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『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
カラフルな『あの世界』
470/588

6.1.09


 さんざん泣きはらした。


 どれだけの時間泣いていたのか。

 それもわからないくらいの時間。


 ほっぺの涙が、ガビガビになっていた。

 目蓋もカサカサで、端っこが痛い。

 ヒリヒリする。



 パパの面影は、もう完全に消え失せている。

 わたしが、消してしまった。


 カウント23の、ママのときもそうだった。

 それが記憶の回廊という場所だから。

 しょうがないよね。


 だから、わたしは。

 自分の心に、また蓋をした。


 生きていく理由のためじゃない。

 いまは、この先に進むため。

 ガーディアンじゃないパパとママに会うため。

 みきを残して死なないでと、伝えるため。


 目を開けて、周囲を見渡した。

 記憶の回廊は、まるで違う場所になっていた。


 でも、知っている場所。知っている部屋。

 わたしの記憶の回廊。

 カウント24も同じだった。


 窓がついた灰色の壁。

 その壁に囲まれた、四角い部屋。

 窓の外は、カラフルなお花畑。

 正面の壁にだけ、ドアが1枚。


 そのドアは知っている。

 そっくりだから。

 遠い記憶の中にあるドア。

 パパとママと、みきが住んでたおうちのドア。


 カラダを起こす。

 立ち上がる。

 それから、ドアに近づき、そのノブに手をかけた。


 ノブは回る。

 でも、開かない。

 カウント24のときと同じドア。

 押しても引いても、そのドアは全く動かない。

 このドアを開けられる日は、来るのだろうか。


 ここは記憶の回廊。

 わたしの内面を象徴した部屋。

 このドアが開かないのは、わたしが、開けたくないから。

 たぶん、そういうこと。なんだよね。



 右手を叩いて、ログインデバイスを出す。


 Choose your guardian spirit element.

 (守護精霊を選んでください)


   Justice(正義)

   Wisdom(知恵)

   Brave(勇敢)

   Trust(信頼)


 どこに行けばいいのかな。

 知恵……でいいのかな?


 パパとママが、どのエレメントなのか。

 知らない。記憶にない。


 勇敢じゃないよね。

 日本人が多い正義?

 ゲーマーが多い信頼?

 それとも、知恵?


 ランタさんに聞けばよかった。

 なんで聞かなかったんだろう。


 ログアウトして、まゆさんに聞いてみようかな。

 なにか推測してくれるかも。

 でも、それで違ったら、嫌だなぁ……


 やっぱり、自分で選ぼう。


 ランタさんとポンタさんが、カウント22でよくしてもらったって言ってたっけ。


 だとしたら、信頼……?

 知恵のような気もするんだけど……


 信頼か、知恵。

 そのふたつで、パパとママが選びそうなのは……



 ……信頼?


 それでいい?

 パパ?

 ママ?


 Trust(信頼)


 信頼に決めた。

 違ったら、別のコアまで歩けばいい。

 ルミナス・ノードの旅も、わたしは経験済み。


 時間を見る。

 『ELAPSED 00:18』


 まだ18分しか経ってなかった。

 最初のログインで18分だから、カウント22そのものが、スタートしてまだ30時間くらいしか経ってない。



 そんなに早く行って、だれかいるのかなぁ……



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