6.6.12 - 栽培指導
ログインしてから、2日目。
わたしは、することがない。
ヘタにうろちょろすると、邪魔になるだけだった。
メモリアのカタセ村へ行く。
お土産は、シートクッションのような、大きなライ麦パンと、ベリージャム。
酒場には寄らず、レクサムコンフィの農場へ直行。
辿り着いたのは、お昼前。
レクサムとコンフィは、畑に出ていた。
奥さんふたりも、川で野菜を洗っている。
シチリちゃんと、ニシカタくんは、その近くで遊んでいた。
今日は、ヒメリュウ・ポテトの栽培指導をするために来た。
でも、いまは忙しいというので、午後まで待てと言われた。
しかたなく川辺にいって、奥さんふたりと、子供ふたりと、切り分けたパンを、5人で食べる。
ミシェルが焼いたパンは、煮込まなくても最初から柔らかい。
ハンナがくれたジャムは、甘酸っぱくて美味しい。
それと、とれたてのトマトをもらって、シャクシャクと食べた。
美味しいから、みんな笑顔だ。
もう、なんてすばらしいお昼なんだ。
全身から湧き出してくるような幸福感。
まゆさんの言いたかったことが、わたしにもわかった気がする。
そして、午後。
兄弟といっしょに、ヒメリュウ・ポテトの栽培地へ。
川の近くで、林と林の中間にある畑。
「んで、なにするんだヒメ様」
「いちど全部、ひっこくぬくから」
「え? 6株しか植えてねぇのにか?」
「とりあえず、コレ、引っこ抜いてみて」
「お、おう。大丈夫かよ。ダメになっちまわねぇか?」
革手袋をした兄弟が、ヒメリュウポテトを抜くと、ゴルフボール大の塊根が、4つできていた。
「うわー、すごい。大量だね」
「まだ、こんなにちいせぇのにか? もう喰っちまうのか?」
「ちがうよぉ。こんどはそれを植えるんだよ。ぜんぶ」
「なぁるほどぉ。6株だったのが、これで10株に増えるな」
「そういうこと」
「あと5株も、抜いちゃおう」
「よし、わかった」
増えた塊根は、新たに20個。
それをぜんぶ、畑に植えなおす。
これで2週間後には、70株くらいに増える。
最初の6株の十倍以上!
「当面は、食べるの我慢して、増やすことに集中してもいい?」
「かわまねぇが。どのくらいまで増やすんだ?」
「目標は、2カ月半で500個かな」
「そんなに増えるのかよ」
「本気だせば、あと1カ月で500個いけそうだけど、次はちょっと食べてみたい」
「味見か」
「そ。味見」
「しかし……そうなると畑の面積が足りねぇなぁ。川に丸太でも渡して、対岸も畑にしちまうか」
「勝手に土地増やしていいの?」
「かまわねぇだろ。南東の畑はうちがいちばん端っこだ。ダレの土地ってわけでもねぇ」
「500個収穫して、200個が種イモ。みきが150個買うから、残りの150個は村に卸すでいい?」
「おう。いいぞ。じゃあ最初の目標はそれでいこう。とにかく俺も卸してみねぇと、なんとも言えねぇよ」
「そうだね。この村初の作物だもんね」
「ああそうだ。初だ。楽しみだなぁヒメ様」
「うん」
次に来るのは、また2週間後。
ちゃんと育ってくれるかなぁ。
それから数日後。
適当にログアウトした。
日々の生活が平坦になると、何日経ったのかもどうでもよくなる。




