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『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
カラフルな『あの世界』
488/588

6.3.05


 ディルは、自分のことを隠すつもりがないようだ。

 むしろ、誇り高く自分の出自を語った。


 ディルが住んでいる場所はトルコのイスタンブールだという。

 日本で例えたら、首都東京と京都を合わせたような歴史ある大都市。


 ログインしている時期は、西暦1904年。

 タデクより、4年も先の未来。

 わたしの時代からだと、120年以上前。

 現実世界で、ディルやタデクに会うのは、完全に不可能だね。


 ディルの現在の年齢は24歳らしい。

 って、あれ?

 だとしたら生まれは1881年?

 生まれた年は、タデクと同じじゃない?


 タデクもまんざらでもなさそうな。

 もしかして、お似合いのふたり……だったりして。



「それで、わたくしに聞きたいこと、というのは?」


 質問は、わたしから始めた。


「ディルは、ずっと信頼のエレメントなの?」

「いいえ。違いますわ。最初に選んだのは知恵でした。でも、信頼のほうが自由にできるので、今回と前回は信頼エレメントに参加しています」


「へー。どう違うんだっけ……」

 カウント24の信頼はゲーマーだけど、ここも一緒かな。


「知恵は、国家の思惑や政治が絡むイデオロギー集団。信頼は互いの自由を尊重した共同体……みたいな違いがありますね。明確な違いは、秩序を保っているのが軍か、自発的に生まれるギルドかです」



「ふーん。デイルさんは、ギルドとか入らないの?」

「わたくしは、毎回、無所属ですね。古文の解読がしたいだけですので、神様だとか、勝利だとかにも興味はありません」

「そうなんだ」


「でも、この時期は勧誘がうるさくて困っていますわ。メモリアで作業を進めても構わないのですが。あちらでは、いろいろと頼まれごとをされることがおおくて」


 ルシアが、口を挟む。

「ああ、なんかわかる……わたしも、オレサマ、オレサマって呼ばれて、いろいろ頼まれるわ。いまは時間がないって断ってるけどね」


「そのオレサマ……とは、どのような意味ですか? 土着的な言葉でしょうか? とっても気になります」

「さぁ。どういう意味かしら」


 もし、オレサマが、日本語だったら……

 もしかして、おにいちゃんのことな気がする。

 あれ……だとしたら「わたしびと様」って……



「オレんとこには、人っ子ひとりいない。なぜだ」

「だれもいないのに、なんでタデクは、記憶の回廊を出せたのよ」

「オレが知るかよ」


「条件が必要らしいですが、幽霊でも、ゲートの召喚は可能らしいですわ」

「えぇ……やっぱ、そうなんだ。条件てなんだろ」

「さぁ? わたくしも詳しくは」


「じゃあ、あのボロ小屋。幽霊屋敷なのか……奇妙な感じはあったが」


 タデクは無表情で言った。

 お化けはやだなぁ。

 よかったぁ。カタセ村はみんな生きててくれて。


 ルシアが話を続けた。

「それでさぁディル。ギルド入ったり作ったりする特典てなに?」

「クリアにかかわるような目標があるのでしたら、ギルドに加入していたほうがいいですわね。評議会の支援もありますし、情報も得られやすいです。それと仕事もみつかりますわ」


「仕事?」

「調査とか討伐、運搬、採取。ほとんどが雑用のようですけどね」


 さらにルシアが尋ねる。

「評議会ってなんなの?」

「エレメント・コアの攻略や、他のエレメントと戦争をおこすために、多くのギルドを取りまとめる議会のようなものです。役員12名と、12のトップギルドから選出された12人の計24名で構成されています」


「え、ギルドってそんなにたくさんあるの?」

「ありますわね。カウント21の最盛期だと300くらいあったんじゃないかしら」


 わたしが質問した。

「そのギルドって、何人いれば作れるの?」

「たしか……評議会に申請するには最低5人必要だったような。それ以下でもギルドは名乗れますけど、他に吸収されることを勧められますわね」


「5人かぁ……」

「3人しかいないわね」

「3人て、オレも入ってるのか」

「リュウタじゃダメだよね」

「幻のオオカミじゃ無理でしょ」

「うーん……」



「ギルドに参加なさるのですか?」

「うーん、参加っていうか。エレメント・コアは突破したい。そのあと知恵に行きたい」

「知恵に? ルミナス・ノードを渡ってですか?」

「うん。会いたい人がいるんだけど、信頼じゃなくて、知恵にいるらしい」

「まぁ、そうなのですか。それは遠いですわね」


「だから、ギルドには入るか作ったほうがいいかも」

「あとふたり集めればいいんでしょ。適当に声かけてみる?」


 たしかに、ルシアなら人集めるの得意そう。


「へんなヒトはやだよ?」

「そうねぇ。面接とかする?」


「あの……所属するだけの名前だけでよいのであれば、わたくしも入れてくださらない?」


「え、いいの? もちろん、名前だけでいいよ」

「わたくしは、古文の解析がしたいだけなので、コアの攻略とかにも興味がないのですけれど。勧誘が止まるのはありがたいですわ」


「ならディルで4人目として、あとひとりね」

「すぐ見つかるかなぁ」


「あの……わたくしに、ひとり知り合いがおりまして。その人物も、所属するだけで済むギルドを探しているかもしれません。声をかけてもかまいませんか?」


「いいけど、どんな人?」

「カウント21で知り合った自称ドイツ人ですわ」


 タデクが、怪訝な表情をした。

「またその単語か……プロイセンか?」

「ッフフ。実はね、彼とは少なからず交流があるのですが、ドイツ人ではなく、おそらく生まれはフランス。いまの国籍はたぶん、カナダか、もしくはアメリカ人な気がしますわ」


 ルシアが言った。

「あら、私と同郷かしら?」

「聞いたわけではないのですのよ。わたくしの勘です」


「そのヒトって男性?」

「ええ。男性です。歳は40くらいだったかしら」


 ルシアが、わたしに視線を向けた。

「40って急に年齢上がるわね。でも、面白そうだから会ってみる?」


「うん。そのヒトがイイって言ってくれたら、5人になるし」


「では、さっそく行ってみましょうか。いまのうちならヒマでしょうから」

「ヒマ?」


「ええ。カウント22は、まだ4日目ですし」


 そうか。

 まだ4日目なんだ……



 いろんなこと、ありすぎ。



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