6.2.02 - ひとりめの仲間
ルシアに案内された場所は、歩いて数分。
道路も家もなにもない原っぱを歩いた。
振り返れば、数百メートル先に噴水広場も見える。
行き交うプレイヤーの姿も、まだよく見える場所。
チョロチョロと、飛び越えて渡れそうなくらいの小川が流れている。
その手前に、屈まないと入れない高さの、ヨレヨレの三角テントがひとつ。
それ以外はなにもない。
「ついたわよ。さ、座って」
「え……」
座ってって、どこに?
「私ね、ニフィル・ロードってものを知ったのが3日前でね。ログインしたのが昨日? それで急いで記憶の回廊? っていう変な場所を通って、ここに辿り着いたのが昨日の夕方」
「えっと」
「で、ずーっと、ミキが来るのを待ってたのよ。よかったぁ1日で来てくれて」
「ねぇ、ルシア」
「うん?」
「ニフィル・ロードを知って、初めてのログインなの?」
「うん。まだね。なんにも知らないの。ここどこ?」
「……」
「だからね、まずいろいろ、おしえてほしいの。あと日本語も」
「ルシアは、どうしてここに?」
「ソウジからコレを預かったの」
ルシアが、左手を3回叩いた。
ログインデバイスが出現した。
「そのデバイスって、おにいちゃんの?」
「たぶんね。で、ミキに付き添ってやってくれって言われたわ」
「おにいちゃん、どこでどうしてるの?」
「ソウジはいまね……遠くでお仕事よ。私もよく知らないのよね」
「遠くって? どの辺?」
「いまはたぶん……シリー諸島か、サン・ミケーレ島あたりかな?」
「どこ? そこ?」
「ヨーロッパのね、ステキな場所よ」
「ふーん」
「あ、でも、ミキには、そのうち会いにいくはずよ」
「そっか……いつだろう」
「ねぇ、ところでミキ」
「うん?」
「これの使い方は教えてもらったけど、ログアウトってどうやるの?」
「ログアウトはね、この文字に触って」
「これね、それで?」
「出て来たこの文字に触れるだけだよ」
「これ?」
「そう」
「わたしねぇ、英文はまだちゃんと読めないのよ……」
「え、ちょっと、いま触ったら……っ」
「うん?」
ルシアが、虹色に輝いた……
そして、プツンと糸が切れて……
そのまま、ルシアは、お人形のように地面に転がった。
ルシアが、ログアウトした。
えーーーーっ!
「もうー、ご飯は? ルシア……おなかすいたーっ」
叫んでも、ご飯は現れない。
ルシアも、起きない。
今からだと、戻って来るのは夜中。
どうしよう。
ルシアをこんなところに放置できないから、他のとこへ行くわけにもいかないし。
……とりあえず。
ルシアをテントに寝かせよう。
持ち上げようとしたけど……重い……持ち上がらない。
だから、テントまで引きずる。
テントをめくると。
最初に目についたのは、黒くて重そうな鍋。
その奥には枯れ木の山。
それと、鍋の横に小さな金属の、箱?
箱の表面は、ザラザラ。
蓋を開けてみると、長さが揃った細い枝が詰め込まれていた。
すべての枝の先端に、赤黒いカタマリがボテっとくっついている。
この見た目って、たぶん、マッチ。
鍋の中には、野菜と、たぶん鶏肉。
塩やハーブも入っていた。
この野菜、なんだろ。
白菜に似てるけど、もっとニガそうな匂いがする。
鍋と食材と、火を点けるマッチ。
ご飯の用意が整っている。
テントのすぐ裏には、小川。
でも……焚火がない……
いったいどういうつもりだったのか。
炉を作るの、けっこう大変だから、わたしが来るのを待ってたのかな。
こまった。
わたしひとりで、作れるかな……
焚火……




