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『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
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5.5.01 - ルミナス・コアへ



 アッシュバレルに到着した。

 旅には、なんの問題も起きなかった。



 まずは、司令部へ行き、ミラーとハートリのスコットランド人と合流。

 今夜はここで野営する。




 オレは、自分の敷地へ行った。

 敷地といっても、テントと焚火しかないが。

 そこで、ログインデバイスを出した。


 メモリアへ顔を出そうかと考えた。


 だが、ヤメた。


 行ったところで、することはないし、したくもない。

 気になるダレかがいるとすれば、たぶん、モルウェナ……


 いや、それもどうでもいい。


 もう、あの国に、オレが関わる必要はない。


 次に渡ったときは、そうだな。

 カタセ村に戻ろう。




 ログアウトする者は、宿屋へ。

 それ以外の者は、アッシュバレルの外縁で、キャンプを張った。

 大部分の連中は、焚火を囲んで、宴会を始めた。


 ストームがその様子を心配そうに眺めていた。


「あんまり呑み過ぎないでよ。二日酔いは禁止だからね」


 ストームの最小限の忠告とお願い。


 未希は、少し離れた場所で、うたた寝を初めていた。

 両腕で、渡り鳥のルカを抱えている。


 ルカもずいぶん、懐いたようだ。

 抱き枕にでもするつもりだろうか。


 オレも、その近くで横になる。

 そして、眠りについた。




 翌朝。

 ソフィアは、少し、カラダが重そうだった。

 呑み過ぎだ。


 他の連中は、まぁ問題なさそうに見える。


「ソウジ」


 オレの名を呼ぶ中年男性の声。


 振り向くと、立っていたのは、この基地の司令官、ウィリアムだった。

 右手には、ウィスキーボトルを掴んでいる。

 また、呑みながら仕事でもしていたのか。



「なんだよ」


「君は、異動だそうだな」

「うん? 異動って?」

「ここの守備隊から、本部付きの特務員になったんだろ? 出世したな」


 知らないし、聞いていない。

 それどころか、もともと、こいつらの部下になったつもりもない。


 まぁいいか。

 ここでの生活は、良くもないが、悪くもなかった。

 数少ない、いい思い出だ。

 礼くらい言っておこう。


「いままで世話になったな」


「そこは、お互い様と言っておこう。もう、食糧を搬入する必要もない。与えられた任務に集中しろ」


 僅かだが、名残惜しそうな、ウィリアム……

 には見えないな。


「それは助かる」

「だが、あのワイン……ヴァージンベールだったか。また飲みたいから、手に入れたらいつでももってこい」


 なんだよ。

 名残惜しいのは、オレじゃなくて、酒かよ。


「なら、次はカネを取る」

「ッフフ。2本もってきたら、私のバーボン1本と交換してやる」

「オレが1本で、おまえが2本だ」

「ッハハ。なら、半分ずつだ。割って呑もう」


 どういうわけか。

 ベロベロに酔ったティナの顔が浮かんだ。


「わかった。それで妥協しよう」


 アッシュバレルの守備隊は、治安維持の最低限の人数に縮小していた。

 以前の100人を超す大所帯ではない。

 人員のほとんどは、エレメント・コアの警備に配置換えしている。


 だから、ウィリアムの司令官という肩書も、地に落ちている。


「これはツケだ。もっていけ」


 ウィリアムは、掴んでいたボトルをオレに差し出した。

 ラベルはバーボン。

 だいぶ前に、ティナと飲んだバーボンと同じ銘柄だと思う。


 そのボトルを受け取った。

 断わる気にならなかった。


「ツケ? 退職金だろ」


「おまえは、違約金の方が上回っている。どれだけ仕事をサボったと思ってるんだ」


 面白くもないジョーク。


「ックク」

 ウィリアムが不敵に笑う。


「ッフ……」

 オレも顔を落として、作り笑いを浮かべた。

 長かったのか、短かったのか。

 この基地で寝起きして学んだ、この基地のやり方。

 酒を中心に物事が決まる、アッシュバレルの流儀だ。



「生きて帰れよ、サムライ」

 ウィリアムが右こぶしを握りしめ、前に出した。


「その噂はもう流すな。サムライの品位が落ちる」

 オレも軽く握って、そのこぶしに触れる。


「じゃあな」

「ああ。またな」

 


「いくよー!」

 ストームが、出発の号令をかけた。



 まだ、陽は半分も昇っていない早朝。

 オレ達は、エレメント・コアへ向かって出発した。





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