↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
カラフルな『あの世界』
498/577

6.3.15 - ファースト・フォリオお断り


 フリッツから発せられた、夢物語。

 それを聞いたわたしは、ポカンとしたままだった。



 アルベールが最初に付け加えた。

「この計画は、ギルドを健全に実体化することだけではなく、資金調達という重要な目的も含まれている。信頼のエレメントは個人主義だ。よって、この世界での活動と生活に不可欠なものは自己資金。つまりカネだ」


 ルシアがアルベールに尋ねた。

「資金調達って、まるで成功が約束されているかのようね」

「無論だ。私がプロデユースし、フリッツが経営するんだぞ。失敗などするわけがない」


 ルシアはフリッツに視線を流した。

「どんなお料理を出すつもり?」

「二ツ星ですが、国際派のシェフを連れてくる方向で進めております」

「あら。すごいわね……って、どこまで本気なの?」

「この世界でのメイユ・ウヴリエ(最優秀職人章)を目指す所存です」


「それは……大きく出たわね」

「レストランの管理、運営に関しては、すべて私にお任せください」


「じゃあ、私やミキはなにもしなくていいの?」

「まかない料理……になってしまいますが、ご夕食は、シェフのまかないスペシャリテをご堪能ください」


 ルシアの目の色が、徐々に変わっていく。


「給仕は? タデクは知らないけど、私とミキは手伝わないわよ?」

「給仕長とホールスタッフに関しては、アルベール様が手配してくださります」


「向かいにレストランができたとして、私の敷地はどうなるのよ」

「川を挟んだテラス席、というのはいかがでしょうか」

「家畜小屋にはならないの?」

「ジビエ主体でございます。食用飼育は必要ありません」

 

「じゃあ……ワインは。ワインはどうなるの!」

「ベテランのソムリエを手配しております」


 ルシアの表情が、完全に崩れた。


「全部、フリッツがやってくれるのよね?」

「さようでございます」


「……ミキ」

「はい」

「やらせましょう。レストラン」


「うーん……みきたちが住むところは?」


 その質問には、それまで黙っていたディルが答えた。


「わたくしが、レストランの隣に越してまいりますわ」

「え、ディルが?」

「はい。そこをギルドメンバーの宿舎にいたしましょう」

「いまのテントは、セーフゾーンじゃなかったの?」

「ちがいますわよ。ただテントを広げていただけですわ」


 アルベール、ディル、そしてフリッツ。

 なんだか、すごいなこの3人。

 現実世界でも、ビジネスを成功させてしまいそうな、勢いと雰囲気。

 高校生の、わたしごとき……が出る幕はない。

 にもかかわらず、ルシアを含めた4人の視線が、なぜか、わたしに集中していた。


「えっと、みきは、なにをすればいいの?」


 アルベールが言った。

「ギルドマスターは、イエスかノーか。それを判断するだけだ。簡単だろ」


 え……

 それって……簡単……?


 ホテルの副支配人に、フレンチレストラン。

 国際派のシェフに?

 ベテランのソムリエ?


 わたし、まだ、高校2年生だし……

 フレンチのお店なんて1回しか行ったことないんだけど。


 いったい、なにを根拠にして……なにを判断しろと?

 というか。ノーと言える雰囲気ではない。


 考えよう。

 おにいちゃんだったら。

 まゆさんだったら。


 おにいちゃん。

 (もう勝手にしろ。気に入らないことがあったらオレはすぐに出ていく)


 まゆさん。

 (ん。それやろう。でも、わたしも経営に口出させて)


 わたしだったら……

 ああ、なんだ。簡単だった。

 思ったことを口にすればいいだけだた。


「わかった。みんなでフレンチレストランを始めよう!」



 ……はぁ。

 パパとママに会えるのはいつだろう。



 翌朝。

 アルベールに羊皮紙を1枚渡された。

 ギルドの申請書。


「1枚しかないから、書き間違うなよ」

「ディルに書いてもらうでいい?」

「それがいい。そうしろ」


 上から順に、項目を確認した。


 まずはギルド名。

 『Folio, No Merci』

 (フォリオ・ノーメルシ)


 名前は、昨日、夜遅くまでみんなで考えた。

 さんざん揉めたあげく、英語とフランス語を混ぜた、シェイクスピア風の名前に落ち着いた。

 ほんとは、すごく深い意味があるんだけど。

 音の良さげな、この名前に決定した。



 ギルドマスターはわたし。

 財務監査は、スイス人ホテリエのフリッツ。

 公文書記は、靴屋の娘ディル。

 代議員は、社交力抜群のルシア。

 活動監督者は、ポーランド騎士のタデク。

 それと影のギルマス、アルベール。

 最初のメンバーは、総勢6名。


 こうやって書き並べてみると、めちゃくちゃなメンバーだね。

 でも楽しい。


 スローガンはこれ。

 『死ぬときは同じ日、同じ時間、同じ場所』

 何日か前のルシアの言葉は、わたしのお気に入りになっていた。


 ギルドの目標は、エレメント・コアの攻略支援。



 そして、活動内容は。

 なぜか、フレンチレストラン。


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。