6.6.05 - 待ち合わせは参考書
次の電車に乗った。
たぶん、せがわ君も、別の車両に乗っている。
そのせがわ君から、お手紙を貰ってしまった。
文面を見る限り、放課後に待ち合わせ。
だれにも見つかりたくないので、手紙はカバンの底に押し込んだ。
ドアにもたれかかり、カバンからスマホを取り出す。
まゆさんからのメッセージを開く。
文面は、帰国の日程だった。
4月22日の土曜日。
ってそれ! もう3日後じゃん!
1カ月くらいこっちで過ごす予定らしい。
嬉しい。チョー嬉しい!
逢いたい。早くまゆさんに逢いたい。
こんなに逢いたいって思うヒト。この世界にどれだけいるだろう。
おにいちゃんは行方不明だから、実感が無い。
だから、もしかしたら、1番かも。
学校に辿り着いて、授業が始まる。
朝から、いろんなことがありすぎて、あんまり集中できなかった。
お弁当を食べて、午後が過ぎて、あっというまに放課後になっていた。
わたしは早足で図書室へ。
指定された通路は、自然科学……?
書架はえっと……自然情報科学……?
そんな棚、存在してたんだというくらいの違和感。
わたしには、縁もゆかりもなさそうな棚。
っていうか、ダレもいない。
こんな本、借りるヒトいるのかな。
せがわ君も、見当たらない。
そもそも、図書室には、ダレもいなかった。
とりあえず、本を探す。
本は、すぐにわかった。
その本だけ、少し背表紙が飛び出ていた。
『遺伝子の基礎原理』
貸出カードの名前はぜんぶ同じヒト。
世川之貴。
世川之貴。
世川之貴。
待ち合わせのページをめくる。
『対立遺伝子の仕組み』
他のページにくらべて、そこだけ色味が違う。
ここだけ、何度も読まれたような、年季の入った色味。
書いてある文章を何行か眺めてみたが、わたしにはさっぱりわからない。
そのぺージには、しおりのような紙が挟まっていた。
よく見ると、縦に折りたたんだコンビニのレシート。
駅前のコンビニだ。
日付は今日。買い物したのは朝の7時。
買ったのは、あんぱんふたつと、ヨーグルトとコーヒー牛乳。
478円。おつりは、22円。
たぶんそれは、どうでもいい。
裏返すと、手書きの文字。
アルファベットの羅列が、えんぴつで綴られていた。
” StetsChromoY ”
ステッツクロモイ?
なんだろう。ドイツ語?
常にクロモイ?
クリーミーじゃなくて?
その下に手書きのメッセージ。
『この紙は持ち帰って、用が済んだら捨ててください』
敬語だ。そういえばわたし、先輩だ。
レシートはカバンの中へ。
本は書棚に戻し、図書室を出た。
今日はまっすぐ、家に帰ろう。
家に帰り、お母さんにただいまを告げる。
お弁当箱を手渡して、ごちそうさまを言う。
それから2階にあがり、自分の部屋へ。
ランタポンタ(ぬいぐるみ)にも、ただいまを告げて、スマホに充電コードを差した。
ベッドに座り、とりあえず、SNSアカウントを検索。
……見つかりませんでした。
え、えーっと……?
もういちど、1文字1文字、確実にアルファベットを打ち込む。
見つかりません……
ぜんぶ小文字にしたりとか、いろいろやってみる。
見つかりません。
世川くーん!
これなに!
わかりませーん!
そのままベッドに、仰向けに寝転んだ。
天井を見上げて、いろいろ考えた。
ランタポンタを掴み上げて、顔を寄せる。
「ねぇ、みきって、そんなに怪しい? 怖い?」
ぬいぐるみに話しかけても、なにも答えない。
スマホを手に取り、まゆさんにメッセージを送る。
『なんかみき、男の子にフラれたかも』
時計を見ると、夕方の16時。
『誰かにコクったの? なにそれいろいろヒドイ』
すぐに返事が来た。
返信元のまゆさんはボストン。夜中の2時。
しかも、2~3日後に日本に発つ直前。
『ログインしてるっぽい男子を見つけた』
『えっ、ログインて、ニフィル・ロードに?』
『うん。間違いないとおもう』
『でもそれ、大丈夫? 危なくない?』
『同じ高校の1年生だよ』
『へー。カウントはいくつだって?』
『それがね……』
まゆさんに事情を説明した。
やたらと警戒していて、手紙の場所へ行ってみたら、参考書に挟まっていたのはアルファベットの羅列。
『みきさん、それさ。間違ってるんじゃなくて、欠けてるんじゃない?』
『え?』
『本に挟んだだけじゃ、他の誰かに拾われるかもしれないし、そもそも、みきさんが来ないかもしれないでしょ。そんなとこにSNSのIDみたいなものは、挟めないよ』
『ふーん?』
『前か後ろに、なんか足してみたら?』
『なにを?』
『遺伝子の本だっけ?』
『うん。指示されてたのは50ページで、対立遺伝子とか書かれてた』
『候補を上げるとしたら、X、XY、46、23。もしくは50』
『それ、なんの数字?』
『50は、対立遺伝子の伝達確率。46とかは染色体の本数』
『じゃあ、ちょっとやってみる』
『ん。まだ起きてるから、なんかあったら教えて』
X……ダメ。
XY……ダメ。
数字もぜんぶやってみたけど、なんにもヒットしない。
右も左も試したけど、全部ダメだった。
まゆさんにメッセージ
『違うって』
『次は、1か2』
やってみたが……
『だめだった。もういい。あきらめる』
『男子だっけ?』
『うん』
『22。たぶん左側』
22StetsChromoY
え、うそ……
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なんだかわかんないけど。
いろいろと安心した。




