6.1.05
家に入ると、ハセと同じくらいの年齢の男の人。
「お帰り兄さん。あれ、お客さん?」
それと、40過ぎに見える女性がひとり。
「アロハさん、こちらはどなた?」
アロハが答える前に、わたしから口を開いた。
「あの……お邪魔してごめんなさい、わたしは、未希です」
ハセが、言った。
「薬草を摘みに行った林で見つけてな。行くとこないみたいだから、連れてきた」
わたしと目を合わせない年配の女性が言った。
「連れてきたってあなた……どうするつもりなの」
「困ってたんだ。今晩くらい泊めてもいいだろう」
「ふん……食事はふたり分しか残ってないわよ。あなたたちのを分けてあげなさい」
女性はそう言うと、背中を向けてしまった。
壁際まで歩くと、椅子に座って、縫い物を始めた。
「ハハ、ごめんな。あれは俺の母親のユイ、でこっちが弟のイナムラだ」
「いらっしゃい。お嬢さん」
「こんばんわ……あの、突然おしかけてごめんなさい……」
アロハが小声で言った。
「いいのよ、誘ったのは私達なんだから、気にしないで」
ユイには、聞こえないように。小さな声で。
それから、3人で食事。
言ったら悪いんだけど、とても貧相な晩御飯。
ボウルによそった、茶色いグズグズのシチュー。
具は、ネギとキャベツが少しだけ。
口に含むと、雨の日の側溝のような風味。
それと、木のコップに注がれた、パンの匂いがする飲み物。
これはエールかな……
おにいちゃんが言っていたやつ?
カタセ村のエール?
慣れれば美味しいって、おにいちゃんは言ってたけど。
ムリかも……
エールもポタージュも、吐きそうになったけど、我慢して全部食べた。
だって、わたしのせいで、アロハとハセの量が減らされていたから。
「それで、お嬢ちゃんが探してるパパって、どんな人? 名前は?」
「えっと……」
なんて答えたらいいんだろう……
「啓介」
ハセが首をかしげた。
「ケイスケ……? そんな人、この村にいたっけ?」
「うーん……」
アロハも知らないみたい。
奥で母親のユイが、縫い物の手を止めたが、しばらくするとまた、手を動かし始めた。
「まぁいいか。明日の朝、酒場にでも行って聞いてみたらいい。アロハもいっしょに行ってやんな」
「ええ。もちろん」
「ありがとう。ハセさん、アロハさん」
「いいのよ。お父さんに会えるといいわね」
「うん……」
その夜は、家畜小屋に案内されて、そこで寝ることになった。
ヤギと、ロバが1匹。
それと、ニワトリが4羽。
たぶん、すごく臭いんだろうけど、小屋の中は暖かい。
小屋に来てくれたアロハが、大き目の布を1枚貸してくれた。
ガサガサだけど、厚手の毛布だった。
「こんなところで、ごめんなさいね」
「う~うん、動物好きだから、大丈夫だよ」
わたしは、貸してくれた毛布を握りしめながら、マントに包まって、目を閉じた。
心細い……なんてことは、ないよ……
ここがカタセ村なら、25年前に、パパが作った村。
そして、50年後に、おにいちゃんが辿り着く村。
わたしの大好きな人達の、思いであふれている場所。
そう思うと、なんだかうれしい。
だから、寂しくも、心細くもない。
……




