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『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
カラフルな『あの世界』
483/588

6.2.13


 ガロムちゃんは、仕事があるからと言って、酒場に戻った。



 わたしは、おやしろの探索を続ける。

 中途半端な密室の中でほこり塗れ。

 具合が悪くなりそうなくらいだけど、問題ない。

 ここはニフィル・ロード。

 病気になったら、ログアウトすればいい。



 目が慣れてきたので、部屋の奥の方もうっすらと見えている。


 ハンガーラックに掛かっていたのは、穴だらけのマント。

 それと胴衣と袴。黒カビでくすんでいる。

 この衣装は、パパが記憶の回廊で着ていたのと同じものだろうか。


 きっとこの部屋は、22年か23年。放置されていたんだと思う。

 長い年月、だれも訪れなかった、パパの家。


 見上げると、2階の床が見える。

 半分以上が吹き抜けになっていた。

 奥に細い階段があって、そこから上がれる。


 わたしは、壊れないか注意深く確認しながら、薄暗い階段を昇った。

 ギシギシとお約束のような木の階段のホラーサウンド。


 2階は狭い。1階の3割くらいのスペースしかない。

 そこにあるのは、ベッド。

 それと椅子がセットになった机。

 棚もひとつある。


 机の上にはなにも置かれていない。

 棚には、小さな木彫りのお人形さんが飾られている。

 ドレスを着た女の子の人形かな。


 引き出しを開けたが、暗くてよく見えない。

 そうだと思い出し、ログインデバイスを出した。

 デバイスの灯りでも、少しは見えると思う。


 そしたら!


 パっと明かりが点いた。

 とても明るい白色灯。

 現実世界と同じくらい明るい光。


 見渡すと、天井と壁のつなぎ目のところに小さな石。

 あれは、室内専用の魔法の電灯だ。

 ログインデバイスの作動に反応して光る石。

 カウント24のまゆさんちにもあったやつ。

 すごい!


 すごいすごい!

 パパも、魔法が使えたのかな。

 それとも、ママからもらったのかなぁ。


 とにかく、部屋が明るくなった。

 2階の床の上から、あらためて室内を見渡した。

 吹き抜けになっているから、1階もよく見える。


 1階の壁際に並んでいたのは、いろんな木を削って作ったような木刀。

 その脇の棚には、斧とかノミとか、工具がたくさん並んでる。

 ぜんぶホコリをかぶってるし、斧のノミも、ここからでもわかるくらいの茶色。

 錆び錆びだ。


 ベッドもほこりまみれだった。

 見た目は普通のベッドだね。

 こじんまりとした、ひとり用の木枠のベッド。

 ふれてみると、カサカサの掛け布団。でもその下からマットレスの弾力。


 やっぱり、普通のベッドだ。

 でも、手をもどすと、手がほこり塗れだった。


 これは。


 掃除だ。

 それしかない。


 このおうちを、ピカピカにしよう。



 そう意気込んだところで、わたしはまた、途方に暮れた。


 いくら探しても掃除道具がない。

 木のバケツはあるけど、外に井戸もない。


 水は、近くの川か井戸を探さないといけない。

 雑巾は……


 あれでいっか。

 ハンガーに掛かってる、穴だらけのマント。

 それと、糸がほつれまくった、カビだらげの道着。


 見渡すと、使えそうなのは、ベッドや机といった家具。

 それとオイルランタンくらい。


 あとは全部、ゴミ……だなぁ。


 引き出しの中には、きんちゃく袋。

 それと、錆びたナイフが1本。


 きんちゃく袋は、ズッシリとしている。

 中には、錆び錆びのコインが入っていた。

 たぶん20枚くらい。


 見た目は、アロハに見せてもらったコインに似てるけど。

 例外なく錆びてザラザラだった。


 たぶんおカネだと思うけど。

 使えるのかなコレ……



 まぁいいや。

 とりあえず、ゴミを外に出そう……






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