6.6.06
まゆさんに、メッセージを送る。
『22だった!』
もうすぐ17時。ボストンは夜中の3時。
『マジで? すごい。わたしすごい!』
『なんで? どうして?』
『Stets は、常に。 Chromoは、染色体。つまり StetsChromo 常染色体』
『うん?』
『常染色体は、23本だけど、対になるのは22本』
『ぜんぜんわかんない』
『 22StetsChromoY は、末尾に男性の染色体をつけた、23本の常染色体を表す意味になるってこと』
『まったくわかんない!』
『ん。とにかく面白そうな人物なのはわかった。わたしも会ってみたい』
『じゃあ、みきだけじゃ怖いから、最初はまゆさんと3人で会おう』
『ん、わかった。楽しみが増えた』
『でも、帰国するの3日後って急すぎ』
『3日後? あ、そっか。いま3時前だから3日後だ』
『えーっと、時差かな』
『ん、飛行機乗るのは明後日』
『ごめんね。もう寝るよね』
『その予定だったけど暗号解読で興奮した。何者、そいつ?』
『まだわかんないよ。まともに会話してないし。メッセージ送ってみる』
『わかった。コミュ障少し改善したから、わたしもがんばって喋る』
『さすがアメリカだ!』
日本は、まだ17時前。
『こんにちわ? 世川君?』
とにかく、最初のメッセージを送った。
晩御飯の前に、スマホを置いて部屋を出た。
お母さんのお手伝いしに、階段を降りる。
ご飯を済ませて、お風呂に入って。
部屋に戻ると、20時を過ぎていた。
スマホが、テカテカと点滅している。
拾い上げると、『 22StetsChromoY 』さんからメッセージ。
たくさん届いていた。
『世川です。よくIDに辿り着きました。すごいです』
『遺伝子を学んでいるのですか? それともおつりで?』
ん……おつり?
『みき先輩は、デバイス保持者なのですか?』
『ぼくのデバイスは、父からもらいました』
『ぼくは、カウント21です』
『エレメントは、信頼を選びましたけど、ほとんどメモリアで過ごしています』
『みき先輩はどのカウントですか?』
受信時間は、ぜんぶ17時頃。
わたしが部屋を出て、すぐの時間だった。
とにかく、熱意はつたわった。
わたしも聞きたいことがたくさんある。
でも世川君、カウント21かぁ。
みきはいま22だ。まずはそれを伝えよう。
『みきはね、カウント22。信頼だよ』
すぐに返信がとどく。
『すごい。自分と父以外で初めてです。しかも同じ学校にいたなんて』
『そうだよね。持ってるヒトってすくないんだね』
『みき先輩も、ソロ参加ですか?』
『うーん、いまはソロかな? でも友達もいるよ。っていうかその前に』
『友達?』
『先輩って、つけないで! なんかヤダ』
『あ、すいません。えっと……みきさんでいいですか』
『うーん、まぁいいや。敬語もやめてくれていいんだけど』
『それは難しいです』
『ムリにとは言わないけど』
『みきさん、友達って?』
『あ、こんどね、世川君にも会わせてあげるよ。土曜日とか空いてる?』
『はい。22日ですか?』
『うん。あ、また22だね。あはは』
『あははは。カウントも、日付も、ぼくのIDも22ですね』
そのまま。
1時間くらいメッセージを交換した。
男の子とこんなふうに、会話するのは初めてだ。
世川君は、お父さんの帰りが遅いらしく、いつもひとりでご飯を食べているらしい。
お母さんはと、聞こうとしたけど。それはヤメた。
午前0時に、いっしょにログインしようと告げて、会話を終えた。
ログインしたところで、時間どころかカウントも違う。
それでもなんだか、去年と同じ日々のような気がして、ちょっと嬉しい。
そして、午前0時。
日付が、4月20日に変わったところで、わたしはログインした。
カウント22の、ニフィル・ロードへ。




