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『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
カラフルな『あの世界』
495/581

6.3.12


 リュウタは、1分もしないうちに消えた。


 風に飛ばされたように霧散し、ワンピースにススだけが残った。

 煙だもんね。そうなるよね。

 これ、洗っても落ちないかも……


 顔を上げると、アルベールと目が合う。

「君の魔法か……なにかしたのか?」

「魂の色を見せてもらった」

「ほう。どんな色だった」

「間違いなく、ウォルターさん」


 沈黙。

 風が2回くらい、焚火の煙を煽りながら通り過ぎた。


「それを信じろとでも?」

「信じられるのは今も昔も、リュウタだけだよ」

「リュウタ?」

「いまのオオカミの名前。これで、安心してお話できる」

「そうか……なら教えてくれ。ウォルターはいつ、どこで君と出会ったんだ」


「それも、信じてくれないかもだけど」

「それは聞いてから判断しよう」


「ワールドカウント24」


「そうか……」

「驚いた?」

「まぁ、そうだな」

「信じられる?」

「そこまで私が生きているのか。そのほうが信じられない」


「ウォルターさんは、優秀なんでしょ。自分で言ってたよ?」

「ッフフ。ウォルターがそう言ったのだとしたら、ウソを言ったな」

「うん。ウソばっかり言ってた」

「それはすまなかった。代わりに謝罪しよう。ウソをつくのが彼の仕事だ」

「ふーん。ストレス溜め込みそうな仕事だね」


「もうひとつ聞きたい」

「うん?」

「ウォルターという名を知っている人物は限られる。誰に聞いた?」

「えーっと……アーネストだね」


「ああ……そうか。そういう繋がりか」

「うん?」


「だとしたら、ウォルターは、未来で君と仕事をするのか」

「うん。ずっとウソばっかりだったけど、最後の最後で助けてくれたんだよ。命がけでね。ウォルターさんがいなかったら、みきはここに来られなかったよ。だからね、ウォルターさんがどんなにウソつきでも、みきは、ウォルターを信頼できるよ」


「そうか。役に立てたのか。任務を果たしたんだな」


「信じる?」

「半信半疑だ」

「だよねー」


「ウォルターさんも、魔法が使えるんでしょ」

「いや。使えないが」

「え、ほんとに?」

「本当だ」

「おかしいなぁ」


「未来のウォルターは、魔法が使えるのか?」

「うん。変装の名人だった。みきには通用しなかったけど」

「それは便利そうだ」


「じゃあ、どんな魔法だったか教えるよ」

「ほう?」

「その代わり、ギルドの設立に協力してくれる?」


「フッ……フフフッ」


 珍しい。

 ウォルターさんが、顔をくしゃくしゃにして笑った。


「ミキ」

「うん?」

「私に、個人的な交渉を持ちかけて、イエスと言わせることができる人物なんて、数えるとしても片手の指が余るぞ」


「じゃあ、イエス?」

「ああ。イエスだ。君達に協力しよう。ギルドの設立だったか。簡単だ」

「ほかにも、いろいろやってほしいかも」

「私も、個別に仕事があるんだが……まぁいいだろう。しばらくは暇だ」


「ウォルターさんが協力してくれたら、すっごい心強いよ」

「そうか? 知ってると思うが、ウォルターはウソしか言わないぞ」

「大丈夫だよ。みきも、似たようなもんだから」

「そうか。そうかもな」


 ウォルターが、またパイプを咥えた。

 それから、思い出したように言った。


「ところで、ひとついいか。大事なことだ」

「うん?」

「ウォルターという男は知らん。忘れろ。私はドイツ人のアルベールだ」

「あははっ。そうだね。ごめんなさい。アルベール」


 話しは終わった。

 振り向けば遠くに、ルシアとタデク。それとディルがこちらを見守っている。


 間違えて、ウォルターさんと呼ばないように気をつけなきゃね。



 わたしは両手を大きく振り上げた。

 そして、飛び跳ねながら、3人に合図を送った。

 


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