何も見えない。


いつもの森だ。


木々が揺れ、

鳥が鳴いている。


「見えたの?」


リリが聞く。


シオンは少し考える。


「見えた」


「どんな感じ?」


「大きい」


「それは分かる」


ナギが即答した。


シオンは説明が苦手だった。


だが確信はあった。


あれは幻じゃない。


何かがいる。


その日の午後。


薬草園の整備は順調に進んでいた。


新しい貯水槽。


乾燥小屋。


種子保管庫。


ドワーフの職人たちが大活躍している。


中でも一人。


赤髭のドワーフが目立っていた。


大声で笑い。


大声で働き。


大声で食べる。


名前は――


ガロン


「よし!」


「この水路なら百年持つぞ!」


ナギが苦笑する。


「百年もつ水路って何」


ガロンは胸を張った。


「職人魂だ!」


シオンは頷く。


「採用」


「おう!」


本人は最初から住む気だった。


その頃。


レインは石碑を調べていた。


薬屋の裏庭。


古代文字を紙へ写している。


すると。


ある部分で手が止まった。


「……あれ」


裏面。


地図の端。


小さな文字。


今まで見落としていた。


レインは目を細める。


そして。


急いで薬草園へ向かった。


夕方。


作業を終えたシオンたちの元へ、

レインが走ってくる。


珍しい。


まだ体力は万全ではないはずだ。


「シオン!」


息を切らしている。


「どうした」


レインは紙を差し出した。


「石碑の続きが読めた」


オルディスも覗き込む。


そして。


表情が変わった。


そこにはこう書かれていた。


神樹の庭を守る者


森の案内人を探せ


白き耳と黄金の瞳を持つ者


静寂。


リリが首を傾げる。


「案内人?」


ナギも腕を組む。


「人探し?」


その時だった。


遠くから。


「きゃああああ!!」


子どもの悲鳴。


全員が振り向く。


薬草園の奥だ。


ジークが真っ先に駆け出す。


「何だ!?」


シオンたちも続く。


そして。


薬草園の柵の向こうで。


子どもたちが固まっていた。


指差している。


森の入口。


そこにいたのは――


一人の少女だった。


年齢は十歳くらい。


銀白色の髪。


大きな獣耳。


そして。


黄金色の瞳。


少女は木陰から顔を出し、

じっとこちらを見ている。


野生動物みたいな警戒心。


だが。


その瞳は賢そうだった。


リリが息を呑む。


「……白い耳」


レインも石碑を見る。


そして少女を見る。


全員の視線が集まる中。


少女は小さく呟いた。


「……見つけた」


その言葉を最後に。


くるりと森へ向かって走り出した。


ナギが叫ぶ。


「待って!?」


だが少女は速い。


驚くほど速い。


森の奥へ消えていく。


シオンは即座に言った。


「追う」


ナギは頭を抱えた。


「絶対そう言うと思った!」


しかし。


石碑。


神樹。


案内人。


全部が繋がり始めている。


そして森の奥では――


白い耳の少女が、

誰かに報告するように呟いていた。


「見つけたよ」


「薬師様」


彼女の前には。


人の何十倍もある巨大な根が、

大地から姿を現していた。

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