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『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
カラフルな『あの世界』
485/588

6.3.02 - 勧誘


 4月10日、火曜日のお昼。



 スマホのビリビリ音には気が付いていた。

 授業中は怒られるから、チャイムが鳴るまで待つ。


 メッセージの着信は、まゆさんの連投3件。

『カウント25でランタポンタと合流した』

『啓介と詩織は知恵らしい』

『ランタとポンタもカウント22は知恵』


 背中からチカラが抜けた。

 ウソでしょ。ウソって言って。


 ヘナヘナと机の上にもたれた。

 ゆうこちゃんから「告ってフラれでもしたの?」とか言われた。


 チガウ……違うけど、ものすごい脱力感。


 やっぱ、まゆさんに聞いてからにすればよかった。

 もう信頼でスタートしちゃったよーぅ。

 パパとママに会うには、エレメント・コアを抜けて、知恵のコアまで旅をするのが確定かも。


 って、あれ。

 じゃあなんで、ルシアは、信頼に来たんだろう。


 まぁ、いっか……

 最初から、謎の美女だし。



 放課後。

 まゆさんからまた3通のメッセージ。

『ウワサで聞いたんだけどさ』

『ウォルターが22の信頼にいるらしいよ』

『所属は知恵だと思うから探してみたら面白いかも?』


 どこのウワサだよ。

 でも、面白そうだから、探してみよ。




 その日の夜。

 深夜0時に、わたしはログインした。

 カウント22へ。2回目のログイン。


 

 目を開ける前から真っ暗。

 開けても、部屋の中が真っ暗だった。


 ログインデバイスを出して、灯りを点ける。

 そして、2階の床板の上で起き上がった。

 寝てたわけじゃないから、どこも痛くないけど、マントがホコリだらけだ。


 この場でマントをはたくのはやめて、そのまま1階に降りる。

 記憶の回廊へ飛んでから、ホコリを落とす。

 あれ。ここではたき落としたホコリってどうなるんだろ?

 って、ちょっと気になったけど、信頼のエレメント・ノードへ向かう。


 東のソラを見ると、うっすらと赤い。

 陽が昇ろうとしている。


 もうすでに、わたし以外にも、歩いているヒトがチラホラ。

 でも、あちこちの焚火の周りで、プレイヤーが寝ていた。

 みんな地面にごろ寝。


 ルシアのテントの周りでも寝てるヒトが2人。

 まだテントがあるだけマシなのかな。

 ルシアと、タデクだった。


 昨日と同じ焚火と鍋。

 鍋の底に、焦げた茶色いナニカがこびり付いている。

 へんな匂い。

 なに食べたんだろう。


 ルシアは自分の腕を枕に原っぱにごろ寝。

 あれって、腕が痛くなるよね。

 タデクは消えかけた焚火の前に座っているが、いびきをかいている。


 夜明けまであと少し。

 そのまま寝かしておこう。


 起こさないように。静かに鍋を掴み上げる。

 小川に持っていき、鍋を洗う。



「ハロ」


 後ろから女の人の声。

 振り返ると、ふんわりとしたオリーブ色のロングドレス。

 すっごいキレイなブロンドのミディアムヘア。

 肌の色は白くて、黒目の周りは青っぽい。

 歳は20代前半くらいだと思うけど、お人形さんじゃないなら妖精さん?

 ……ってくらいの美女だった。


「ちょっとお時間いいかな」


 妖精さんが、ドイツ語をしゃべった。

「はい?」

「私の名前はケーテ。よろしくね」


 握手は求めず、右手を胸にあてながら、女性はケーテと名乗った。

 わたしは、立ち上がってお辞儀しながら返答した。

「みきです」


「こんにちわミキ。あなたって、どこかのギルドに所属してるの?」

「ギルド?」

「うん。まだ、未所属?」


 ギルドって……なに……

 ケーテが言葉を続けた。


「もしまだだったら、いちど見学に来ない?」

「見学?」

「うん。まだ募集始めたばかりだけど、もう20人くらいいるよ。ちなみにギルマスは、そこそこイケメンのドイツ人」

「へー……」


 その前に、ギルドって……なんですか……


「そっちは、3人かな? みんな一緒でも構わないし大歓迎なんだけど、どう? 興味ある?」


「あの、そのギルドって、どんなことをするの?」

「あー、方向性? えっとね。安全第一で楽しみながら、全員で完走しようがスローガン。評議会にも知り合いがいるから自由もきくわよ」


「ふーん」


 えーっと……評議会……

 わからないことが多すぎる。


「どう? 興味あるなら、ギルマスを紹介するけど?」

「え……あ、えっと。相談してからでもいい?」

「ああ、そうね。じゃあどうしよっか……また、あとで来るね」

「うん」


「じゃね、ミキ」

「うん。ばいばい」


 ケーテが立ち去っていくのを、手を振って見送る。


「おはようミキ」

「あ、ルシアー」

「やーん、ミキー。朝帰りなんてヒドイわー」


 今日も朝いちばんのルシアのハグ。

 このスキンシップにも慣れてきている。


「で、どうしたの、あのドイツ人だれ?」

「ギルド? に入らないかって勧誘された」

「ああ。それね。私も昨日誘われたわ。あの子じゃなかったけど」


「ねぇルシア、ギルドってなに? ゲームとかのやつとおんなじ?」

「私もゲームとか知らないのよね」


 ルシアと会話していると、横から男の声。

「組合とか、寄り合のことだろ? オレの国にも、北の方にいくとあるよ」


 タデクだ。

 燃えカスだけの焚火の前に座って、背伸びをしている。


「あら、タデクも起きたのね」

「もぅ、起きてるなら、だれか助けてよぉ」


「スマンな。オレは……ドイツが嫌いなんだ」

「ええ、なんで?」

「まぁ憎んでいるのはドイツというより、プロイセンなんだがな。なんども殺し合って、オレも殺した。仲間も大勢殺された。だからドイツという国とその連中には、あまり関わりたくない」


「ふーん。そうなんだ」

「あのオンナのギルドに参加したいのか?」


「うーうん。みきの目的は、そういうんじゃないからなぁ」

「そうか。ならいいんだ」


 しばらくの沈黙あと、ルシアが言った。

「私も昨日、情報を集めてきたから説明するわ。ついでに朝ごはん食べましょう」


「うん」


 ギルドに、評議会。

 まゆさんがいたら、目を輝かせそうな単語だ。



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