5.4.02
翌朝。
10月3日、日曜日。
道路の向かいのクルマは、無くなっていた。
気にしすぎだったのだろうか。
苦情があってレッカー移動でもさせられたのか。
部屋に戻り、昨日撮影した動画を確認した。
映っていたのは、どこにでもあるクルマ。
殺風景な車内。
映っている範囲には、ゴミすら落ちていない。
気になるものは、なにもなかった。
強いて挙げるなら綺麗すぎる。
どこかの社用車か、役場の公用車のようだ。
ナンバーの地名は、見たことのないものだった。
検索してみると、ご当地ナンバーというらしい。
遠くから来たわりに、車内が整頓されすぎている。
いったいなんの用があって、そんな地方から、うちの近所に来たのか。
まぁいい。
もういないんだ。
気にするのはヤメよう。
10月31日、日曜日。
4週間が経過した。
なにごともなく、10月が終わろうとしていた。
怪しいクルマも、現れない。
オレは、ロクでもない仕事を繰り返していた。
未希は毎日学校へ通っているのだろう。
ストームは、論文を書き上げて、学校経由でノトウェンに電送した。
合否は、12月頃に出るらしい。
ストームが提出した論文の内容は、ニフィル・ロードの研究に関すること。
あの世界を研究対象としている科学者が、アメリカには沢山いるらしい。
そして、ストームの論文は、その研究者も舌を巻くほどの内容らしい。
勝手にやってくれ。
オレにはどうでもいい。
あっちの世界では、2ヶ月以上が経過していた。
大きな変化は無い。
オレ達は護衛という形で、ハンスとフィリスに付き添っていた。
ルミナス・ノードに1週間前後滞在し、戻って数日の休暇。
それを何度も繰り返していた。
おかげで、夜だけの世界の生活にも慣れた。
それと、2ヶ月経過したおかげで、ひとつ理解したことがある。
夜空は月だけでなく、星も僅かに動いていた。
ルミナス・ノードの天体は、1年で1周するらしい。
1日やそこらじゃ、大して変わらないが、2ヶ月経過すると、星座の位置もだいぶ移動していた。
最初の頃は、あれだけ緊迫していたのに、近頃は、夜の世界を過ごすのが日常になっていた。
慣れとは恐ろしい。
怖がっていた暗闇も、今は、なんとも思わない。
生き物がいないのだから、恐れるものはなにもないのだ。
せいぜい崖か、異常発達した毒キノコの胞子くらいなものだろう。
偵察範囲は、南に200キロ以上進んだらしい。
ハンスが作る地図の範囲も、100キロを超えていた。
いまだに、他のエレメントのプレイヤーには出会っていない。
プレイヤーの痕跡となる動物にすら、遭遇していない。
この日までの唯一の痕跡は、渡り鳥のルカだけだった。
それだけルミナス・ノードが、広いということなのだろう。
ただ、ひとつ。確実に言えることがある。
日がたつごとに、気のゆるみが蔓延していく。
にもかかわらず、危険な連中との遭遇率も、日に日に高まっている。
矛盾している。
嫌な予感だけが募っていく。




