ep.7 文化研究部
放課後、宝塚ゆずり葉高等学校、文化研究部の部室には、四人の男女が集っていた。
二年で部長の今村亜由美が、黒縁眼鏡をあげつつ言った。
「みんな入部して約一か月になるから、そろそろ発表文のテーマは、決まったかね」
「関西の文化といえば、やっぱり食だと思うんで、今、ラーメン食べ歩きレポートを作成中です。もこす、宮子、二国、たろうなどなど・・・」
そう応じたのは、茶色い地毛が背まで伸びた容姿の整った、スタイルのいい女子だった。
明るくて美人で学校のアイドル的存在と自称する一年三組の片桐あずさだ。
実際に人気は高いようで中学時代から相当モテているというのは自他ともに認めるところらしい。
「私は、神隠しとかミステリースポットとか、怪奇とかそういったテーマにしようと思っています」
小声で応じたのは、赤毛かかったくせのあるショートカットの少女だった。
いつもどこかオドオドしているような感じがある、一年二組の立川公佳だ。
「俺は遊びをテーマに考えてみようと思っています」
そう応じたのは、一年三組の高木洋平、短髪で細身の男子だ。
「どれもみんなの個性が出ていていいテーマだと思う。それで進めてくれたまえ」
「高木君のは遊びか~、じゃあ、私の食レポと相性いいんじゃない。あっ!みんなであちこち遊びに行って、ご飯食べればいいんじゃない」
(まあ、確かに遊びなら、特に何もせずに何かしてそうな感じが出せるから選定したんやけど、片桐さんの提案は露骨やなあ・・・)
「私は出歩くのはあまり好きじゃない、行くなら三人で行ってくるといい」
「え~先輩付き合い悪い。
まっいいか、高木くん、公佳、今から甲東園行こう」
(今から?)
「甲東園に何しに?」
「何しにって宮子でラーメン食べて、その後、お茶しよう」
「なんか、食べ物に偏ってない」
「高木くん、細かい男は嫌われるよ、さっ行こ行こ」
親指を立てて片桐が笑顔であおった。
「私はラーメン大盛とチャーハンで!」
(片桐さん攻めてるな~)
甲東園にあるラーメン屋にて高木と立川は、並盛のラーメンを注文。
注文したラーメンは並盛でもそれなりに量があり、大盛はかなりの量だ。
チャーシューもかなり入っている。
(それにチャーハンも付いてるし)
「片桐さん、そんなにいける?」
「これくらい勢いで攻めれば余裕っしょ!」
片桐は、ラーメンにがっついた。
一年三組、高木と片桐は同じクラスだ。
入学式の日、はじめて片桐あずさを見かけたとき、ふと目があい彼女は微笑んだ。
こんな綺麗な女子が同じクラスかと少し緊張したが、その女子が目の前ですごい勢いでラーメンとチャーハンにがっついている。
(遠き日だな・・・)
「高木くんも公佳も早く食べないと冷めて美味しくなくなるで~」
「いや、片桐さんの食べっぷりがあまりに見事やから、場に飲まれて」
「高木くん、食べ物というのは、素材、料理人の腕だけが勝負じゃないんよ~
いつ、いかに食べるかも美味しく味わうコツなんやから、はよ食べ食べ」
「まあ、確かにそれはあるけど」
「いただきます」
高木と立川も片桐に続いた。
「じゃあ、このミルフィーユとコーヒーのセットで」
「片桐さん、まだ食べるん?」
「そりゃ、ご飯とデザートは別腹ほど世に浸透している常識はないやん」
「まあ、そうやけど・・・」
先ほどのラーメンに続き喫茶店でも食をとる片桐に二人は唖然としていた。
「あずさ、すごい食べるけど、あまり太らへんのなんで?」
片桐が両手を胸に当てて言う。
「公佳、よくぞ聞いてくれたわ。体質もあるんやけど、最近間食を八回から五回に減らすとか涙ぐましい努力をしてるねん、秘密があるもんやねんナイスバデイには」
(片桐さん、間食もそんなにしてるんか・・・)
「そう言えば、公佳は、テーマー怪奇やけど書く内容、結構難しいんとちゃう?」
「うん、難しいから、悩んでる」
「いっそのこと事故物件に泊まり込んで、映像でも撮ってみたら」
(片桐さん、また無茶なこと言って・・・)
「それは、いや」
「立川さんホラー映画のモデルになった人形とかを調べてみるのはどない?
それやったらネットで情報拾えるから書きやすいかも」
「そういうの便利」
・・・・・・
「中華街でめっちゃ並ぶけど、あの店の豚まん、めっちゃ美味しいやん」
「まあ、それには異論はないけど」
(呪いの人形から、饅頭の由来、中華街の豚まんまでよく話を繋いだな)
「と言うわけで、週末、みんなで神戸へとくり出そうやないの!」
(また、強引な展開になって来たぞ)




