↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
カラフルな『あの世界』
570/586

6.6.21


 夜が更けた。


 グックとジンゲのくだらない会話を聞いていた。

 ほんのひととき、目蓋を降ろしただけなのに、わたしは寝てしまった。



 騒音で目が覚めると、グックとジンゲが、焚火の反対側で特大のイビキをかいていた。


 焚火の勢いは変わっていない。

 全員寝込んでいたのも、長い時間ではなかったと思う。

 って言うか、わたしは、イビキがうるさくて起こされただけだ。

 ものすごく眠い。


 なのに、ちょっとまってよ。

 見張りはどうするの。

 灯巫女が出たせい?

 安全だと信じ切っているの?


 それならそれでいいんだけど、わたしは悩んだ。

 また眠ってもいいものかどうか。


 ものすごく眠いのだから、ちょっと横になるだけで、数秒で眠りに落ちる自信がある。

 座ったままでも熟睡できると思う。


 グックとジンゲは、気持ちよさそうにイビキを繰り返している。

 ふたりの寝顔を見ているだけで、ますます眠くなる。

 このまま、水辺のある森の近くの原っぱで、眠りこけたらどうなるのか。

 このふたりは放っておいて、安全な拠点に帰って寝ようか。


 そんなことしたら、火の番もいなくなる。

 焚火の火は、絶対に絶やしてはいけないと、おにいちゃんに何度も言われた。

 こんな場所で、真夜中で、火の番がわたしだけ。


 とりあえず、薪木をくべた。

 少し分散して、少しでも長く燃えるように。


 夜空を見上げながら、どうしたらいいかと考えた。


 おにいちゃんだったら。

 文句言いながら、朝まで起きてるかも。


 タデクだったら、どうするか。

 寝ちゃうね。

 寝てるふたりを、叩き起こしてから寝るね。


 アルベールだったら。

 こんな事態には、ならないね。


 まゆさんだったら……

 魔法……


 リュウタを呼んで、朝まで見張ってもらう……

 ダメだ。そんなに長い時間、リュウタを出し続けるのはムリだ。


 警報魔法も、わたしは使ったことがない。

 その手の魔法を発動していたのは、いつも、まゆさんだった。


 わたしがやったことといえば、温泉魔法くらいだ。

 みんなが、ぐっすり眠れて、朝になったら起きる魔法。

 ダメだ。これじゃ完全に寝てしまう。

 朝までダレも起きない。




 川辺に、青い光がふわふわと浮いていた。

 光りの粒は、ソレひとつだけだった。


 わたしはしばらく、それを眺めていた。

 消えもせず、近づくこともない。

 ただ、ふわふわ、ユラユラと、川辺で揺れているだけ。


 あれも、灯巫女かなぁ。

 安全なのかな。


 揺れ動く光を眺めていると、それはもう、催眠術の振り子ようで。

 眺めていると、意識が……霞んでいく。



 ……




「おい、ヒメ様」


 ダレかがわたしの肩を叩いている。


「う……ん」

「ヒメ様、おきろ。朝だ」


「え……」


 目を開けると、日の出の色はなく、完全に朝。

 辺りには、ヒラヒラと、蝶々が舞っている。


 寝ていた。完全に。


「あれ……寝てた?」

「おう。寝てたな。目ぇ覚めたか?」

「うん……おはよう」


「夕べは済まなかったなぁ。俺もジンゲも寝ちまったよ」

「うん、大丈夫だった?」

「おう。嬢ちゃんが起きて、火の番をしててくれたおかげだ。助かったぜ」

「え? 寝てたよみきも」

「うん? 起きてたろ、俺と交代したところで、すぐに寝ちまったけどな」

「そうなの?」

「なんにも言わねぇで、パタッと寝ちまうから、怒らしちまったのかとヒヤヒヤしたぜ」


 寝落ちするタイミングで、グックが起きたのかな。


「じゃあ、見張りは大丈夫だったの?」

「おう。問題なしだ。死なずに朝を迎えたよ」


「そっか。よかった」

「そんじゃ、出発するか」

「うん」


 ジンゲは、荷車に牛を繋いでいた。

 そのあとふたりは、革水筒のキャップを開けて、エールを煽る。

 わたしも呑むかと勧められたけど、昨日残しておいたパンケーキを食べる。


 そういえばわたし、マントは羽織っているけど、それ以外の旅の装備を、なんにも身に着けてなかった。


 ふたりにちょっと待っててと告げて、噴水広場へ行き、顔だけ洗った。

 念のため、広場を見渡したけど、世川君の姿はない。

 こんなところで、1日中座って待っているのは嫌だ。



 メモリアに戻り、旅を再開。

 わたしは、グック、ジンゲと共に、ウガーラ族のアジトへと向かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。