6.3.03
朝食は、ルシアが持ってきた大麦。
それとカブとネギみたいな野菜。
そして、タデクが昨日捕まえたという、小動物のお肉。
それをポタージュにしたなかなか豪勢な朝食だ。
味はまぁ……だいぶまし。
調理したのは、わたしとタデク。
タデクは、料理上手なのではなく、野営上手。
中世の野営料理の味付けは、タデクのほうが詳しかった。
今日は、ボウルとスプーンも人数分ある。
遠征中のキャンプと変わらないけど、生活がだんだんと良くなっていく。
朝食を食べながら、ルシアは、信頼エレメントに関する政治の説明を始めた。
「まだ、本格的には動き出してないみたいなんだけど、ギルド評議会というのを立ち上げるらしいわ」
「あ、さっきの女の人も言ってた。評議会に知り合いがいるって」
「あら、そうなの? でも、まだ準備中みたいよ」
「じゃあ、ウソだったのかな」
「どうかな。評議会メンバーは24人で構成されるんですって。そのうちの12人は、もう決まってるらしいから、そのなかの誰かなんじゃない?」
「ギルド評議会と、ギルドって、なにがちがうの?」
「簡単にいうと、ギルドはタデクがいうように、プレイヤーがあつまる組合とか、寄り合いの集団。ギルド評議会は、そのギルド全体の管理組織みたいな立場になるらしいわ」
「ふーん」
ぜんぜんわかんない。
「ギルドは沢山あるけど、評議会は1つ?」
「そうよ。ギルドはね、10人くらいの小規模なものから、百人を超える大規模なものまで、たくさん出来るらしい。で、そのたくさんあるギルド全体にルールや基準を設けるのが、ギルド評議会……なのかな。私もその先はよくわからないわ」
「じゃあ、みきたちも、どこかのギルドに入ったほうがいいの?」
「どうかしら。入っても、身動き取りづらくなるわよね」
ここまで口を挟まなかったタデクが言った。
「ドイツ人とロシア人のいないギルドにしてくれると助かるよ」
「ロシア人はまだ見てないけど、ドイツ人はけっこういるわよ。3割くらいドイツ人じゃないかしら」
「なら、運営がプロイセン人じゃないギルドにしてくれ。ロシアは論外だ」
「プロイセンかどうかなんて、見分けつかないわよ」
「偉そうにしてるドイツ人だ。すぐにわかる」
「じゃさ、私たちで、ギルド作っちゃうとか」
「できるの、そんなこと?」
「さぁ? 申し込みとかするのかしら。今日、調べてみるわ」
「作るって……たった3人でかよ?」
「だめなの? 3人じゃ?」
「オレの知ってる鍛冶ギルドや陸運ギルドは……何人かは知らんが、数百人規模だと思うし、カネもコネも必要だぞ」
「ぜんぶ無いわね……ところで、ミキ」
「うん?」
「最初はなにを目指したらいいの?」
「あぁー……」
そうだった。
信頼には、パパとママがいない可能性高いから、知恵まで行かなきゃいけないんだ。
だとしたら、最初に目指すのは……
「エレメント・コアの突破かな」
「あー、聞いたことある。何千人て規模で攻略するのよね?」
「うん。みきたちだけじゃ、どうにもならないから、人任せでもいいんだけどね」
「なんだソレは。戦争でもするのか」
「うん。戦争とは違うけど、ウィルコープスっていうのがウジャウジャいるから、大勢でいかないとエレメント・コアまで行けない」
「よくわからんが……誰かを殺せばいいのか」
「いやあの……そんな物騒なものでもないんだけど」
ところで、タデクは、いっしょに来てくれることになったのかな。
口ぶりだとそうっぽいけど。直接聞くのがなんか。
ルシアが地面にボウルを置いた。
先に食べ終わったらしい。
そのルシアが、まとめに入る。
「それじゃあまずは、ギルドを作れるかどうか探る。まずはそこからでいい?」
「だから、たった3人でかよ」
「昔のギルドとは文化が違うのよ。可能かどうか調べるから」
「昔ってなんだよ……言ってる意味がときどきわからん……」
「ねぇ、ルシア。調べるって言うけど、どうやって?」
「昨日仲良くなった人がいてね。そのヒトに聞いてみるわ」
「プロイセンじゃないよな?」
「違うけど……タデクと仲良くできるかしら?」
「どこの国の人間だ」
「オスマン帝国って言ってたわ」
「うむ。問題ない。争ってたのは何百年も前だ」
「ならいいのね。タデクもいっしょにいく?」
「かまわないが、テュルク語もギリシャ語も話せないぞ」
「大丈夫よ。その人もドイツ語喋れるから」
「またドイツかよ……本当にプロイセンじゃないんだよな?」
「だから、違うってば。どっちかっていうと北欧じゃないかしら」
歴史音痴のわたしには、もうついていけない。
わかるのは、ドイツ人がひとりもいないのに、共通語がドイツ語ってこと。
ほんとーに、へんな世界。
「ねぇルシア。みきも、いっしょに行っていい?」
「もちろんよ。いっしょに行きましょ。この3人のなかで、ニフィル・ロードに詳しいのは、ミキだけだからね」
「ああ、そっか。そうだね……そうなるんだね……」
ごめん……
わたしは、そんなに詳しくない。




