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『あの世界』の常識に巻き込まれていく話  作者: 渡しログ
シェイプシフトデバイス
391/445

5.4.10


 噴水広場の街に到着した。

 オレ達4人は、そのままストームの家に直行した。



 家につくと、ストームは単身で、自分のメモリアへ飛ぶ。

 そして、肉料理やサラダ、スープを抱えて戻った。


「最近、メモリアの実務に参加してないから、煙たがられた」


「なんだよ、実務って」

「総司もそうでしょ? ヴィルゴ王国だっけ?」

「ああ、そういうやつか……オレんとこも、戦争だなんだとやってるな。関わるつもりは無いが」


「あら。ソウジも、ストームも、メモリアでは伝説の英雄なのかしら」


「ソフィアは違うのか」

「私は、田舎の牧場で、のんびり暮らしてるわよ」


「そうだよな。オレもこれからはそうしたい……」


「みきのメモリアは、みんなすごく親切だよ。親戚が住んでる田舎に帰るみたいな気分」


「ミキは、可愛いもんね。わかるわ」

「えへへ」


「ほかのプレイヤーのメモリアには、行くことはできないんだよな」


「行くとしたら、このカウントが終わったあとで、ログインデバイスを借りるしかないね」


「いちばん、住み心地のいいメモリアは、誰かしらねぇ?」


「いま聞いた感じだと、ソフィアのとこじゃない?」

「あら、私も豪華な王宮とか、親切な人ばかりの街で暮らしてみたいわ。田舎暮らしじゃ、現実となにもかわらないもの」



 オレは、カタセ村に、帰ろうかなぁ。

 扱いは雑だが、あの村のほうが落ち着く。




「話がズレたけど……今後の話、初めていい?」


 ストームが、本題を切り出した。

 持ち込んだ食事をつまみながら、まずはストームの話を聞いた。


「いますぐ、ルミナス・コアを目指すのはリスクが高すぎるよね。まだしばらくは、地域の偵察と地図の延長を続けようと思ってる」


「地図は、どこまで進んでるんだっけ」

「南に200キロ。今のところ、南以外、全部、海だった」


「海を渡ることはできないのか?」

「この世界の海は、想像の何倍も危険なんだって。

 渡れるとしても対岸が見える海峡。それもせいぜい数キロまでだってさ」


「危険て、どの程度?」


「研究所で聞いた話だけど……

 この世界の海は、なにもかもが地球の数倍。

 海流の強さ、波の高さも。

 生物の大きさも、地球の海と比較したら4~5倍あるらしい」


 未希が、青ざめていた。

「こわい……」



「サメとかに、襲われなきゃいいんだろ」


「それは、地球の海での話だよ。

 海の生物は、ほとんどが肉食。

 大きさが5倍になったら、タコやイカだって脅威になるはず。

 マグロもウツボも。カニも貝も。ぜんぶモンスター」



 大きさ5倍のマグロ……寿司屋が喜びそうだ。


「ねぇ、まゆさん。もし島だったらどうなるの?」


 未希は、いつのまにか、ストームのことをストームと呼んでいない。

 最初は、まゆと呼ぶなと、都度言われていた。

 だが今は、ストームも、あきらめている。


「んん……船を作って、命がけで渡るしかないけど、それはないと思う」


「どうして?」

「クリア不能だと、ゲームとして破綻してる」


「ゲームかよ……」


「そうだよ。ゲームだよ。

 この世界は誰かが作ったゲーム。

 メモリアのチュートリアルから始まって、エレメント・ノードのPVE、ルミナス・ノードのPVP。

 スタート地点はみんな平等だし、ルールもあって、ゲームクリアがある。

 終わればまた、次のサーバがスタートする」



「世界の崩壊がゲームクリアか」


「その破壊こそが、新たな創造の始まり……じゃない?

 このゲームを作ったダレかは、とんでもなく現実を見ていて、個人の理想を尊重している。

 だったらさ、わたし達も、わたし達のやりかたでクリアを目指せばいいと思わない?」



 ……わからん。


 ストームは話しを続けた。

「とにかく、今後は南東の海岸線沿いに、ハンス達と地図を作っていこうと思う」


「ルカが飛んできた方向だよね。ルカの家族に会えるかなぁ」


「ねぇストーム。ルカが1周してきたってこと……無いわよね?」


「測量すると、1周2万キロくらいあるらしい。

 しかも、ほとんど海。

 おまけに、反対側の気温は、生物が生息できる温度じゃない。

 海の中で、クジラとかなら渡れるかもしれないけど。

 鳥じゃ無理だね。途中で力尽きちゃうよ」



「おいストーム。1周って……どういうことだ。ルミナス・ノードも球体なのか」


 ストームが、顔を上げて、視線を天井に向けた。


「ルミナス・ノードの月。光ってるじゃん?

 あれは、惑星の反対側から、恒星に照らされているから……

 だと言われてる……」


「反対側があるのか」


 未希が言った。

「え、じゃあ、反対側は、お昼なの?」


「そういうこと。

 観測上のルミナス・ノードは、自転せず、恒星の回りを公転している惑星。

 だから海を渡れば……太陽が見えるはず。

 ……だと言われてる」



「誰か、行ったやつはいないのか」


「過去に数人、朝陽を見たっていう探検家が存在したらしいけど。反対側に行ったのことあるプレイヤーの記録は、存在しないみたい」


 ソフィアが、腕組みしながら、ストームに問いかけた。

「それって、海が危険だから?」


「ん。こういうのは、ハンスに聞いたほうがいいんだけど……

 ルミナス・ノードの気温は、海流で循環している。

 24時間、太陽で温めらる側と、24時間、夜で冷やされる側。

 その海流が、わたし達が活動する陸地の温度を保っている。

 だから、海洋生物の大きさだけじゃなく、海の荒れぐあいもハンパないってこと」



 オレにはさっぱり分からないが、クルマの冷却水みたいなものかな……


「まあ、海を渡るのが難しいってことは、なんとなくわかったよ。

 下手な船じゃ、すぐに波にのまれて沈没するし、普通に泳いでるカツオとか、ブリにすら、襲われて喰われるかもしれない……ってことだな」



「ん。そういうこと。

 南東の海岸線を進んで、陸続きで行けるルミナス・コアまでの道を探す。

 それが最短で、最速」




「で、明日はどうするんだ」


「わたしと総司は、噴水おじさんに会おう。説得は総司にお願いしていい?」

「オレか。お前じゃダメなのか」

「わたしって、基本、コミュ障だよ」


 突っ込みを入れるのがダルい。

 話を続けた。


「……オレ、ドイツ語できないぞ」

「大丈夫。噴水おじさん、英語もしゃべれる」


 そうだったのか……

 いままで気が付かなかった……



「私とミキは? なにかすることある?」

「ヘラジカ……でもなんでもいいんだけど、輸送力の確保。馬はまだ無理なんだよね?」


「まだ、人を乗せる訓練を始めたばかりだから、ムリね」


「軍でもいいし、ソフィアの知ってる飼育場でもいいから、荷車を引ける動物を確保してほしい。できそう?」


「オッケイ。わかったわ。ミキも連れて行くってことは?」

「そ……魔法で取りこんじゃっても……」

「うん、なぁに?」


「おいおい、盗んだりはするなよ」

 面倒ごとを起こして、目立つのは避けたい。


「あらぁ、違うわよ。動物の意思確認、でしょ?」

「んん。そゆこと。気の合いそうなパートナーを探してきて」



「オッケィ。それなら任せて」




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