5.4.10
噴水広場の街に到着した。
オレ達4人は、そのままストームの家に直行した。
家につくと、ストームは単身で、自分のメモリアへ飛ぶ。
そして、肉料理やサラダ、スープを抱えて戻った。
「最近、メモリアの実務に参加してないから、煙たがられた」
「なんだよ、実務って」
「総司もそうでしょ? ヴィルゴ王国だっけ?」
「ああ、そういうやつか……オレんとこも、戦争だなんだとやってるな。関わるつもりは無いが」
「あら。ソウジも、ストームも、メモリアでは伝説の英雄なのかしら」
「ソフィアは違うのか」
「私は、田舎の牧場で、のんびり暮らしてるわよ」
「そうだよな。オレもこれからはそうしたい……」
「みきのメモリアは、みんなすごく親切だよ。親戚が住んでる田舎に帰るみたいな気分」
「ミキは、可愛いもんね。わかるわ」
「えへへ」
「ほかのプレイヤーのメモリアには、行くことはできないんだよな」
「行くとしたら、このカウントが終わったあとで、ログインデバイスを借りるしかないね」
「いちばん、住み心地のいいメモリアは、誰かしらねぇ?」
「いま聞いた感じだと、ソフィアのとこじゃない?」
「あら、私も豪華な王宮とか、親切な人ばかりの街で暮らしてみたいわ。田舎暮らしじゃ、現実となにもかわらないもの」
オレは、カタセ村に、帰ろうかなぁ。
扱いは雑だが、あの村のほうが落ち着く。
「話がズレたけど……今後の話、初めていい?」
ストームが、本題を切り出した。
持ち込んだ食事をつまみながら、まずはストームの話を聞いた。
「いますぐ、ルミナス・コアを目指すのはリスクが高すぎるよね。まだしばらくは、地域の偵察と地図の延長を続けようと思ってる」
「地図は、どこまで進んでるんだっけ」
「南に200キロ。今のところ、南以外、全部、海だった」
「海を渡ることはできないのか?」
「この世界の海は、想像の何倍も危険なんだって。
渡れるとしても対岸が見える海峡。それもせいぜい数キロまでだってさ」
「危険て、どの程度?」
「研究所で聞いた話だけど……
この世界の海は、なにもかもが地球の数倍。
海流の強さ、波の高さも。
生物の大きさも、地球の海と比較したら4~5倍あるらしい」
未希が、青ざめていた。
「こわい……」
「サメとかに、襲われなきゃいいんだろ」
「それは、地球の海での話だよ。
海の生物は、ほとんどが肉食。
大きさが5倍になったら、タコやイカだって脅威になるはず。
マグロもウツボも。カニも貝も。ぜんぶモンスター」
大きさ5倍のマグロ……寿司屋が喜びそうだ。
「ねぇ、まゆさん。もし島だったらどうなるの?」
未希は、いつのまにか、ストームのことをストームと呼んでいない。
最初は、まゆと呼ぶなと、都度言われていた。
だが今は、ストームも、あきらめている。
「んん……船を作って、命がけで渡るしかないけど、それはないと思う」
「どうして?」
「クリア不能だと、ゲームとして破綻してる」
「ゲームかよ……」
「そうだよ。ゲームだよ。
この世界は誰かが作ったゲーム。
メモリアのチュートリアルから始まって、エレメント・ノードのPVE、ルミナス・ノードのPVP。
スタート地点はみんな平等だし、ルールもあって、ゲームクリアがある。
終わればまた、次のサーバがスタートする」
「世界の崩壊がゲームクリアか」
「その破壊こそが、新たな創造の始まり……じゃない?
このゲームを作ったダレかは、とんでもなく現実を見ていて、個人の理想を尊重している。
だったらさ、わたし達も、わたし達のやりかたでクリアを目指せばいいと思わない?」
……わからん。
ストームは話しを続けた。
「とにかく、今後は南東の海岸線沿いに、ハンス達と地図を作っていこうと思う」
「ルカが飛んできた方向だよね。ルカの家族に会えるかなぁ」
「ねぇストーム。ルカが1周してきたってこと……無いわよね?」
「測量すると、1周2万キロくらいあるらしい。
しかも、ほとんど海。
おまけに、反対側の気温は、生物が生息できる温度じゃない。
海の中で、クジラとかなら渡れるかもしれないけど。
鳥じゃ無理だね。途中で力尽きちゃうよ」
「おいストーム。1周って……どういうことだ。ルミナス・ノードも球体なのか」
ストームが、顔を上げて、視線を天井に向けた。
「ルミナス・ノードの月。光ってるじゃん?
あれは、惑星の反対側から、恒星に照らされているから……
だと言われてる……」
「反対側があるのか」
未希が言った。
「え、じゃあ、反対側は、お昼なの?」
「そういうこと。
観測上のルミナス・ノードは、自転せず、恒星の回りを公転している惑星。
だから海を渡れば……太陽が見えるはず。
……だと言われてる」
「誰か、行ったやつはいないのか」
「過去に数人、朝陽を見たっていう探検家が存在したらしいけど。反対側に行ったのことあるプレイヤーの記録は、存在しないみたい」
ソフィアが、腕組みしながら、ストームに問いかけた。
「それって、海が危険だから?」
「ん。こういうのは、ハンスに聞いたほうがいいんだけど……
ルミナス・ノードの気温は、海流で循環している。
24時間、太陽で温めらる側と、24時間、夜で冷やされる側。
その海流が、わたし達が活動する陸地の温度を保っている。
だから、海洋生物の大きさだけじゃなく、海の荒れぐあいもハンパないってこと」
オレにはさっぱり分からないが、クルマの冷却水みたいなものかな……
「まあ、海を渡るのが難しいってことは、なんとなくわかったよ。
下手な船じゃ、すぐに波にのまれて沈没するし、普通に泳いでるカツオとか、ブリにすら、襲われて喰われるかもしれない……ってことだな」
「ん。そういうこと。
南東の海岸線を進んで、陸続きで行けるルミナス・コアまでの道を探す。
それが最短で、最速」
「で、明日はどうするんだ」
「わたしと総司は、噴水おじさんに会おう。説得は総司にお願いしていい?」
「オレか。お前じゃダメなのか」
「わたしって、基本、コミュ障だよ」
突っ込みを入れるのがダルい。
話を続けた。
「……オレ、ドイツ語できないぞ」
「大丈夫。噴水おじさん、英語もしゃべれる」
そうだったのか……
いままで気が付かなかった……
「私とミキは? なにかすることある?」
「ヘラジカ……でもなんでもいいんだけど、輸送力の確保。馬はまだ無理なんだよね?」
「まだ、人を乗せる訓練を始めたばかりだから、ムリね」
「軍でもいいし、ソフィアの知ってる飼育場でもいいから、荷車を引ける動物を確保してほしい。できそう?」
「オッケイ。わかったわ。ミキも連れて行くってことは?」
「そ……魔法で取りこんじゃっても……」
「うん、なぁに?」
「おいおい、盗んだりはするなよ」
面倒ごとを起こして、目立つのは避けたい。
「あらぁ、違うわよ。動物の意思確認、でしょ?」
「んん。そゆこと。気の合いそうなパートナーを探してきて」
「オッケィ。それなら任せて」




