6.3.05
ディルは、自分のことを隠すつもりがないようだ。
むしろ、誇り高く自分の出自を語った。
ディルが住んでいる場所はトルコのイスタンブールだという。
日本で例えたら、首都東京と京都を合わせたような歴史ある大都市。
ログインしている時期は、西暦1904年。
タデクより、4年も先の未来。
わたしの時代からだと、120年以上前。
現実世界で、ディルやタデクに会うのは、完全に不可能だね。
ディルの現在の年齢は24歳らしい。
って、あれ?
だとしたら生まれは1881年?
生まれた年は、タデクと同じじゃない?
タデクもまんざらでもなさそうな。
もしかして、お似合いのふたり……だったりして。
「それで、わたくしに聞きたいこと、というのは?」
質問は、わたしから始めた。
「ディルは、ずっと信頼のエレメントなの?」
「いいえ。違いますわ。最初に選んだのは知恵でした。でも、信頼のほうが自由にできるので、今回と前回は信頼エレメントに参加しています」
「へー。どう違うんだっけ……」
カウント24の信頼はゲーマーだけど、ここも一緒かな。
「知恵は、国家の思惑や政治が絡むイデオロギー集団。信頼は互いの自由を尊重した共同体……みたいな違いがありますね。明確な違いは、秩序を保っているのが軍か、自発的に生まれるギルドかです」
「ふーん。デイルさんは、ギルドとか入らないの?」
「わたくしは、毎回、無所属ですね。古文の解読がしたいだけですので、神様だとか、勝利だとかにも興味はありません」
「そうなんだ」
「でも、この時期は勧誘がうるさくて困っていますわ。メモリアで作業を進めても構わないのですが。あちらでは、いろいろと頼まれごとをされることがおおくて」
ルシアが、口を挟む。
「ああ、なんかわかる……わたしも、オレサマ、オレサマって呼ばれて、いろいろ頼まれるわ。いまは時間がないって断ってるけどね」
「そのオレサマ……とは、どのような意味ですか? 土着的な言葉でしょうか? とっても気になります」
「さぁ。どういう意味かしら」
もし、オレサマが、日本語だったら……
もしかして、おにいちゃんのことな気がする。
あれ……だとしたら「わたしびと様」って……
「オレんとこには、人っ子ひとりいない。なぜだ」
「だれもいないのに、なんでタデクは、記憶の回廊を出せたのよ」
「オレが知るかよ」
「条件が必要らしいですが、幽霊でも、ゲートの召喚は可能らしいですわ」
「えぇ……やっぱ、そうなんだ。条件てなんだろ」
「さぁ? わたくしも詳しくは」
「じゃあ、あのボロ小屋。幽霊屋敷なのか……奇妙な感じはあったが」
タデクは無表情で言った。
お化けはやだなぁ。
よかったぁ。カタセ村はみんな生きててくれて。
ルシアが話を続けた。
「それでさぁディル。ギルド入ったり作ったりする特典てなに?」
「クリアにかかわるような目標があるのでしたら、ギルドに加入していたほうがいいですわね。評議会の支援もありますし、情報も得られやすいです。それと仕事もみつかりますわ」
「仕事?」
「調査とか討伐、運搬、採取。ほとんどが雑用のようですけどね」
さらにルシアが尋ねる。
「評議会ってなんなの?」
「エレメント・コアの攻略や、他のエレメントと戦争をおこすために、多くのギルドを取りまとめる議会のようなものです。役員12名と、12のトップギルドから選出された12人の計24名で構成されています」
「え、ギルドってそんなにたくさんあるの?」
「ありますわね。カウント21の最盛期だと300くらいあったんじゃないかしら」
わたしが質問した。
「そのギルドって、何人いれば作れるの?」
「たしか……評議会に申請するには最低5人必要だったような。それ以下でもギルドは名乗れますけど、他に吸収されることを勧められますわね」
「5人かぁ……」
「3人しかいないわね」
「3人て、オレも入ってるのか」
「リュウタじゃダメだよね」
「幻のオオカミじゃ無理でしょ」
「うーん……」
「ギルドに参加なさるのですか?」
「うーん、参加っていうか。エレメント・コアは突破したい。そのあと知恵に行きたい」
「知恵に? ルミナス・ノードを渡ってですか?」
「うん。会いたい人がいるんだけど、信頼じゃなくて、知恵にいるらしい」
「まぁ、そうなのですか。それは遠いですわね」
「だから、ギルドには入るか作ったほうがいいかも」
「あとふたり集めればいいんでしょ。適当に声かけてみる?」
たしかに、ルシアなら人集めるの得意そう。
「へんなヒトはやだよ?」
「そうねぇ。面接とかする?」
「あの……所属するだけの名前だけでよいのであれば、わたくしも入れてくださらない?」
「え、いいの? もちろん、名前だけでいいよ」
「わたくしは、古文の解析がしたいだけなので、コアの攻略とかにも興味がないのですけれど。勧誘が止まるのはありがたいですわ」
「ならディルで4人目として、あとひとりね」
「すぐ見つかるかなぁ」
「あの……わたくしに、ひとり知り合いがおりまして。その人物も、所属するだけで済むギルドを探しているかもしれません。声をかけてもかまいませんか?」
「いいけど、どんな人?」
「カウント21で知り合った自称ドイツ人ですわ」
タデクが、怪訝な表情をした。
「またその単語か……プロイセンか?」
「ッフフ。実はね、彼とは少なからず交流があるのですが、ドイツ人ではなく、おそらく生まれはフランス。いまの国籍はたぶん、カナダか、もしくはアメリカ人な気がしますわ」
ルシアが言った。
「あら、私と同郷かしら?」
「聞いたわけではないのですのよ。わたくしの勘です」
「そのヒトって男性?」
「ええ。男性です。歳は40くらいだったかしら」
ルシアが、わたしに視線を向けた。
「40って急に年齢上がるわね。でも、面白そうだから会ってみる?」
「うん。そのヒトがイイって言ってくれたら、5人になるし」
「では、さっそく行ってみましょうか。いまのうちならヒマでしょうから」
「ヒマ?」
「ええ。カウント22は、まだ4日目ですし」
そうか。
まだ4日目なんだ……
いろんなこと、ありすぎ。




