6.3.08
「場所を変えよう」
アルベールが、立ち上がりながら言った。
答えも待たずに歩き始めてしまった。
わたしたちも、そのあとを追う。
お腹もすいたし、ご飯食べながらがにしてほしいんだけど。
「ここでいいだろう」
アルベールが立ち止まる。
辿り着いた場所は、テント群から離れた川辺。
川幅は広くもないが、歩いて渡れそうな川にも見えない。
対岸には、雑木林が茂っている。
食事の準備はできなさそうだ。
お腹すいた。
ルシアが言った。
「なぁに、秘密の会話?」
「そんな大げさなものではないが。評議会を抜けるかどうかの話だ。あの場では聞かれたくない」
「ふーん。それで、なにが聞きたいのかしら、アルベール伯爵」
「まずは、そうだな、君達の目的はなんだ?」
「この子のね、ダディーとマミーを探しにいくのが目的よ」
ルシアが、わたしに視線を向けた。
ウォルターも、視線を向けて、わたしに話しかけた。
「ミキの家族が、この世界にいるのか」
「うん」
「信頼のエレメントにか」
「えと、もしかしたら、知恵……かも」
「……知恵? ならなぜ信頼に来たんだ」
「来てから、知恵にいるかもって聞いた」
「なぜ両親に会いたいんだ?」
「……」
「ああ、すまん。答えにくいなら答えなくてもいい」
なんか、警察のヒトみたい。
「次の質問だ、ミキ」
「うん?」
「君は、知恵にいたことがあるのか?」
「うん」
「どのカウントだ?」
それも、まだ言いたくない……かも。
「どうした。それも答えにくいのか?」
「うーん……」
ルシアが口を挟んだ。
「ちょっと、アルベールさん」
「なんだ?」
「あんまりうちの姫をいじめないでくれる?」
「そう言われてもな……知りたいことを質問しただけだが。たしかに尋問しているようにも感じるな」
「質問なら、私が答えるわ。なんでも聞いて」
「ではルシア。ミキの両親を探しに知恵に行くつもりか?」
「そうよ。私はよくわからないけど、ミキが行きたい場所に連れて行くのが、私の役目よ」
「大層な忠義だな。そこのポーランド人も同じか?」
「オレは、ただ雇われただけだ。なにをするのかなんて、オレの知ったことじゃない」
「そうか。わかりやすいな君は。そういうのは、嫌いじゃない」
「オレも念のため聞きたいんだが」
「なんだ?」
「おまえは、プロイセンではないのだな?」
「……困ったな。君達が相手だと、いろいろと調子が狂う」
「なにが言いたい?」
「ドイツ人のつもりだが、プロイセンではない」
「残念ながら、オレの目からは、おまえはドイツの田舎者にも見えない」
「フッハハ。それで構わないが、その話はここだけにしてくれ。仕事ができなくなる」
「……なんだよ仕事って」
「私に課せられた任務。業務だ」
「ああ……そういうたぐいか」
「わかってくれたと考えていいのかな」
「いや、さっぱりわからん」
「そうか。ありがとう。君も任務に忠実なようだ」
少し間を置いて、アルベールはディラに視線を向けた。
「モレディラ」
「うん? なにかしら」
「面白い連中を連れてきたな」
「そうね。あなたがそこまで表情を崩すのなんて、初めてみましたわ」
「君も、この連中と共に行動するのか?」
「わたくしは、古文の解析に没頭する時間がほしいだけですわ」
「っフフ、そうだろうな」
ルシアが、アルベールに尋ねた。
「気に入ってくれてうれしいわ、ムッシュ・アルベール。次の質問はなにかしら?」
「いまのところは、無い……あとは、少し考える時間が欲しい」
「そう」
「明日、いや2日後にまた来てくれ。その時に答えを出そう」
「オーケイ、今日のところはこれで終わりね」
「即答できなくてすまないな」
「いいわよ。すぐに信じてって言っても、信じてくれそうなヒトじゃなさそうだしね」
「ッフッフ、やはり君は、オオカミだな。ルシア」
「もっとかわいい動物に喩えてほしいわね、アルベール」
「そうか。褒めているつもりだったが、気に障ったなら謝罪しよう」
「紳士なのか、大雑把なのか、よくわからないけど合格だわ」
「そうか。光栄だ」




