↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
シェイプシフトデバイス
426/454

5.6.01 - 拠点設営



 次の日。


 ストームとミラーは、拠点の候補となる場所に検討をつけていた。

 その、いくつかの候補の中から選んだ場所は、山の北東側。


 小ぶりの池と、そこにつながる川がある場所。

 おそらく、その川も、海へとつながっているはずで、池や川には、魚も泳いでいた。


 食糧の調達もできるし、枯れ木の森も、いたるところに存在している。

 その場所自体が少し丘になっていて眺めもいいが、山に登ればさらに遠くを見渡すこともできる。


 資源、食糧、地理的条件。

 すべてを兼ね備えた環境だった。

 拠点を構えるのに、申し分のない場所だ。


 まずはそこに、半地下の小屋を建てることになった。

 また台風が来てもいいように、オレ達プレイヤーはもちろん、物資も、ヘラジカも収容できる広さのある避難小屋を造る。


 小屋を建てる指揮官は、ミラー。

 作業員はオレと、ウォルターとその部下2名。

 オレもウォルターも、そんな仕事やりたくない。

 だが、やるしかない。


 まずは、ミラー手製の、木のスコップのようなものを地面に突き立てて、穴を掘ることになった。

 今日は1日、穴掘りで終わりそうだ。



 ソフィアは、ヘラジカの世話と食糧の調達。

 未希とストームは、生活面全般の雑務を引き受ける。


 まずは、10日以内に、拠点と呼べる環境を構築する。

 それが済んだら、再遠征の準備に取り掛かる。

 20日後にハンス達が戻ったら、すぐにルミナス・コアへと進みだせるように準備をしておく。




 そして、また次の日。

 男5人で掘った穴は、背の高さよりも少し深いところまで掘った。

 それでもまだまだ面積が足りないらしく、ミラーに横に広げろとせっつかれた。


 ミラーはというと「柱と屋根を作る木材を切ってくる」と言って、枯れ木の林へと向かって行った。


 穴を掘りつづけるのは、オレとウォルターとその部下ふたり。

 全員無口なので、ひとことも喋らずに掘り続けた。



 未希とストームは、ソフィアに魚の釣り方を教わった。

 枯れ木に、ロープを結び、むしり取ったコケを丸めたエサをつけて水面に放った。

 しかし、いっこうに釣れる気配はない。


 そこから少し離れた場所で、リュウタが川に入り、前足を起用に振り下ろして魚を捕まえていた。

 それを見ていた3人は、釣りはやめて、リュウタに魚を獲らせる手段に切り替えた。




 そして、拠点の構築を始めて3日目。

 カウント24、547日目。


 掘った穴は、面積で例えたら、たたみ十畳よりも広そうだ。

 その穴の上に、ミラーが伐採してきた木材を組み上げて屋根をかぶせる。


 まぁ屋根といっても、地上から見たら、ただの床。


 それでも、多少の嵐がきても、充分に耐えられそうなシェルターが完成した。


 木材の屋根をかぶせた上から、水漏れを防ぐ気休めにと、土をかぶせる。

 そうすると、中に入ると真っ暗になった。


 しかし、通気口の下に焚火を灯すと、オレンジ色の揺らめきで満たされたその空間は、少年時代に夢見た秘密基地のようだった。


 月が沈む前に、食糧や荷物を、荷車ごと半地下住居に運び込む。

 ヘラジカは、川岸につなぎとめたままにしてある。

 ヘラジカだけでなく、ルカやリュウタを半地下住居に連れ込むのは、天候が荒れたときだけだ。

 ルカは、池で藻をはみ、リュウタはいつもどこかに出かけている。



 その晩。

 出来たばかりの半地下住居で、オレ達は残り少ない酒を開封して、新居の完成を祝った。


 宴席の途中で、ストームが言った。

「食糧の節約をしたいから、また交代でログアウトしよう」

「そうね。順番はどうする?」


「2~3人の見張りだけ残して、あとは全員、ログアウトでいいんじゃない?」


 その言葉に、ウォルターが渋い顔を作るが、なにも言い返さない。

 まぁそうだな。その計画はダメ。オレでもわかる。


「ストーム、それはダメだ」

「ん? なんで?」

「なにかが近づいてきたとき、全員を背負って逃げられるだけの人数を残せ」

「あ、そうか。そうだね」


「オレ達はいま8人だよな。男が5人、女が3人。常に男は3人以上残したほうがいい」


「じゃあ、5人残しで、3人でログアウトのローテーション組むでいいかな」

「そうだな。それでいいだろう」


 これで、ウォルターも安心だろう。

 実際、すでに目を閉じてパイプを咥えていた。

 そんなに旨いのかな、パイプって。


「じゃあ次は、明日からの予定なんだけど。なにかしておきたいことある?」


 真っ先にミラーが答えた。

「俺は、家具を作りてぇな。あとタフルもな」

「それ大事だね!」


 ストームが大いに賛同した。


「もう、あなたたち、ここにずっと住む予定の話?」

「ここで20日くらい待つんだろ? なんなら、掻きだした土を固めて、カマドも作ってやるぞ」

「あら……それはいいわね」


 そのあと、ストームが思い出したような表情で言った。

「東の方面を中心に、偵察はしておきたいな」

「偵察かぁ。山の上から見た限りじゃ、偵察するような場所もなさそうだがなぁ」

「ずっと平地だったものね」


「それはそうなんだけど。1日で往復できる範囲だけでも偵察は出そう。明日から」


「誰を出すんだ?」

「ミラーと、総司かな?」


 オレかよ……

「まぁいいけど」


 ミラーは、舌打ちした。

「チッ、なんだよ。俺は家具を作りてぇのに」


「私が行こうか?」

 意外にも、志願したのはウォルターだった。

 ストームも予想外だったようで、聞き返した。

「え、いいの?」


「この先の様子は、少し気になる。自分の目でも見ておきたい」


「ああ、そっか。ウォルターは頂上から東の様子を見てないしね」


「そういうことだ。私とソウジのふたりで行こう。部下はおいていくので、雑用でも見回りでも、好きに指示を出してくれ」


 ああ、まさか……

 なんだよ、オレと話しがしたいのか……


 嫌だ。


「じゃあ、明日の偵察は、総司とウォルターで。ミラーは家具作り」


 なんてこった。

 急にババを引かされた気分だ。


「いい? 総司」


 ちくしょう……


「わかったよ。行くよ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。