6.5.13
テントから出た。
タデクが、肩透かしを食らったような顔で立っている。
「あれ、ルシアは?」
フリッツが辺りを見渡した。
「姿が見えませんね」
「ほっとこう。私達は、とっとと退散だ」
「それがよろしいですね」
「タデク」
「なんだよ、ちくしょう」
「機会はいくらでもある。いまは剣を研ぐだけにしておけ」
「……わかってるよ。軍団長閣下」
「そんなに悪そうなヒトじゃ、なかったと思うけど?」
「フッフフ。君がそう感じたなら、今日の会談は成功だ」
「ふーん」
「君のおかげで、すんなり200万ジェノを約束させた。よくやった」
200万でも2千万円。
このヒトたち、庶民の敵だ。
「あとは、フリッツ」
「ウィ、ムッシュ」
「5日後はおまえの戦場だ。やれるか?」
「問題ございません。ご予約の件。すべてこのフリッツにお任せください」
ルシアを探したが見当たらない。
アルベールはまだ用事があるというので、タデクとフリッツと3人で、先に帰る。
戻るとすぐに、対策会議。
5日後のディナー。
なぜか、わたしも招待されている。
「ミシェル。明日の昼までに、メニューを考えてください」
「ウィ、ムッシュ。肉料理でよろしいのですか? ジビエはどうなるのでしょう?」
「そうですね……タデク様」
「うん?」
「ウサギ以外で、なにか捕まえることはできますか?」
「見かけたのは、イノシシ、アカジカ、アナグマ。少し遠いがヤマシギも見たな」
「アカジカがよろしいですかね」
「支配人。ヤマシギを食べ……調理したいです。ヤマシギにしましょう」
「本気ですかミシェル? 調理器具はフライパンと鍋しかありませんよ?」
「問題ありません。ポワレか、ロティで調理し、サルミソースで食べましょう。ああ……おいしそうです……食べたいです」
「あなたが、食べるわけではないのですが……」
「おいおい……森にこもって、ヤマシギを捕まえてこいってか」
「明日か明後日中に捕獲していただきたい。4羽、可能なら5羽」
「一晩中かかりそうだな……」
「それと、タデク様」
「なんだ」
「念のため、アカジカも1頭捕まえてきてください」
「まぁったく……注文がおおいな。オレ達も食わせてもらえるんだよな?」
「もちろんです」
「……わかった。捕まえて来よう」
「ねぇ、フリッツ」
「ウィ、マドモワゼル」
「みきもなにかお手伝いできる?」
「お嬢様のお手を煩わすなど、とんでもございません」
「えー、なんか手伝いたいよう」
「そもそも、お嬢様は、ご予約されているお客様ではございませんか」
「えー……っ」
「申し訳ございませんが、マドモワゼル」
「はい」
「まだ打ち合わせておくことがございますので、いったん失礼させていただきます」
「はい……」
むーぅ。
また、邪魔者扱いされてる気がする……




