6.2.03
焚火。
作り方は知ってる。
ダコタファイヤホールなら、わたしでも作れるかも。
穴掘るだけだし。
ルシアは、上半身だけテントの中にいれた。
それ以上は重くてムリ。
そのあと、薪木用に集めたらしき枝の中から、固そうなのを2本拾って、川の近くの穴を掘る。
けど、硬い……
土が硬ったいぃ。
1回ほじくっても、掘れたのはほんの数ミリ。
こんなんじゃ、焚火の穴を掘るだけで、朝になるかも。
4~5回掘ったところで、わたしは、枝を放り投げた。
腕が疲れたし、手のひらがヒリヒリする。
あたりはもう、だいぶ暗くなっていた。
あと少しで、陽も完全に落ちる。
おにいちゃんも、ミラーも、ソフィアもいないこの世界。
わたしはなにもできなかった。
せめて、ソフィアがいてくれたら。
っていうか、ルシアでもいい。
なんで、ログアウトしちゃうの。
はぁ。
このまま地面の上で焚火を点けちゃおうかな。
川も近いんだし。
火事にだって、ならないよね?
薪の上に、直接鍋置いちゃってもいいかな。
黒こげになったりしないよね?
「ポマ、クシィ、マーラ?」
(Pomóc ci, mała?)
突然、声を掛けられた。
後ろを振り向くと、ほぼ暮れかけた夕暮れの先に、亜麻布の肌着みたいなのを着た男の人が立っていた。
ダレっ?
っていうか、何語?
「あ……あの、えっと……」
「Um?」
どこの国の人?
ドイツ人ぽいけど。
ロシア系……でもないな。
北欧の人かな。
夜だから、ほとんど黒だけど茶色がかった短髪。
ヨーロッパ人なのはわかるけど、彫りが深いというよりも平面。
イギリス人と、ドイツ人を重ねたような顔。
暗くて、よく見えないけど、背が高くて、がっしりしてて。
なんだか……怖い……
「あ、あ……あいむオケイ」
「Huh?」
英語は伝わらないのかな。
次は、えっと、次はドイツ語で。
「わ、わたしは、大丈夫です!」
(I...Ich komme schon klar !)
「なんだ、標準ドイツ語はわかるのか」
「は、はい」
伝わった……伝わったよ。
ありがとう!
ドイツ語を教えてくれた、噴水おじさん!
「で、君は、焚火を点けたいんだろ?」
「うん……」
「やってやるよ」
「えっ、えっと、あの」
わたしがなにかを答える前に、男の人は、小川に転がる丸石を持ち上げた。
それを、次々と運びこんで、円形に並べて炉の形を作る。
「鍋はあるのか? どんなやつだ?」
「あ、えっと」
テントのすそを上げて、鍋の食材を地面にぶちまけてから、鍋だけ持ち出して男の人に見せた。
そしたら、また川へいって、細長い石をふたつ。
それを、炉の真ん中に並べる。
わたしが、それを眺めていると、男の人はわたしから鍋を奪い取った。
鍋を川に沈めて、水を汲んでから、それを真ん中の石の上に置いた。
ものの数分で、石炉の焚火が完成していた。
「火は点けられるのか」
「うん……たぶん」
「そうか。じゃあな」
「えっ」
男の人は背を向けて、立ち去っていった。
「ちょ……っ」
数メートルも離れると、真っ暗でもう見えなかった。
いったい、何だったんだろう。
怖かった。緊張した。
でも……これでやっと。
ご飯が作れる!




