ep.17 偶然の遭遇
週末、片桐あずさは、立川公佳を強引にカラオケに誘って、女二人でヤケ歌いをした後、宝塚駅の百貨店を見てまわった。
(公佳は少しすっきりしたやろうか?)
「公佳、宝塚牛乳の店でカフェオレ買うから寄っていこう」
「うん、ええよ、私も買う」
二人はカフェオレを飲みながら、花のみちを歩いていた。
「やっぱここのはコクが違うと思わへん」
「うん、コクが違う」
宝塚歌劇団の劇場が見えてくる。
「私が小さい頃から歌とダンスの練習してたらタカラジェンヌの道もあったかなと思うんやけど、どう思う?」
片桐が両手を開きながらくるりと回転した。
「うん、あずさなら行けたかも、でも練習してなかったから残念やね」
「う~ん、痛いとこをつく・・・」
片桐はちゅーちゅーとカフェオレを口に含んで舌の上で転がした。
反対方向から目の前を、腕を組んだカップルがすれ違おうとしたとき、
ぶ~っ!
思わず片桐は口の中のカフェオレを噴出した。
「え!」
片桐は愕然とした。
隣の公佳も驚いた顔をしている。
カップルの男子は、高木だったのだ。
腕を組む女子を見やると、小柄で華奢、色白で腰まである長い黒髪が印象的な美少女だった。
「高木くん・・・」
「片桐さん、立川さん・・・」
・・・・・・
・・・・・・
「そちらの方は?」
「こいつは・・・」
高木が説明しようとした時に少女が、微笑みながら一礼して言った。
「はじめまして片桐さんと立川さん、お話は以前より伺っています。
兄がいつもお世話になっております。
私は、妹の高木玲奈と申します」
「はじめまして・・・」
片桐と公佳は探るような眼で会釈した。
片桐が興奮気味に訊く。
「かわいい、こんなかわいい妹がいたん高木くん!
え、何年生?どこの学校?」
「甲西中学の一年生です」
「高木くんの妹とは思えへんくらいしっかりして」
「どんなイメージなん、俺・・・」
「一緒に写真撮ってええ?」
「はい、ええですよ」
片桐と玲奈がピースしたところを高木がスマホで撮る。
「これからどこ行くん?」
「はい、宝塚の百貨店のお茶屋さんで和菓子のセットを兄と食べに行くところです」
「ああ、あそこの和菓子セット、意外にリーズナブルで美味しいよね~」
「さすが片桐さん、よく知ってはりますね」
「そうやで~、私、おいしい店いっぱい知ってるから、今度、一緒に食べにいこうな」
「ほんまですか、楽しみにしてます」
「そういう訳なんで、片桐さん、立川さん、俺らそろそろ行くわ」
玲奈は一礼すると高木の腕につかまり歩き出した。
片桐と立川は高木兄妹の後姿を見送った。
「いや~びっくりした。それにしても仲がええ兄と妹やな~
えらい距離近いし、カップルかと思ったわ」
「うん、そうやね」




