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『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
カラフルな『あの世界』
491/586

6.3.08


「場所を変えよう」


 アルベールが、立ち上がりながら言った。

 答えも待たずに歩き始めてしまった。

 わたしたちも、そのあとを追う。


 お腹もすいたし、ご飯食べながらがにしてほしいんだけど。


「ここでいいだろう」


 アルベールが立ち止まる。

 辿り着いた場所は、テント群から離れた川辺。

 川幅は広くもないが、歩いて渡れそうな川にも見えない。


 対岸には、雑木林が茂っている。

 食事の準備はできなさそうだ。

 お腹すいた。


 ルシアが言った。

「なぁに、秘密の会話?」

「そんな大げさなものではないが。評議会を抜けるかどうかの話だ。あの場では聞かれたくない」


「ふーん。それで、なにが聞きたいのかしら、アルベール伯爵」

「まずは、そうだな、君達の目的はなんだ?」

「この子のね、ダディーとマミーを探しにいくのが目的よ」

 ルシアが、わたしに視線を向けた。

 ウォルターも、視線を向けて、わたしに話しかけた。

「ミキの家族が、この世界にいるのか」

「うん」


「信頼のエレメントにか」

「えと、もしかしたら、知恵……かも」

「……知恵? ならなぜ信頼に来たんだ」

「来てから、知恵にいるかもって聞いた」


「なぜ両親に会いたいんだ?」

「……」

「ああ、すまん。答えにくいなら答えなくてもいい」


 なんか、警察のヒトみたい。


「次の質問だ、ミキ」

「うん?」

「君は、知恵にいたことがあるのか?」

「うん」

「どのカウントだ?」


 それも、まだ言いたくない……かも。


「どうした。それも答えにくいのか?」

「うーん……」


 ルシアが口を挟んだ。

「ちょっと、アルベールさん」

「なんだ?」

「あんまりうちの姫をいじめないでくれる?」

「そう言われてもな……知りたいことを質問しただけだが。たしかに尋問しているようにも感じるな」


「質問なら、私が答えるわ。なんでも聞いて」

「ではルシア。ミキの両親を探しに知恵に行くつもりか?」

「そうよ。私はよくわからないけど、ミキが行きたい場所に連れて行くのが、私の役目よ」


「大層な忠義だな。そこのポーランド人も同じか?」

「オレは、ただ雇われただけだ。なにをするのかなんて、オレの知ったことじゃない」


「そうか。わかりやすいな君は。そういうのは、嫌いじゃない」

「オレも念のため聞きたいんだが」

「なんだ?」


「おまえは、プロイセンではないのだな?」

「……困ったな。君達が相手だと、いろいろと調子が狂う」

「なにが言いたい?」

「ドイツ人のつもりだが、プロイセンではない」

「残念ながら、オレの目からは、おまえはドイツの田舎者にも見えない」

「フッハハ。それで構わないが、その話はここだけにしてくれ。仕事ができなくなる」

「……なんだよ仕事って」

「私に課せられた任務。業務だ」


「ああ……そういうたぐいか」

「わかってくれたと考えていいのかな」

「いや、さっぱりわからん」

「そうか。ありがとう。君も任務に忠実なようだ」



 少し間を置いて、アルベールはディラに視線を向けた。

「モレディラ」

「うん? なにかしら」


「面白い連中を連れてきたな」

「そうね。あなたがそこまで表情を崩すのなんて、初めてみましたわ」

「君も、この連中と共に行動するのか?」

「わたくしは、古文の解析に没頭する時間がほしいだけですわ」

「っフフ、そうだろうな」


 ルシアが、アルベールに尋ねた。

「気に入ってくれてうれしいわ、ムッシュ・アルベール。次の質問はなにかしら?」


「いまのところは、無い……あとは、少し考える時間が欲しい」

「そう」

「明日、いや2日後にまた来てくれ。その時に答えを出そう」

「オーケイ、今日のところはこれで終わりね」


「即答できなくてすまないな」

「いいわよ。すぐに信じてって言っても、信じてくれそうなヒトじゃなさそうだしね」

「ッフッフ、やはり君は、オオカミだな。ルシア」

「もっとかわいい動物に喩えてほしいわね、アルベール」

「そうか。褒めているつもりだったが、気に障ったなら謝罪しよう」

「紳士なのか、大雑把なのか、よくわからないけど合格だわ」



「そうか。光栄だ」



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