↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
カラフルな『あの世界』
583/588

6.6.34


 ここに来るのは、2週間ぶりくらいだ。

 評議会の敷地を見下ろす丘の上。


 以前訪れたときは、テント群と建築資材の山だったが、だいぶ様変わりしている。

 建築の音は変わらず飛び交っているが、テント群は全て撤去されていた。


「あの建物が、専任評議員の仮設事務所だ」


 以前、テントがあった場所の近くに、建物ができている。

 2階建てで横長。

 学校の校舎のような木造建築の建物だった。

 壁も屋根もあるし、窓枠にはガラスの窓もついている。


 木造ではあるが、1カ月で完成させたらしい。

 驚くより先に、あの建物、大丈夫なのだろうかと思ってしまう。



 アルベールが、建物を背にして振り返った。

「部屋の前についたら、タデクはドアの前で待機していろ。おまえが剣を抜くのは、相手が剣を抜いたあとにしてくれよ」

「へいへい」


 わたしがアルベールに尋ねた。

「いつも不思議なんだけど、なんでそんなに警戒するの?」

「いままでは運がよかっただけだ。今後は、さらに危険な時期に入る。評議員の派閥争いが苛烈になり、ギルド間の抗争も起きるだろう」


「えっ、ちょっとまって、ギルド同士でケンカするの?」

「信頼のエレメントの最初の争いは内戦だ」


「……そんなんで、いつエレメント・コアに辿り着けるの?」

「ウィルコープスと戦うのは、内戦が決着してからだ。早く辿り着きたいなら、君もウィルツに協力してやってくれ」

「協力って、なにすれば……?」

「ウィルツの派閥を、評議会で最大化することだが……まぁ君に関しては、普段通りでいい」


 なにそれ、不安まみれなんだけど……

 って、アルベールが背を向けて、スタスタと丘を下って行ってしまった。

 アルベールのあとを追う。


「今日はなにをしたらいいの?」


「選抜評議員の推薦には、書類を提出し議長と面談する必要がある。書類はすでに用意してある。あとは議長に会って会話をするだけだ」


「議長さんと面談? 議長って、どんなヒト?」

「私も数回、見かけただけだが……ひとことで言えば、奇妙な存在だ」

「なにそれ……宇宙人?」

「ッフフフ、宇宙人か。あながち間違いじゃないかもしれない」

「え、っと、冗談で言ったんだけど、人間のプレイヤーなんだよね?」

「見た目は人間だ。そういえば雰囲気だけなら、さっきのヒョロっとした日本人と似てるかもしれない」

「うん? 世川君?」

「姿も形も別人だがな」


 世川君に似てるってことは、もしかして量産型。


「話しは終わりだ。どこで聞かれているかわからん。ここから先は無駄口禁止だ。言葉に気をつけろ。とくにタデク」


 建物の真ん中にある玄関へと向かう。

 中に入ると、新築の木造家屋の匂いが充満していた。

 ヒトの気配もしないし、窓が少ないので薄暗くて、薄気味悪い。


 正面に階段。2階へ上がる階段と、地下へ潜る階段が伸びている。

 右と左は廊下。壁の等間隔に扉が取り付けられている。


 アルベールが階段へと近づいた。

「先に、ウィルツの執務室へ行く。2階だ」

「ここ、地下もあるんだ?」

 ルシアが、左側から地下に下る階段を眺めていた。

「レストランの厨房にも、ワインセラーを作っているだろう。珍しいことじゃない」

 地下へ続く階段の先は真っ暗。ダンジョンでも作ってるのだろうか。


 階段を昇り切り、右の廊下へ。

 窓の数もサイズも1階と同じなので、この廊下も暗い。


 廊下の途中の扉の前で、アルベールが立ち止まった。

「タデクはここで待ってろ」

「ウィッ、ムッシュッ」


 アルベールがノックする。

 中から「どうぞ」と女性の声。

 アルベールが扉を開けて、最初に部屋の中へ入った。


 廊下とは違い、部屋の中は明るかった。

 ウィルツは正面の事務机に座っている。


 わたしたちに視線を送りながら、左手スッとを上げてすぐに下げる。

 ウィルツも右手にペンを持ち、書類仕事の真っ最中のようだ。


 その背後には、大きな窓があり、青空と雲が見える。

 窓は南東向で、午前中の陽当たりはすこぶる良さそうだ。

 あの事務机に半日座っていたら、うなじだけ日焼けするかもだ。


 部屋の中央には、向かい合う二人掛けのソファーとローテーブル。

 その下のカーペットの色は緑色。


 右手前にも事務机があり、両脇に書類を積んだ女性が座ってこちらを見ていた。


 書類に視線を落としたまま、ウィルツが言った。

「まぁ座れ」

 普通にどっかの、役員室のような部屋だ。


 アルベールが、わたしに視線を向けて座れと指図する。

 なすがまま、その目線の先のソファーに腰を下ろした。

 ルシアが、わたしの正面に座り、アルベールは右向かいに座る。

 あれ、全員座るんだ?


 背もたれの背後には本棚。

 本は1冊も飾られていないけど、ウィスキーらしきボトルと、いくつかのタンブラーが無造作に置かれていた。


 ウィルツが事務机から立ち上がる。


 誰もが、このおじさんは悪の親玉だから油断するなと警告する。

 でも、わたしにはあいかわらず、教頭先生にしか見えなかった。

 今日も、鼻の下に紳士髭がくっついている。


 教頭先生がスタスタと歩いて、事務机を周ってくる。

 そして、どさっと。



 わたしのとなりに座った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。