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『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
カラフルな『あの世界』
505/558

6.4.07


 ダストス、ジンゲ、グック。

 変な名前の3人に付き添われて、おやしろへ向かう。


 前を歩くダストスが言った。

「あれからもう23年かぁ」

「あっというまでしたねぇ」

「おれたちも、歳をとるわけだなぁ」


「ダストスたちも、パパとお友達だったの?」


「うーん、お友達っていうか……なんだろ?」

「なんでしょうねぇ」

「なんだったんだろうなぁ」


「パパは、どんなことをしたの?」

「あら、聞いてないの?」

「……うん」


 聞けるわけもない。


「アタシらの命の恩人。どんな逆境でも『ワタシに任せろ』が口癖でね」

「ふーん」


「だから、ついたアダ名が……」

「あっ……わたしびと?」

「そうよ。ウッフフ。カッコよかったなぁ」


 遠くを見つめるダストスに、ジンゲとグックが言った。


「おれたちの憧れ。生きる見本だ」

「おかしらは、ベタぼれでやした」


「ねぇ、ミキ」

「うん?」

「わたしびと様……お父さんはどうしたの?」

「うん……今回は、どうしても来られなくて。ごめんね」


「そっかぁ。でも、娘さんが来てくれたなんて、本当に嬉しいわ」

「老けたおかしらを見せずにすんで、よかったですね」

 ダストスは、立ち止まって数歩引き返し、ジンゲにケリを入れた。

 つま先ではなく、カカトでお腹を蹴った。

「ドゥ…ッ、ッフゥ…ゥ」

 ジンゲの呻くような、もだえるような声。

 そして言った。

「あざーっス!」


 ダストスのケリは、勢いも音も、本気に感じたが。

 ジンゲは、苦痛にゆがみながらも、嬉しそうな顔。


 ……怖い。


「クセだ。気にすんな嬢ちゃん」

「う、うん」


 ダストスが言った。

「次に会えるとしたら、また25年後かしら。生きていられるかしらねぇ」

 グックが言った。

「生きてたとしても……みんな、ヨボヨボの年寄りだな」

「でもガロムや、スバナは会えるわよね。わたしたちの想いだけでも、残しておかなきゃね」


 ごめんね……みきがきちゃって。

 わたしが、シュンとしてるのに気がついたのか。

 ダストスが慌てた。

「ああ、ごめん、ごめん。ミキが来てくれてほんとに嬉しいんだからね」

 ジンゲが言葉を加えた。

「そうですよお嬢さん。娘さんに恩返しさせてもらえるなんて、最高のほまれです」


「あら、いいこと言うじゃない、ジンゲ」

「あざっす。それじゃあ、ぶってくだせぇ」

「イヤよ、きもちわるい」


 グックが言った。

「ところでよぉ、おかしら」

「なによ」

「松明を持たねぇで夜歩くのって、やっぱ、マズいんじゃねぇか」

「なんでよ。荷物が減っていいじゃない」

「そりゃそうだけど、見てみろよ、あれ」


 グックが、遠くの森を指さした。

「うん? なに?」


 わたしも、ダストスも。ジンゲも。

 その指の先を眺めた。

 わたしには、なにも判別できなかったが、ダストスがいった。


「あら。オオカミじゃない。コッチ見てるわね」

「普通は、松明の火を恐れて寄ってこねぇはずだが……あ、ほら」

「1匹だけかしら。もしかしてあれが?」

「走り出しやしたね。こっちに駆けてきますぜ」


「もしかして、やる気ですかい、あの犬っころ」

「じゃれ合うつもりかもしれないわよ?」

「とにかく、探す手間が省けたなぁ」

「そうね。やっぱり松明持たなくて正解だったわね」


 え……と。

 オオカミが襲ってくるのかな。

 この3人、なんでこんなに平然としてるの。


「で、どうしやす、おかしら?」


「ジンゲと、グックは、あの木に登りなさい。アタシがここで向かえ撃つわ」

「大丈夫ですかい、ひとりで?」

「見た感じ、けっこうデケぇなあのオオカミ」


「あんたたちが、矢を外さなければ問題ないわよ。外さないわよね?」

「へぇ。はずしやせんよ」


 オオカミ、どこだろう。

 わたしには、まだ見えない。


「ミキは、木登りできる?」

「うーん……ムリ」




 わたしは、グックとジンゲの手を借りて、近くに1本だけ生えていた樫の木に登った。


「ほい、手ぇだしな」

 グックが、枝の上から腕を伸ばした。

 わたしはその手を掴む。


「失礼しますよ。お嬢さん」

 ジンゲが、わたしのお尻をささえて、押し上げる。


 手助けしてくれるのは嬉しいだけど。

 このふたり、臭ぇ……



 わたしは目を閉じた。

 そして、ジンゲとグックの獣臭を、樫の木の匂いに変更。


 ところが、ふたりはガサツだった。

 自分の匂いが変わったことに、まったく気がついていない。



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