6.3.12
リュウタは、1分もしないうちに消えた。
風に飛ばされたように霧散し、ワンピースにススだけが残った。
煙だもんね。そうなるよね。
これ、洗っても落ちないかも……
顔を上げると、アルベールと目が合う。
「君の魔法か……なにかしたのか?」
「魂の色を見せてもらった」
「ほう。どんな色だった」
「間違いなく、ウォルターさん」
沈黙。
風が2回くらい、焚火の煙を煽りながら通り過ぎた。
「それを信じろとでも?」
「信じられるのは今も昔も、リュウタだけだよ」
「リュウタ?」
「いまのオオカミの名前。これで、安心してお話できる」
「そうか……なら教えてくれ。ウォルターはいつ、どこで君と出会ったんだ」
「それも、信じてくれないかもだけど」
「それは聞いてから判断しよう」
「ワールドカウント24」
「そうか……」
「驚いた?」
「まぁ、そうだな」
「信じられる?」
「そこまで私が生きているのか。そのほうが信じられない」
「ウォルターさんは、優秀なんでしょ。自分で言ってたよ?」
「ッフフ。ウォルターがそう言ったのだとしたら、ウソを言ったな」
「うん。ウソばっかり言ってた」
「それはすまなかった。代わりに謝罪しよう。ウソをつくのが彼の仕事だ」
「ふーん。ストレス溜め込みそうな仕事だね」
「もうひとつ聞きたい」
「うん?」
「ウォルターという名を知っている人物は限られる。誰に聞いた?」
「えーっと……アーネストだね」
「ああ……そうか。そういう繋がりか」
「うん?」
「だとしたら、ウォルターは、未来で君と仕事をするのか」
「うん。ずっとウソばっかりだったけど、最後の最後で助けてくれたんだよ。命がけでね。ウォルターさんがいなかったら、みきはここに来られなかったよ。だからね、ウォルターさんがどんなにウソつきでも、みきは、ウォルターを信頼できるよ」
「そうか。役に立てたのか。任務を果たしたんだな」
「信じる?」
「半信半疑だ」
「だよねー」
「ウォルターさんも、魔法が使えるんでしょ」
「いや。使えないが」
「え、ほんとに?」
「本当だ」
「おかしいなぁ」
「未来のウォルターは、魔法が使えるのか?」
「うん。変装の名人だった。みきには通用しなかったけど」
「それは便利そうだ」
「じゃあ、どんな魔法だったか教えるよ」
「ほう?」
「その代わり、ギルドの設立に協力してくれる?」
「フッ……フフフッ」
珍しい。
ウォルターさんが、顔をくしゃくしゃにして笑った。
「ミキ」
「うん?」
「私に、個人的な交渉を持ちかけて、イエスと言わせることができる人物なんて、数えるとしても片手の指が余るぞ」
「じゃあ、イエス?」
「ああ。イエスだ。君達に協力しよう。ギルドの設立だったか。簡単だ」
「ほかにも、いろいろやってほしいかも」
「私も、個別に仕事があるんだが……まぁいいだろう。しばらくは暇だ」
「ウォルターさんが協力してくれたら、すっごい心強いよ」
「そうか? 知ってると思うが、ウォルターはウソしか言わないぞ」
「大丈夫だよ。みきも、似たようなもんだから」
「そうか。そうかもな」
ウォルターが、またパイプを咥えた。
それから、思い出したように言った。
「ところで、ひとついいか。大事なことだ」
「うん?」
「ウォルターという男は知らん。忘れろ。私はドイツ人のアルベールだ」
「あははっ。そうだね。ごめんなさい。アルベール」
話しは終わった。
振り向けば遠くに、ルシアとタデク。それとディルがこちらを見守っている。
間違えて、ウォルターさんと呼ばないように気をつけなきゃね。
わたしは両手を大きく振り上げた。
そして、飛び跳ねながら、3人に合図を送った。




