6.3.13 - ギルド!
アルベールの動きは早かった。
やるなら確実に、そして徹底的に。
それがアルベール(ウォルター)という人物の生き方らしい。
まず翌日。
アルベールはルシアのテントの近所に、自身のセーフゾーンを設置した。
場所は小川の対岸。
ルシアと、アルベールのセーフゾーンの間隔は、その隙間に別のゾーンが置けないギリギリの幅。
その幅で、小川と歩道、その両方が占有できるのだと自信満々で語った。
せこいような気がするが、アルベールっぽい発想だ。
さらに翌日。
「ギルドホームを建てるぞ」
「ええっ。じゃあ、みきと、タデクの家もこのとなり?」
「ふたりはまだ、設置しなくていい。遠方の拠点用に残しておけ。それもギルドメンバーの役割のひとつだ」
「じゃあ、みきたちは、アルベールの家に住むの?」
「そうだ。ギルドホームだからな。ルシアの家も建てるなら、そこでもいいが、ルシアの家の敷地は、畑か家畜小屋にすることも検討してくれ」
「ちょっと、ちょっと。私の家が家畜小屋って言ったわよねいま」
「それも、ギルドメンバーの役割だ。家と考えるのではなく、ギルドが使える土地の面積として考えろ」
「えーと……まったく腑に落ちないわ」
「それと、なるべく早くギルドの申請をしろ。ギルドマスターは誰だ?」
「ミキでいいんじゃない?」
「ええ、やだよぉ」
「じゃあ、ダレよ」
「アルベールがいいよ。いちばん詳しいから」
「私はダメだ」
「どうしてよ」
「ギルドマスターは、評議会に呼ばれたり、会合に出たりと、やることが多い。私には個別に仕事がある。そんなヒマは……いまはあるが、いずれなくなる」
「話す機会が多いなら、ルシアがいいんじゃないの」
「私もイヤよ」
「じゃあ、タデク?」
「なんで傭兵のオレが、ギルドマスターなんだよ。おかしいだろ?」
「こまったわね……ディルに頼むわけにもいかないし」
「君達、なにも知らないんだな……」
「うん?」
「申請に必要な5人というのは、最低5人であり、必要な人員だからだ」
「えっと、ごめん。つまり、どういうこと?」
「紙と筆はあるか?」
「ないわよ」
「……」
アルベールは枝を拾って、地面に文字を書いた。
半分くらい単語がわからなかったので、ルシアに説明してもらった。
書かれた文字は、以下の5つ。
ギルドマスター
財務監査
公文書記
代議員
活動監督者
書き終わって、枝を放り投げたアルベールが言った。
「明日までに、だれがなにをするか、決めておけ」
ルシアが英語で呟いた。
「マジで……?( seriously? )」
アルベールが英語で返した。
「マジだ。( serious )」
またドイツ語に戻す。
「みき、なんにもできなそう……」
「まって。消去法でいくと……活動監督者はタデクでいいわよね?」
「なら、代議員は、ルシアだな」
「書記はディルよね。なにを書くのか知らないけど」
「じゃあ、財務監査はアルベールでいい?」
「面倒だな……財務監査ができるやつを別で探してくるから、空欄にしておいてくれ」
「となると、ギルドマスターはやっぱり、ミキね」
「えーっ」
アルベールが言った。
「問題ない。ギルドマスターに必要なのは存在感だけだ」
ルシアがうなずく。
「それなら、カワイさと合わせて、ニフィル・ロードでトップレベルね」
タデクはもっと深く頷いた
「王様ってのは、だいたいマヌケだ。ミキでいいだろう」
「うーん……いちばん簡単ってこと?」
「そうだ。ギルドマスターの仕事がいちばん簡単だ」
ウソだ。
アルベールは、ウソを言っている。
でもまぁ。
わたしにできることなら、やらなきゃね。
みんな、わたしのためにやってくれているんだから。
「わかった。みきが、ギルドマスターやります!」
「えらーい! えらいわミキ。そしてカワイイー!」
ルシアのハグ。
今日、何回目だろ。
とにかくそんな感じで。
人任せの、信頼エレメントでの活動が始まるようだ。




