ep.8 食レポ 神戸元町中華街
週末、三人で神戸へ行く約束の日、立川公佳から体調が悪いからキャンセルするとのメッセージが入っていた。
「立川さん調子が悪いんや、そうなると今日はキャンセルやな」
(念のため、片桐さんにも連絡しておこうか)
『立川さんの具合が悪いみたいなので、今日は中止だね』
しばらくすると返事が来た?
『え、なんで?』
(え、二人でも行くつもりか?)
『立川さん抜きで行くん?』
『しょうがないやん、調子悪いんやから』
高木は現地に向かうため阪急電車に乗り、考えた。
(これって片桐さんとデートみたいにならへんか・・・)
(いや、考え過ぎた・・・)
(片桐さんのことだ、ただ単に食い意地が張っているだけだ)
高木は片桐と待ち合わせ場所の神戸三宮駅の改札口へと向かった。
(時間二十分前に着いてしまった。変に気合入ってるとか思われるといやだな。
いや、そもそも片桐さんがそんな早くに来るわけもないか・・・)
「あれ?高木くん早いね、待った?」
「か、片桐さん、いや、同じ電車やったんちゃう?」
「そうなん、ほな、中華街のほうまでブラブラと行こか」
二人は歩き出した。
片桐あずさは、学校のアイドルを自称しているが、それが嘘とは言えないくらいの容姿であるのは確かだ。
その女子と二人で並んで歩いてる。
(これ学校のやつに見られたらどう思われるんやろう・・・)
「高木くん、なんかキョロキョロしてどうしたん?そんなに神戸の街が珍しい?
まるでお上りさんやね」
「そんな訳ないやろ」
「おや~、じゃあ、私と二人でいることに緊張してる?」
「そんな訳もないやろ」
「あはは、そっか~
そういやこの通りの老舗のバームクーヘンのセットが最高なんよね~」
「へえ~そうなん、食べることには本当に詳しいな」
二人は商店街を抜け、中華街の門をくぐる。
「中華街だ!映える写真を頼むよ、高木くん」
そう言うと片桐はスマホを高木に手渡した。
「宝塚に住んでるんやから中華街なんて、そんな珍しくないでしょうに」
「豚まんなんて珍しくないのに、食べるときは最高に味わわへんともったいないやん、それと同じ」
言いつつ笑顔でダブルピースする片桐の写真を撮った。
中華街の中心に位置する十字路の近くにある老舗の豚まん屋には、今日も行列が出来ていた。
「結構、並んでるな」
「ここまで来たんやから並ばんとしゃーないやん」
二人は並ぶこと数十分目当ての豚まんを購入し、早速食べる。
「う~ん、この肉汁の脂っこさが最高!」
「うん、美味しい、それにしても片桐さんは本当に美味しそうに食べるなあ」
「美味しいものへの感謝と同時に私自身の溢れる素直さが織りなすハーモニー」
片桐が両手を広げて大げさなポーズをとる。
「そ、そうなんや・・・」
「公佳も来れたらよかったのに~」
「ほんまやな」
「それにしても中華街はいつ来ても楽しいな~って、あれ!」
「片桐さん、どうしたん?」
「あれって、村中やん」
片桐が指さした先には村中が男子と連れ添って歩いていた。
高木は、村中ともその男子とも面識はなかったのだが、片桐がその方向に歩いていくので、それに付き従った。
「村中っ!」
「へっ・・・」
村中と呼ばれた女子の片桐を見る目には明らかに動揺が走っていた。
「片桐・・・」
片桐はにやつきながら言う。
「村中がデートなんて珍しいやん、いつの間に彼氏作ってたん?」
(このカップルになるかどうかのデリケートな時に、よりによって片桐か~)
村中は動揺を隠すように答える。
「か、彼氏というか、こちらは同じクラスの坂下君、一緒に中華街にカラアゲ食べに来てん」
(あかん、言い訳が、片桐に引っ張られてる~)
「村中さんの知り合いの方ですか、坂下です、よろしく」
(坂下君、律儀に挨拶してるし・・・
そう言えば、片桐も男子連れ・・・)
「そういう片桐はデート中なん?」
「こっちのは、同じ部活で同級生の高木くん。
部活の食レポ活動の一環として豚まんを食べに来てん」
「そ、そうなんや・・・」
片桐が村中の耳元で囁く。
「このこと、野田や山根は知ってるん?」
村中はギクリとしつつ、片桐の耳元で囁く。
「今は微妙なときやから穏便に頼むで片桐・・・」
「うんうん、分かった、お幸せに」
片桐は温かく微笑んだ。




