5.9.03
食事を済ませて。
ブラシでリュウタをグルーミング。
旅の間は、ほとんどしてあげられなかったから。
だから、今夜は、たっぷり梳かしてあげる。
とくに背中を重点的に。
リュウタはとっても、気持ちよさそう。
ときどき、後ろ足を、くいくいと動かしている。
ふふふっ、かわいい。
グルーミングしながら、魔法でリュウタの感覚を繋いだ。
リュウタの記憶。
それを、見せてもらう。
あのあとなにが起きたのか。
リュウタが見たもの。感じたもの。嗅いだもの。
それを全部みた。
最初に見えたのは、おにいちゃんと……リュウジさん?
必死になって、リュウタを呼んでいた。
その横で、まゆさんが、祈っている。
どこかから、わたしの声も聞こえる。
だからリュウタも、仕方なく、おにいちゃんの背中に飛び乗った。
そのあと、ルミナス・コアへ。
そして。ルカの死。
未希を追いかけてきてくれたルカが、最後にわたしの匂いを嗅ぎながら死んじゃった。
お腹をすかせたまま、冷たくなっていくルカの匂い。
そのルカと、お別れをするリュウタ。
それから、ソフィアが倒れて。
わたしと、リュウタが弾き飛ばされた。
でも、リュウタがわたしのクッションになった。
痛いっ……わたしの下敷きになるリュウタの痛み。
けど、安心するリュウタの感情。
そしたら、まゆさんが、血塗れになってて。
おにいちゃんと、なにか話しているけど。
リュウタには聞こえない。
そのあと、おにいちゃんが、立ち上がって、剣を抜いた。
あれが、神様?
匂いがしないから、リュウタには誰だかわからない。
でも、リュウタが感じた、神様の魂の色が、まゆさんと同じ色。
最後の瞬間だけ、ちゃんと見えなかった。
リュウタの目に映っていたのは、お人形さんみたいに眠りこけてるわたしの顔。
リュウタはずっと、わたしのほっぺを、心配そうに舐めていた。
そして、わたしといっしょに、光の中へ。
記憶を見てる途中も。
見終わった今も。
涙が止まらなかった。
なきじゃくるわたしを見て、リュウタが耳を寝かせて心配している。
涙を拭いてから、右手を叩いて、ログインデバイスを出す。
『 ELAPSED 00:03 』
『 Remaining Stay 69:52 』
まだ3分。
残り時間は、69時間。
記憶の回廊に行く文字は表示されていない。
おにいちゃんが、ぜんぶ壊しちゃったのかな。
おにいちゃん、すごいなぁ。
シェイプシフトデバイスは、どうなるのかなぁ。
もう、おにいちゃん、どこ行っちゃったの。
「キャンっ……」
「あ、ごめん」
ブラシで引掻いちゃった。
リュウタのお腹の毛。
「ごめんね、ごめんごめん」
明日が寝不足になっちゃうけど、いいよね。
このまま、リュウタと、いっしょに過ごそう。
「リュウタ、あしたは何が食べたい?」
ジャーキー、生肉、骨付き肉……
えーっ。
さっき、あんなに食べたじゃん。
「みきはもう、お肉はいいよぅ……」




