6.3.07 - コネ?
焚火の男も、わたしたちに気がついたようだ。
「モレディラか。どうした」
「アッサラーム。最近知り合った、お友達を紹介しに来ましたのよ」
「友達?」
ムスッとした、表情を向ける壮年の男性。
顔つきは、カウント24でみたウォルターとほとんど変わらない。
長い脚を、焚火の前で無理やり組んでいる。
ディルはドイツ語で会話をしている。
ルシアは、ほとんどフランス語のドイツ語で話しかけた。
「ボンジュゥ、ムッシュ。私はルシア」
「ゥルセア?」
ルシアの名前の説明で1分。
「こちらのポーランド人はタデク。後ろのカワイイ子はミキ」
「こんにちわ」
「ポーランド人に……君は日本人かな? 珍しいな」
「……」
タデクは、なにも言わない。
「私は、アルベール・バウアー。ドイツの田舎出身だ。それで、私になにか用かな?」
アルベール?
ダレそれ。
ディルが会話を続けた。
「わたくしね、ギルドに入ることにしましたの」
「ほう。それもまた珍しいな。どこのギルドだ?」
「これから新設する予定のギルドですわ」
「これから? 人数は?」
「足りないから、あなたを誘いに来ましたのよ。人数合わせに協力してもらえないかしら?」
「新設……まさか、この4人か?」
「そのとおりです。このギルドにはノルマも制約もありませんのよね?」
ディルは、アルベールに返答しながら、ルシアに尋ねた。
「そんなこと考えたこともないわ。好きにやってくれていいけど、私たちも用事があるから自由にやらせてもらうわよ」
「どう? アルベール」
「どうと言われてもな」
「評議会への申請に必要なのは最低5人でしたわよね?」
「たしかに5人で申請は可能だが、本気か?」
「わたくし、冗談と読めない文字は嫌いなのですけど?」
「最低人数というのは、増える前提の仮登録のようなものだぞ」
「先のことは、あとで考えればよろしくなくて?」
ディルが、アルベールを説得している。
ルシアはその後ろから、アルベールの顔をじっと見つめていた。
顔だけ少しこちらに向けて、フランス語で囁いた。
「なんだか異様なオーラを感じるわ。タダ者じゃないわよ彼」
「オレには、ハッタリ上手なオッサンにしか見えんが」
「タデクも20年くらいしたら、ああなるわよたぶん」
「20年も生きてないだろ、オレは」
「あのね、みきね、あの人知ってるかも」
「え? どこかで会ったの?」
「うーん。説明しにくいからあとで話すね」
アルベールが、ちらっとわたしの目を見た。
そうだよね。
わたしが知ってるウォルターなら、フランス語もわかる。
今のわたしたちの会話も、聞こえたよね。
アルベールが、ドイツ語でディルに言った。
「少し考えさせてくれ。人数合わせのギルドを探していたが、どこでもいいというわけではない」
その言葉に、ルシアが答えた。
「あなたのこと、すごく興味が湧いたわ」
「君はルシアだったか。まるでオオカミのような目だな」
「あら、そんなこと言われたの久しぶりね。合格よ」
「合格?」
タデクが横やりを入れた。
「気にしなくていい。コイツの口癖だ」
「それで、そちらのフロイラインは、ミキ、だったか?」
「うん」
「私を見たことがあるのか? さっきフランス語で話していたな」
「うん……」
「私の記憶にはないが、どこかで私を見かけたのか?」
「えーっと……」
わたしには、駆け引きなんてできない。
めんどうだから、わたしはアルベールの近くに駆け寄った。
そして、両手で覆った口を、アルベールの耳元に近づける。
英語でいいよね。
短く小声で告げた。
「……ウォルターさんですか?」
ウォルターが顔を離して、わたしの顔を見た。
無表情なままだけど、鼻の横の皺が少し深くなっている。
「……それはダレだ? 君は何者だ?」
あれ?
やっぱ、別人だった?




