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『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
カラフルな『あの世界』
466/588

6.1.05


 家に入ると、ハセと同じくらいの年齢の男の人。

「お帰り兄さん。あれ、お客さん?」


 それと、40過ぎに見える女性がひとり。

「アロハさん、こちらはどなた?」


 アロハが答える前に、わたしから口を開いた。

「あの……お邪魔してごめんなさい、わたしは、未希です」


 ハセが、言った。

「薬草を摘みに行った林で見つけてな。行くとこないみたいだから、連れてきた」


 わたしと目を合わせない年配の女性が言った。

「連れてきたってあなた……どうするつもりなの」

「困ってたんだ。今晩くらい泊めてもいいだろう」


「ふん……食事はふたり分しか残ってないわよ。あなたたちのを分けてあげなさい」


 女性はそう言うと、背中を向けてしまった。

 壁際まで歩くと、椅子に座って、縫い物を始めた。


「ハハ、ごめんな。あれは俺の母親のユイ、でこっちが弟のイナムラだ」

「いらっしゃい。お嬢さん」


「こんばんわ……あの、突然おしかけてごめんなさい……」


 アロハが小声で言った。

「いいのよ、誘ったのは私達なんだから、気にしないで」

 ユイには、聞こえないように。小さな声で。


 それから、3人で食事。

 言ったら悪いんだけど、とても貧相な晩御飯。

 ボウルによそった、茶色いグズグズのシチュー。

 具は、ネギとキャベツが少しだけ。

 口に含むと、雨の日の側溝のような風味。


 それと、木のコップに注がれた、パンの匂いがする飲み物。

 これはエールかな……

 おにいちゃんが言っていたやつ?

 カタセ村のエール?

 慣れれば美味しいって、おにいちゃんは言ってたけど。


 ムリかも……


 エールもポタージュも、吐きそうになったけど、我慢して全部食べた。

 だって、わたしのせいで、アロハとハセの量が減らされていたから。


「それで、お嬢ちゃんが探してるパパって、どんな人? 名前は?」


「えっと……」

 なんて答えたらいいんだろう……

「啓介」


 ハセが首をかしげた。

「ケイスケ……? そんな人、この村にいたっけ?」

「うーん……」

 アロハも知らないみたい。

 奥で母親のユイが、縫い物の手を止めたが、しばらくするとまた、手を動かし始めた。



「まぁいいか。明日の朝、酒場にでも行って聞いてみたらいい。アロハもいっしょに行ってやんな」

「ええ。もちろん」


「ありがとう。ハセさん、アロハさん」

「いいのよ。お父さんに会えるといいわね」

「うん……」



 その夜は、家畜小屋に案内されて、そこで寝ることになった。

 ヤギと、ロバが1匹。

 それと、ニワトリが4羽。

 たぶん、すごく臭いんだろうけど、小屋の中は暖かい。


 小屋に来てくれたアロハが、大き目の布を1枚貸してくれた。

 ガサガサだけど、厚手の毛布だった。

「こんなところで、ごめんなさいね」

「う~うん、動物好きだから、大丈夫だよ」


 わたしは、貸してくれた毛布を握りしめながら、マントに包まって、目を閉じた。



 心細い……なんてことは、ないよ……


 ここがカタセ村なら、25年前に、パパが作った村。

 そして、50年後に、おにいちゃんが辿り着く村。


 わたしの大好きな人達の、思いであふれている場所。

 そう思うと、なんだかうれしい。

 だから、寂しくも、心細くもない。



 ……




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