↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
ワールドカウント24
81/555

3.8.06


 旅は順調だ。


 革水筒は新品だったが、エールを入れる前に一度洗った。


 食中毒はもう、うんざりだ。

 アルクに洗い方を聞いて、炭を溶かした水で洗った。



 ボーテス村を出て2日目の夕方。


 遠く雲にかすんでいた山脈が、ハッキリと見える。

 予定では、これが最後の野営だ。


 クラゲは「ベリーかセージを探してくる」と言って、どこかへ行ってしまった。

 オレとアルクで、焚火の準備をする。


「スピカはどんな街だ」

「とても大きな街です。宿屋も、酒場もたくさんありますし、王都への駅馬車もありますよ」


「駅馬車? ウマがいるのか?」

「ええ。ご存じですか? ウマを?」

「ウマには乗らないのか」

「乗る? あんな危険な生物に? ご冗談でしょう」


 危険?

 オレの知ってるウマとは違うのか。


 いや、それよりも。


「その大きな街で、シチリという女性を探したい。何かいい方法はあるか?」

「はて、どのような女性でしょうか?」


 思えば、40年前にカタセ村から嫁いだ女性……とだけしか知らない。

 どうやって探せばいいんだ。


「名前と年齢だけでも、探せるか?」


「役場へ行けば、手掛かりが得られるかもしれません。ただ……ソウジさん、エングル語は、話せますか?」


「エングル語?」


「ソウジさん、ドゥユゥェンダスタェン、マイワォード?」


 ……英語?

 英語は喋れないし、オレが知ってる英語とは違う気がするが、似ている。



「それは、英語か。エングル語?」

「えいご……は、存じませんが、カタセ村の地域とは、言葉が異なります」


「アルクは、両方、話せるのか」

「ええ。私は、母親がヴィルゴの生まれで、父親がアネコウジという街の出身です。ふたりから、エングル語と日本語を教わりました」


「すまん、オレにエングル語はムリそうだ。英語と同じなら、単語くらいならわかるかもしれないが」


「う~ん……お手伝いしたいのは、やまやまですが、私は荷物を王都に届けるのが先です。

 早くしないと、シユフが拷問を受けるかもしれません……この際ですから、ソウジさんもご一緒に、王都まで……」


 ガサガサと、草を踏み分ける音。

 警戒したが、クラゲだった。


「なんだ、どうした。ふたりして無表情で。あぁ……わりぃ、それは、いつもか」


 クラゲは、手に木の実と草を掴んでいる。

「まぁいいや、メシ作ろうぜ」


 まいったな……

 探すだけでも、面倒なのに、言葉も通じないのか。


「クラゲは、エングル語できるか?」


「ん? まぁ少しな。

 アロハの婆さんが、若いころはスピカに住んでたらしくてよ。

 ちなみに、マスターも得意だぞ。

 んで、子供の頃に教わった。

 じゃなきゃ、スピカくんだりまで嫁さん探しにこねぇよ」


 少しほっとした。

 クラゲを連れてきて、本当に良かった。





 翌日。


 夜明けの途中で野営地を出た。


 昼になる少し前。

 オレ達は、丘の上から、街を見下ろしていた。


 街道沿いに農家が点在し、道の先に街を取り囲む赤茶色の壁。

 壁の内側には、数百はあろうか、大小さまざまな家々が密集していた。


 風にのって、微かなパンの匂い。それと鐘の音が聞こえてくる。


「着きましたね。スピカの街です。

 まずは、今夜の宿を取りましょう。オススメの宿を知っていますよ。カタセ村の酒場ほどではありませんが、食事も美味しいです」


 信用すると決めたはずの、アルクの言葉に不安を覚える。


 ここもまた、オレの知る場所ではない。

 獣の棲む森の中と大して変わらない。


 眼下にあるのは「人」という魔物がひしめき合う、人工の森だ。


「どうしたんですか、行きますよ? ソウジさん」

「なんだ、ビビってんのかソウジ。行こうぜ」


「ああ。そうだな。着いたなスピカに」



 何があってもいいように。



 心の準備はしておこう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。